絶体絶命……。
江戸時代の後期、宿屋のうら庭で茶色の犬の若いいのちが消えようとしていた。その瞬間、灰緑色の犬が現れる。
「行くぞ!」
噛みついた一撃で助かった柴犬カンの首輪には、小さな竹筒が結びつけられていた。中にあるのは、手紙と伊勢神宮のおまもり。カンは、庄屋の娘の心の病を治すため、神のおつげで「犬の伊勢参り」をしてきた帰り道だったのだ。
名もない灰緑色の犬は、初めて「助けるよろこび」を知り、カンとことばを交わして友だちになる。やがて彼は「オン」と名を授かり、竹筒に託された約束を果たすため、用心棒として旅に加わる。
宿屋、神社、街道、山道――やさしい人もいれば、そうでない人もいる。それでも二匹は走る。心ふるえる祈りと友情の旅物語。
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