もうすぐクリスマス。なのに、ハリーくんは気が乗りません。妹のメアリーちゃんは赤ちゃんで、ママとパパはお世話に大忙し、ハリーくんを構ってくれないからです。ハリーくんは夜空を見上げながら、サンタさんに願いごとをつぶやきます。
「クリスマスはパパとママとぼくの3人だけですごしたいんだ……」
12月25日の朝、ハリーくんが目を覚ますと、いつも隣にあるはずのベビーベッドが消えています。びっくりして、ママにメアリーちゃんの居場所をたずねると、
「メアリーちゃん?だあれそれ?寝ぼけてるの?」
おもちゃや本やお菓子、本来ならあれこれ迷っちゃうクリスマスプレゼント。でも、ためらうことなくママ、パパを独り占めしたいとお願いしたハリーくんの子ども心を思うと、胸の奥がチクンと痛みます。ママとパパが自分だけを見て、遊んだりごちそうを作ったりしてくれる時間はうれしくて、幸せ。なのにどこか満たされないのは……どうしてなのでしょう。
今年のサンタクロースからのプレゼントは、ハリーくんをお兄ちゃんとしてひと回り大きくしてくれたみたい。
毎年1冊、クリスマス絵本を贈り続けているサンタクロース出版舎のシリーズ4作目、心温まるファンタジーの本作は、ぜひご家族でお楽しみください。
(竹原雅子 絵本ナビライター)
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