1945年8月9日。一発の原子爆弾が長崎に落とされた日、12歳の父は中学校での試験を終え、疎開先の隣町へ帰る列車に乗れたことで一命をとりとめた。爆心地から800mの場所にあった中学校は全壊し、同級生の3分の1が帰らぬ人となった。
原爆から逃れ、平穏な一生を送ったと思っていた父は、しかし被爆者だった。父の死後、見つかった父の被爆者手帳には、ぼくの知らなかった「あの日」とそこからはじまった父の葛藤の日々が残されていた。
被爆地で生き抜いてきた父の思いと、隠し続けられたぼくの名前のひみつ。
やがて解き明かされる真実にたどり着いたとき、ぼくは……。
長い時を経て、原爆被爆者の言葉にできなかった思いが、今、静かに胸に迫る。
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