『小川』(2012年)、『ヴィという少女』(2021年)
にひきつづき、
キム・チュイ作品をふたたび刊行。
主人公のマンは、「完璧に満たされた」という意味の名をもつベトナム人女性である。ベトナムで孤児であったところを拾われたマンは、育ての母に導かれ、モントリオールでベトナム料理店を営む男性と結ばれる。子供にも恵まれ、レストランも繁盛して、生活は順調であるように思われるが、マンは、常に日陰にひっそりとたたずんでいるように感情を押し殺し、どこか満たされない様子で日々を過ごしていた。しかし、レシピ本の成功を機に訪れたフランスで一人のシェフと出会い、マンは感情を少しずつ顕わにしてゆく……
本作は「料理」をテーマにストーリーが展開される。ベトナム、モントリオール、そしてパリ。マンの人生の歩みのすぐそばにはいつでも料理があり、料理のなかに彼女は人生を見出していく。
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