
この本に登場するお母さんと女の子と人形で、名前のあるのは人形の「けいこちゃん」だけ。
物語の内容が内容だけに、象徴的に感じました。
女の子の大の友だちの「けいこちゃん」は、女の子の口を借りなければ話すことができません。
その女の子が、本当に話をする人形に心惹かれて、買ってほしいとお母さんにだだをこねます。
すねた気持ちで、いつも一緒の「けいこちゃん」を地下鉄のホームのベンチに置き去りにしました。
電車の扉が閉まった時、その「けいこちゃん」は、本当にしゃべったのです。
「さよなら」。
これは堪りません。
女の子は、人形を連れ戻したいと、母親にすがります。
人形を取り戻しに、地下鉄で戻る女の子。
なぜか、お母さんは一緒ではありません。
車窓の向こうの闇に映りだされる、様々な思い。
女の子のはやる気持ちを突き放すように、物語は答えを出さずに終わります。
このたまらない緊張感にぐっときました。
女の子は「けいこちゃん」と再会できたのでしょうか。
スリリングで女の子の心象風景の中を突っ走る地下鉄。
子どもウケはしないかもしれないけれど、こんな本には絶版になってほしくないですね。 (ヒラP21さん 50代・パパ )
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