大きな海の端っこで、のんきに暮らしているナマコのばあちゃん。ふにゃーとしてぽてーとして、身の周りにあるものをゆっくり食べて、お尻から出して……。そんなふうにのんびりしていたある日、海の底がブルンッと身震いし、海の水がもんどりうって、でんぐりがえった。めちゃくちゃになった海の中で、ぎゅうっと身をかたくしたナマコのばあちゃんは……?
長年ナマコを愛する絵本作家のこしだミカさんが、2011年の東日本大震災直後に自分の中から吹き出したという“ナマコのばあちゃん”の絵とおはなしを元に、完成させた絵本。
目も耳も脳もない、シンプルな管みたいなナマコが、周りの砂を食べ、砂にくっついた栄養分だけを取り入れて、きれいになった砂をお尻から出して生きている。めちゃくちゃな海の中でも、ひたすらナマコのばあちゃんは食べて出して、食べて出して……。それがほんの少しずつでも周りの海の浄化につながっているからすごい!
生命力に溢れたナマコの存在感、ダイナミックな展開にぐいぐい引き込まれます。一方、人間たちは、ナマコばあちゃんの周りでせせこましく動き回り、会議で勝手なことを言い、いかにも小さい存在です。
ナマコのすごさと、豊穣の海を感じさせられる絵本。大いなる海のどこかで、ナマコは今日もふにゃーとして、ぽてーとして、ゆーっくり、食べて出して、食べて出して……。生き物って、それでいいのかも、となんだか元気をもらえますよ。
こしだミカさんがナマコを描いた他の作品に、生物学者・本川達雄さんとの絵本『ナマコ天国』(偕成社)があります。こちらはナマコ情報がたっぷり詰まっている科学絵本。合わせてぜひどうぞ!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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