なんとも哀愁たっぷりで、つらくなる絵本です。
ダム建設で埋もれてしまう山奥の村のソバ畑。
住まいはすでに移ったのでしょうか、遠くからそばの実を積みに来た母親が、畑で赤ちゃんに母乳を飲ませています。
その姿に安らぎを覚えたウサギさん。
落としていった赤ん坊の帽子を返そうと、そばの花をたどっていくところで工事の破裂音。
ウサギの姿が消えて、帽子が飛んで…、月に照らされた風景のところでは、胸いっぱいになりました。
私の故郷の上流に徳山ダムが建設されました。
ダムができるまでの徳山村の姿を知っているだけに、あの村のウサギたちを思い描きました。
いもとさんの絵が、可愛いだけでないことを痛感した一冊です。