大正6年(1917年)に冨山房から出た薄田泣菫『お伽噺とお伽唄』は、児童文学と詩のような散文がまじり合う、素朴でどこか夢のある絵ばなし集です。名越国三郎の繊細な挿絵とともに、当時の冨山房らしい丁寧な本づくりが感じられます。童話や童謡が盛んだった大正時代の空気の中で、泣菫は子どもに向けた言葉に詩人ならではの感性を注ぎ、擬古文風の語りや当て字・ふりがなを使って、音楽のように響く文体を生み出しました。
「お伽噺」と「お伽唄」を軸にした短い物語は、挿絵と響き合いながら、子どもだけでなく大人も楽しめる象徴的な世界をつくり出しています。またその中に生き方の教訓も盛り込んでおります。
原書の朱版、青版が交互に編集された組版をそのままに活かしました。
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