ある日、砂浜でピクニックをしていたローリー、スパイダー、サムの3人。おなかいっぱい食べたひと休みの時間、食べてすぐ泳ぐのは良くないし、かといって昼寝もつまらない。
「じゃあ、おはなし、きかない?」
提案したのは、つばの広い麦わら帽子に緑色のサングラスをかけたおしゃまな雰囲気の女の子、ローリー。
「あたし、じぶんで おはなし かいてるの。」
ローリーが話したのは、ねずみとねこと犬が登場するおはなし。
あれ、もう終わっちゃうの? サムとスパイダーは物足りない様子。
それならば、と、個性的な帽子にカラフルな服装の男の子、サムがおはなしを始めます。
ローリーから「ねずみとねこのおはなし」というお題を与えられて作ったのは、ねずみがペットショップでねこを買うおはなし。サムは即興で作ったと思えないような、なかなかのストーリーテラーぶりを発揮します。
最後は、3人の中で一番活動的な雰囲気の男の子、スパイダーの番。スパイダーが作って話すのはこわいおはなし! おなかをすかせたかいじゅうが海から現れ、なにか食べるものはないかと砂浜を歩きまわっています。ローリーとサムのおはなしに出てきたねずみやねこもちゃんと登場しますが、かいじゅうの好物はなんといっても、にんげんの子!
「うほっ! いたいた!」
男の子がふたりに、女の子がひとり。
砂浜にいたにんげんの子!? それってもしかして‥‥‥。
仲良しのともだちとうみべで過ごすのんびりとした時間。リラックスした雰囲気の中、語られていく3人の自由な想像で生まれるおはなしには、さりげなくそれぞれの個性も反映されているようで、なんて面白いのでしょう。
ユーモア溢れる楽しいおはなしを書かれたのはアメリカの絵本・児童文学作家のジェイムズ・マーシャルさん。絵にもまたユーモアがたっぷり感じられて、見れば見るほど味わい深くなってきます。個人的なお気に入りは、表紙を開いたところにある3人の後ろ姿。読み終えた後にこの絵を見ると、3人の仲良しな姿がとっても幸せな気持ちにさせてくれるのです。
そのジェイムズ・マーシャルさんのユーモアをしっかりと心地良い日本語で伝えてくれるのは、小宮由さん。自らを「1930年から70年の、アメリカの絵本黄金期の作品を掘り起こす考古学者」と語られる小宮由さんが、ジェイムズ・マーシャルさんのこちらの作品を発掘し、日本の子どもたちが読めるような形で届けてくださいました。訳の中でとくに注目したいのは、サム、スパイダー、ローリーのセリフの部分。それぞれの個性が伝わってきて、3人それぞれに親近感が湧くところもこの本を好きになるきっかけとなりそうです。
おはなしを聞く楽しさ、作る楽しさ、想像する楽しさ……と、おはなしの魅力がたっぷり詰まった一冊。読んだ後は、自分でもおはなしを作って人に話してみたくなってしまうかもしれません! 挿絵がたっぷりで文章も易しいので、はじめてのひとり読みに挑戦する作品としてもおすすめです。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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