●遊び心? オトコ心? 自由度満点! しりとりの内容は…?
───『おえかきしりとり』、スタートはかなりベーシックなやりとりからはじまりますが、「けむり」と「えんとつ」、「きんたろう」と「くま」など、2つのしりとりが合わさった絵があったり、前の方の描いた絵を次に人が真似して描いていたり、いい意味でどんどん自由になっていきますよね(笑)。 皆さんが楽しんで描かれているんだなーとすごく感じました。
新井:最初は「おえかきしりとり」のルールを伝えなければいけないから、みんな抑え目で…。
───表紙もよく見ると、しりとりになっているんですよね。絵本の中で「おえかきしりとり」をやっている子どものデザインなどは、お互い相談し合ったんですか?
のりたけ:それぞれのキャラクターは自由でしたね。
那生:ぼくは最初から被り物をかぶっている子にしようと思ってましたよ。だって、みんな普通の顔だと、並んだときに黒髪ばかりでインパクトが薄いかな…と思って。

構想段階の登場人物を特別に見せてもらいました!
───ラフ(下描き)を見ると、最初の頃の、のりたけさんのキャラもかなり個性的ですよね。
のりたけ:ランドセルに入ってますからね…。
───「おえかきしりとり」では、那生さんの力士をこうたくさんが真似して描いて、さらにその絵にのりたけさんが乗っかってくる…。他の作家さんの絵を引き継いで描くというやりとりもかなりレアですよね。
───「ビンタ」から「のっぺらぼう」までの流れがストーリー仕立てになっているところなんかも、さすが絵本作家さん!って思いました。
のりたけ:ラフの段階では「のっぺらぼう」の後もストーリーが続いていったんですが、終わりが見えなくなっちゃうので、一列で終わらせたんです。このページはみんな気に入っているところですね。
───「うんてい」や「シーソー」など、4人の合作も楽しいですよね。原画はどのように仕上げていったんですか?
戸田:これは、それぞれのしりとりを1点ずつ描いていただいて、デザイナーさんに合成してもらいました。

影までしっかり! 合成とは思えないライブ感!
───なるほど! 絵を見ると、まるでライブで描かれているような臨場感を感じました。
新井:ただ「しりとり」を並べるだけでは、すごく単調になったと思います。そこは、デザイナーさんの力をお借りして、キレイに揃えないで、楽しい動きのある画面にしてくださいとお願いしました。
───細かいしりとりの部分があるかと思うと、1見開き、バーン!と描かれているページがあって、この緩急のバランスが、すごく面白いですよね。みなさん、それぞれお気に入りのイラストを教えてもらえますか?
新井:ぼくはずっと描きたいと思っていた「死神」が描けたのが嬉しかったですね。
のりたけ:この絵本に出てくる「トマト」は、ぼくのデビュー作の『ケチャップマン』のキャラクターなんですよ。それを久しぶりに描けたのが嬉しかった!
───よーく見ると、みなさんの絵本のキャラクターがちょこちょこ潜んでいて、ファンにはたまらないですよね。 こうたくさんは、どうですか?

那生:そうそう。夜空に浮かんでいるから、「ステーキ座」っぽく見えるのが、また凝っているな〜って思って。ぼくは、「力士」。自分でも上手に描けたと思っていたら、みんながほめてくれて…(笑)、すごくお気に入りになりました。
───では、他の作家さんの絵で好きな物は?
新井:那生さんの「たきび」良いですよね〜。この1枚から物語が生まれそうで…。
のりたけ:1個に絞るのは難しいですが…。こうたくくんの「ウミガメ」が好きですね。お腹の色に海を感じます。
こうたく:僕は新井さんの「こけし」が好きなんですよね。あと、那生さんの絵はどれも外し方がうまいな〜〜〜って。
那生:前見返しのルールのところ、すごい面倒くさかったんじゃないかなって。新井さん以外だったら、すごくクドいイラストになったんじゃないかなと思うと、新井さんでよかった!って(笑)。
───うちの息子はしりとりでいつも「う」が来ると、「う〜!(鵜)」と叫ぶので、こうたくさんの「う」にはかなりシンパシーを感じました。
───あと、のりたけさんの見開きの絵がないのが気になったのですが…。
のりたけ:これは、ぼくがお話ししなければならないですよね。後半の背景のある絵がありますよね。これを全部、ぼくが描いています!
───え、全部!?
新井:これには深〜いわけがありまして…。デザイナーの祖父江慎さんが、ぼくたち4人のタッチを見たときに、背景担当にのりたけさんを指名したんですよ。

のりたけ:でも、背景4枚と、見開き1枚が同じなんて…どういう扱いなんだ!って思いますよね(一同笑)。 しかも、絵本の中ではみんなの絵が上に載っているけれど、この見えない部分もしっかり背景を描きこんでいますからね!
こうたく:のりたけさんは『しごとば』の細かーい絵を描いた後に『おえかきしりとり』の背景を描いたんですよ! しかも締め切りをちゃんと守っている! 人間技じゃないです!
───では、背景は特に見てほしいページですね(笑)! ラストに向かう展開が、「しりとり」の特徴を上手くとらえていると感じたのですが、どうやって終わらせるか苦労されたんじゃないでしょうか?

新井:最後のまとめ方はかなり悩みましたよね…。
こうたく:「りゅう」から「ずぼん」ですからね。でも、「ずぼん」で最後をしめられるのは那生さんだけだと思います。他の「ん」で終わっていたらどうなっていたか…。
新井:「ずぼん」で締める発想には、ぼくたちみんなが驚きましたから。相当のはなれ業です…。
那生:ぼくは、最後の「完」が良かったと思いますよ。びしっと締まりますよね。「完」にも「ん」がついていますし。
───しりとりは「ん」をいわない遊びなのに、途中から「ん」を探すという終り方が絵本としてもかなり画期的だと感じました。