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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  『しごとへの道』 鈴木のりたけさんインタビュー

2009年にシリーズ第1弾となる『しごとば』を出版し、14年の間に50以上の「しごとば」を描き続けてきた絵本作家・鈴木のりたけさん。今回「しごとば」シリーズに、全く新しい1冊が誕生しました。働く人の子ども時代からその仕事に就くまでをコマ割りのコミック風にまとめたグラフィックノベル『しごとへの道』です。ご自身も初の試みばかりだったと振り返る『しごとへの道』。誕生のきっかけから制作の苦労まで、たくさんお話しを伺いました。

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  • しごとへの道(1) パン職人 新幹線運転士 研究者

    みどころ

    朝早くから準備を始め、てきぱきと仕事をこなし、開店と同時に毎日楽しみにしているお客さんにパンを届ける「パン職人」。ビシッと制服に身を包み、約1300人の乗客を乗せ、時速285qのスピードで東海道新幹線を走らせる「新幹線運転士」。大学のキャンパスの一室で、自分の打ち出すテーマについて実験や分析を続け、論文にまとめていく「研究者」。

    颯爽と仕事に打ち込むその姿には、誰もが憧れてしまいます。でも、彼らはいったいどうやって「自分のしごと」を見つけていったのでしょう。

    大人気「しごとば」シリーズの作者鈴木のりたけさんが、新たに取り組んだ読み物シリーズ「しごとへの道」。さまざまな職業の人を取材し、その職業を紹介する内容からさらに一歩深く進み、子ども時代から現在まで、どのような人生を歩んできたのかを、コマ割りのコミック仕立てで描き出します。

    読み始めると、どの人のストーリーにもあっという間に引きこまれてしまうのは、その道のりが決してまっすぐきれいな一本道にはなっていないから。大きなまわり道をしたり、前が見えなくて悩み続けていたり、挫折を味わったり、紆余曲折、十人十色。人生を変えてくれた言葉や人と出会いの中で、働くことの面白さや喜びを見つけていく様子には、子どもから大人まで、どんな立場の人の心にも大きく響くものがあるのです。

    「しごとへの道はひとつじゃない!」

    自分の夢を見つけることや、自分の道を進んでいくことは、簡単なことではありませんよね。でも、だからこそ、こんな風にリアルで魅了的に描かれた人たちのストーリーが、読む人の背中を押してくれるはず。熱くて濃密な、鈴木のりたけさんの新境地。また続きが楽しみになるシリーズの誕生です。

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この人にインタビューしました

鈴木 のりたけ

鈴木 のりたけ (すずきのりたけ)

1975年、静岡県浜松市生まれ。会社員、グラフィックデザイナーを経て、絵本作家に。『ぼくのトイレ』(PHP研究所)で第17回日本絵本賞読者賞、『しごとば東京スカイツリー®』(ブロンズ新社)で第62回小学館児童出版文化賞、『大ピンチずかん』(小学館)で第6回未来屋えほん大賞・第13回リブロ絵本大賞・第15回MOE絵本屋さん大賞を受賞。また2022年に第2回やなせたかし文化賞を受賞した。ほかの作品に『おしりをしりたい』(小学館)、『す〜べりだい』(PHP研究所)、『ねるじかん』(アリス館)など多数。

『しごとへの道』を作る前に、「仕事」とは何かということを考えました。

――『しごとへの道1 パン職人 新幹線運転士 研究者』の発売、おめでとうございます。拝読させていただいてまず驚いたのが、ボリューム感! すごく分厚い!

ページの多い「しごとば」シリーズでも40ページだったのですが、今回は192ページ! 本の大きさも少し小さくして、小学校高学年から、「しごとば」を読んで大きくなった中学生や高校生にも手に取ってもらいやすい作品を目指しました。ただ、普段絵本を描いているぼくとしては、初の試みばかりでいつも以上にドキドキしています。

――192ページの厚さを感じさせないくらい、それぞれのエピソードに引き込まれていって、あっという間に読み終えることができました。今回、このような絵本とまた違ったグラフィックノベルと呼ばれるジャンルに挑戦しようと思ったのはなぜですか?

今まで、「しごとば」を通じてたくさんの方に取材させていただいたのですが、実際は絵本に描いている何倍もいろんな話を聞いていて、ひとつの職業(4ページ)の中に描き切れないエピソードがたくさんありました。それが非常にもったいなくて、もっと仕事をしている人のパーソナルな話や人物の魅力などを伝えたい……と、随分前から考えていました。

せっかく作るなら、今まで聞いた話をまとめたスピンオフではなく、もう一度しっかり取材をして、その人がどうして今の仕事をすることになったのか、ぐっと掘り下げる本を作りたいと思い、新たに取材をスタートさせました。

――『しごとへの道1』に取り上げられている「パン職人」と「新幹線運転士」は「しごとば」シリーズにも登場している職業なので、当時の取材からお話しをまとめたのかと思っていましたが、この本を作るために新たに取材をされたんですね。

『しごとへの道』を作るにあたって、ぼくは「仕事」とは何かということをまず考えました。「仕事」と「職業」の違いは何かな……とか。それで、「職業」は「サッカー選手」や「役者」など、パッと思い浮かぶけど、そこで完結するような、ひとつの技術のようなもの。「仕事」というのはもっと幅があって、「人生」、生きることに近いんじゃないかとぼくは思ったんです。誰もが知っている有名人や第一線で活躍している人を取り上げて、その「職業」への就き方や、内容を紹介することもできましたが、それはただの成功事例の紹介になってしまいます。仕事に就く方法は、その人の通ってきた人生の数だけあると思うんです。だから、子どもにとって身近な人、ちょっと探せば近くにいるような人に取材をして、仕事を通してその人の生き方を紹介しようと思いました。

――それにしても、見事な人選というか、皆さんすごく波乱万丈な人生を歩んでいるかたばかりですね。

ぼくもそう思います。でも、取材前に「あなたの人生は波乱万丈ですか?」なんて聞けないじゃないですか(笑)。だから、今まで「しごとば」シリーズの取材を受けていただいた方に「あなたのキャリアヒストリーを教えてください」という形で、お話を聞きました。いざ話を聞いてみると、当初考えていた以上に、みなさん困難や紆余曲折を経て、今の仕事に就いていることが分かり、とても面白かったです。

――それはやはり、今までの「しごとば」シリーズの取材で、鈴木のりたけさんご自身が面白い方を引き寄せているからかもしれませんね。

どうでしょう……(笑)。ご本人は自分の人生がとても面白いとは思っていないんですよ。オファーしたとき、「私の人生で良いんですか? 全然大したことないですよ」「あまり考えずにここまで来てしまったんで……」と必ず言われる。でも、ぼくからすると、その人がなんでもないと感じている体験や選択がすごく意外で面白い。それを掘り下げていって、まとめていったらこの作品が生まれました。

――取材される側からすると普通に生きてきたと思うことも、鈴木のりたけさんがひとつひとつのターニングポイントを掘り下げて物語としてまとめられたから、こんなにも魅力のあるストーリーになったんですね。 ここからは、『しごとへの道1』に登場する3人と鈴木のりたけさんとのエピソードを伺いたいと思います。

ホテル、牧場、ブラジルでの自給自足を経てパン職人になった本行多恵子さん

――まずは「パン職人」の本行多恵子さん。子どもの頃、誕生日はケーキではなくレーズンパン一斤という筋金入りのパン好きなのに、ホテル勤務や北海道の牧場で働くなど、パン職人になるまでにさまざまな職業を経験されています。もともと、鈴木のりたけさんは本行さんのパン屋さんのお客さんだったとのことですが……。

そうなんです。最初はお客さんとしてお店に行っていて、『もっと・しごとば』でパン職人として紹介させてもらい、さらに今度は本行さんの半生まで描いてしまう……どれだけお世話になってるんでしょうね(笑)。

『もっと・しごとば』パン職人

でも、知り合いだったから今回の作品に登場してもらったわけではなくて、地元のごく普通のパン屋さんが、実はイルカのいるホテルで働いていたり、ブラジルの自給自足の農村で暮らしたことがあるなんて、すごく意外でしょう。もちろん彼女は、本場フランスで技術を習得するなど、パン職人になるための努力もしっかりしている。でも、パン職人になろうと思うまでに色々な職業を経験して、悩んで紆余曲折あって……。

パン職人になるまでたくさん悩んだ様子が紹介されています

――悩んでいる姿もしっかり描かれていて、そこがすごく身近に感じて、共感しました。

失敗できないと思い込んだり、何かに行き詰まって次に進めなくなったりっていうのは、子どもたちにとって、よくあることですよね。だから本行さんの半生を知って、やりたいことが見つかるまではいろんなことを体験していいし、失敗してもいいんだよ、ということを感じてほしかったんです。

――本行さんの見切り発車にも見える行動力、知らない土地でのバイタリティ、そして今パン職人としてやりがいを感じている姿、どれもすごく勇気をもらえました。

新幹線運転士になるまでの研修について詳しく紹介した、四方利一さん

――次に登場するのが乗り物好きな子の憧れの職業「新幹線運転士」。四方利一さんは鈴木のりたけさんの元同僚なんですよね。

そうなんです。実は絵本作家になる前……といっても大学を卒業してすぐですが、鉄道会社にいて、そこで新幹線運転士の仕事も経験しました。四方さんとは直接仕事をしたことはないのですが同期で、『しごとば』のときに取材をさせてもらいました。

――『しごとば』が2009年の作品ですから、14年ぶりに再び取材されたのですね。

このご時世なので直接は会えず、オンラインで取材をしました。14年前はとても明るくて、ハキハキとした受け答えが印象的なナイスガイでしたが、今はしっかり貫禄もついて、仕事も新幹線運転士から、新幹線指令の当直長という立場になっていました。

――『しごとへの道1』ではそんな四方さんが野球少年だったころから、新幹線運転士としてデビューするまでが描かれています。鉄道員になるための新入社員研修の様子や新幹線運転士になるための研修、本物の新幹線で先輩運転士について技術を学ぶ様子など、普段私たちが知らない鉄道会社で働く人の仕事が詳しく描かれていて、発見の多いおはなしでした。

はじめての緊張感が伝わってきます

鉄道関係の仕事って憧れている人は多いけれど、実際、駅で仕事をする前に研修センターでしっかり勉強しているということを知らない人も多いと思うんです。ぼくも研修を受けましたが、高校を卒業して入社してくる人もいるので、学校というか、専門的なことはもちろん、社会人に必要な心構えも学ぶ場だったと思います。

――鉄道会社員として働いている場面では、スポーツをやっていた経験が生きるエピソードがあって、その流れも面白いと思いました。

お客さんに間違って教えてしまって、訂正に走る場面ですね。本当は走っちゃダメなんですよ。原稿チェックしてもらったときに、「お客さんが危ないんでダッシュの絵はやめてください」って言われたんですが、ストーリーの勢いを優先してカットしませんでした。そういうやり取りは、こちらもプロとしてギリギリまで交渉しましたね。

ストーリーの勢いを優先した思入れ深いページ

――真面目な部分もあり、ユーモアを感じる部分もある。その緩急があるから楽しみながら読めるんですね。

学年で下から4番目の成績から東大を目指した研究者・松田英子さん

――3人目は「研究者」の松田英子さん。この方は『しごとへの道1』ではじめて登場する方ですね。どういう経緯で、取材をすることになったのですか?

松田さんはブロンズ新社さん経由でご紹介いただきました。先程もお話ししましたが『しごとへの道』は色々な人生を歩んで今の仕事に就いている方を紹介するというコンセプトがあります。松田さんの持っている「東京大学大学院卒業の研究者」という肩書は世間一般から見ると超エリートですよね。でも、ご本人の経歴を聞くと、エリートという一言では到底片付かない。中学校で不登校になって、高校では下から4番目の成績で東大受験を目指して。研究者になっても研究補助の出る制度(日本学術振興会特別研究員)に落ちたり、留学先のイギリスでうつ病を発症したり……。

「東大に行きなさい」の一言がターニングポイントに

――たしかに、3つのおはなしの中でも一番波乱万丈な人生を歩んでいるように感じました。

ちょうど、このおはなしのゲラ(校正刷り)を確認してもらっていたときも、松田さんは研究に行き詰まっていたそうで、「ゲラを読んで涙が出ました……」と連絡が来たんです。そのくらい、このおはなしに出てくる人たちは現在進行形で人生を模索しているんですよね。

――伝記のような成功譚や立身出世の物語ではないところも、今生きている人たちによる、血が通った物語という感じがします。何年か後に改めて話しを聞いたら、全く違う仕事に就いている可能性もあるな……と。

仕事は人生ですから。許されるのであれば、何年後にまた話しを聞いて、『続・しごとへの道1』を作りたいですね。

ターニングポイントに助言をくれる大人の存在

――3人のおはなしを読むと、本行さんはバイト先で北海道行きを薦めてくれた女性。四方さんは野球チームのコーチと先輩運転士、松田さんは大学でのゼミの先生……と、親以外の大人の存在が、子どもたちにとてもいい影響を与えているんだと感じました。

『しごとへの道1』の担当編集者で一児の母の沖本敦子さんから、「子どもは親だけでなく、出会った色々な人によって人生が切り替わっていくんだって思ったら、親であることがちょっと気楽に感じられました」と言われ、親の立場で読むとそういう発見もあるんだと思いました。

大人になったときのエピソードへの伏線となっている、少年野球のコーチの一言

――松田さんのエピソードの中に、中学一年生で不登校になった松田さんがお母さんに「わたしのことダメって思う?」と聞く場面がありますよね。このお母さんの返事がとても印象に残りました。松田さんのお母さんは、娘に私立小学校受験をさせるほど教育熱心な方だったと思うんです。そのお母さんが、「あなたが自分で学校行かないって決めたんだから、母さんもそれでいい」とまっすぐ答えている。

松田さんだけでなく、お母さんもたくさん考えて、一緒に成長されたからこその言葉ですよね。

不登校中の松田さんが「わたしのことダメって思う?」とお母さんに聞くと……

――松田さんというひとりの女性の成長を通して、家族の物語を見せてもらっている感じでした。最後、お母さんがお孫さんを抱っこしているエピソードはすごくジーンと胸が熱くなりました。

なった?

――なりました!

よし!(笑)

アクリル絵の具&ミリペンで原画を描きました

――絵本ナビでは何度か絵本制作のお話しを伺っていますが、鈴木のりたけさんは『おならをならしたい』(小学館)でラッカースプレーを吹き付けて、おならの勢いを表現したり、『ぶららんこ』(PHP研究所)は、ブランコの鎖の部分をレーザーカッターで切って貼り絵にしたり、作品ごとに様々な手法を取り入れています。今回も面白い取り組みをされているのですか?

今回はそれほど複雑なことはしていないんじゃないかな……。まず、取材をした内容を60ページにまとめるための全体の流れを考えて、コマ割りを描きます。大まかなストーリーが固まったら、それに合わせてラフ画を描いていきます。

パソコンでレイアウトする前のラフ画を見せていただきました

ラフ画が終わったら、スキャナーでパソコンに取り込んで、全体のデザインを確認します。

――本のデザイン作業はプロのデザイナーさんがやるのだと思っていました。

本番のデザインはプロに任せています。これは絵を描く前の段階なので、自分でやっています。この分量をこの密度で作ろうと思うと、デザインの作業までこちらがやらないと、デザイナーさんに伝えづらいんです。全部の構成が決まったら、ようやく原画を描きはじめます。

――原画はパソコンで描くのではなく、手描きなんですね。

デジタルで描くこともできなくはないんですが、パソコンだとすぐに消したり直したりできちゃうじゃないですか。そうするとずっと修正し続けて終わらない気がして……。

新幹線運転士の原画。黒の濃淡がとても綺麗です

――なるほど。コマ割りのページの次に見開きで見せる場面が出てきたり、ページ構成で作品の中に読者をグッと引き込んでくるテクニックは、絵本作家さんならではだと感じました。

普段、絵本を描くときの感覚ですかね……。描き込みすぎていると思うと、そろそろ息を抜けるページを入れなくちゃと思うんです。

――1冊の中にカラーのページもあって、モノクロページもあって、その緩急が読んでいてとても楽しいです。今回、どんな画材を使って描いているんですか?

画材はアクリル絵の具を使って描いています。アクリル絵の具は「しごとば」のときも使っている慣れた画材なんですが、今回の作品を描く上で、ひとつだけ難点がありました。それは、線画を描いた後に色を塗ることができないということ。アクリル絵の具は重ね塗りすると、最初に描いた線が消えてしまうんです。

――では、どうやって線を描き入れたんですか?

色を塗ってから、最後にミリペンで線入れをしました。

――それは色がすべて塗り終わらないと、線が入れられないってことですよね。すごく大変ではないですか?

大変です。1枚描き終わらないと線が引けないので、最終的な完成系がなかなか見えてこないのが、描いていてもどかしくて……。背景を描くなどの色塗り作業をしてくれるアシスタントさんが欲しいって何度も思いました (笑)。

『しごとへの道』2巻目が現在進行中です

――『しごとへの道』はタイトルに「1」とついています。すでに2巻目以降のおはなしも決まっているのですか?

そうですね。今、2巻目の制作真っ最中です。

――どんな仕事が登場するか、少し教えていただけますか?

まず、「しごとば」シリーズで登場した「獣医師」の渡邉英秋さん、「オーケストラ団員」で取材をしたヴァイオリニストの佐々木絵理子さんに再登場していただきます。それと新しい仕事として、「地域おこし協力隊」の方を取材して、その仕事を紹介する予定です。

地域おこし協力隊、取材中のお写真

――「地域おこし協力隊」は、面白そうな仕事ですね。

2022年11月に取材に行って、大分県竹田市で地域おこし協力隊の活動をされている黒阪旅人さんに、自然ガイドをしてもらいました。黒阪さんはまさに今、地元で起業するべく頑張っている最中。そこに至るまで、さまざまな悩みや壁にぶつかってきた人なので、彼の波乱万丈な人生は読んだら面白いと思います。

――獣医師とヴァイオリニストと地域おこし協力隊というラインナップも1巻同様、多種多様な感じでユニークです。

そうなんです。子どもの頃からの夢を叶えたヴァイオリニストの佐々木さんと、今まさに夢を叶えるためのスタートを切った地域おこし協力隊の黒阪さんが同じ本で紹介されているという。ほかであまり見られない構成になっているんじゃないでしょうか。

――まだまだこれから取材をされることも多いと思いますが、話を聞いてみたい仕事はありますか?

「しごとば」シリーズを作っているときは、読者ハガキで「取材可能な「しごとば」をご存知でしたらご紹介ください」と募集したこともありましたが、『しごとへの道』は職業の話を聞きたいというより、やっぱり人ありきなんですよ。魅力的な人との出会いが一番重要なので、なかなか「この仕事!」と断言するのは難しいです。

絵本作家になった頃は人物を描くことが苦手でした

――「しごとば」シリーズ、そして今回の『しごとへの道』と、働くことについて描き続けていて、その向き合い方は、すでにライフワークになっているように思いました。鈴木のりたけさんの中で1冊目の『しごとば』を作ったときと、今回の『しごとへの道』で変化を感じたことはありますか?

やっぱり、人に対する興味が「しごとば」を描き続けることによって、どんどん強くなっていったと思います。それは作品にも如実に表れていて、絵本作家としてデビューしたばかりの頃、ぼくは人物を描くことが苦手だったんです。『しごとば』を見てもらうと分かるのですが、仕事場を細かく描き込んでいるだけで、人物がほとんど出てきていません。それがシリーズ最新刊の『やっぱり・しごとば』では、サッカー選手にオーケストラ団員とこれでもかというくらいたくさんの人が登場する。

『しごとば』パティシエのページ。人物が登場せず「仕事場」に徹している構図
『やっぱり・しごとば』サッカー選手。白熱した試合の様子が選手やサポーターの動きで表現されています。

――本当だ! 比べて見ると違いがはっきりと分かりますね。

そして今回、「仕事場」を飛び出して、その人の「人生」を深堀りした作品を作っている。ぼくは、毎回、色々な挑戦しながら絵本をつくっている方なのですが、今回は自分の中でも大きな挑戦、大きなジャンプをして、『しごとへの道』を作りました。なので皆さんもぜひ、挑戦するつもりでお付き合いいただけたら嬉しいです。後悔はさせません!

――「しごとば」シリーズのファンだけでなく、今まで絵本をあまり読んでこなかった大人の方も楽しめると思いますし、進路に悩んでいる中学、高校、大学生、新社会人の皆さんが読んだら、「仕事」や「生きること」に対して発見、道が開けるような感覚があるんじゃないでしょうか。

他人のプライベートな部分を深掘りするのはタブーかなと心配したり、ハラスメントにならないかなと避けたりする気持ちは、当然ぼくの中にもあります。誰かを傷つけることは絶対にしてはいけないこと。でも、傷つけないよう注意するあまり、上辺だけ、良い部分だけでつながっていて、人間関係が希薄になっている感じがしています。もっと他人に興味を持って、ぶつかっていってもいいんじゃないかな……と。

――『しごとへの道』は、プライベートな部分にグッと踏み込んでいって、人生の濃い部分を抽出して作り上げた作品。そこには鈴木のりたけさんと取材対象者さんとの本気のぶつかり合いがあったことが想像できますね。

取材自体はすごく楽しいですし、発見と気づきの連続なんですが、作品に落とし込んで、内容の確認をしてもらうときは、毎回「怒られるんじゃないかな」「気に入ってもらえなかったらどうしよう」とドキドキしています。でも、ぼくは本気でその人の人生が素晴らしいと思っているし、多くの人に知ってほしいと思って作品を作った。相手に「ここは描いてほしくない」と言われたら謝ればいいし、納得してもらうまで描き直すこともする。でも、それが自分の作品として譲れない部分だったら、妥協せず、こちらの思いをしっかり伝える。そういう本気の関わり合いの部分を避けてはだめだよねと思いながら作っています。

――その本気の気持ちが相手にも伝わって、本を通して、読者にも伝わっていくんだと思いました。『しごとへの道』を読むと、もっといろんな人と出会って話を聞きたいと思いました。

そう感じてもらえると嬉しいですね。

――今日は楽しいお話を本当にありがとうございました。

  • しごとへの道(1) パン職人 新幹線運転士 研究者

    出版社からの内容紹介

    新シリーズ、読む「しごとば」が登場!迷って、悩んで、失敗して、自分のしごとをみつけるまでを、コマ割りのコミック仕立てで描いたリアルヒストリー。人生を変える言葉や人との出会いを、子ども時代から取材。しごとへの道はひとつじゃない!カラー16ページ、モノクロ176ページ、合計192ページの充実の読み応え!パン職人・新幹線運転士・研究者の3職業を収録。

    ※1/31〜2/27(23:59までにご購入完了)に『しごとへの道』を絵本ナビからご購入いただいたみなさまに、もれなく通常のショッピングポイント5ポイント+45ptをプレゼントするスペシャルキャンペーン中!

『しごとへの道1 パン職人 新幹線運転士 研究者』原画展 開催!

『しごとへの道1』刊行を記念した原画展が、ブロンズ新社ギャラリー「青銅Room J」にて開催されます。ダイナミックな見開き絵、緻密に描き込まれたコマ割り、迫力ある美しい原画の数々をぜひ間近でご覧ください。

【会期】 2023年2月24日(金)〜26日(日)、 3月3日(金)〜5日(日)、3月10日(金)〜12日(日)

全日程13:00〜18:00

※入場無料

【会場】 ブロンズ新社ギャラリー「青銅Room J」 (渋谷区神宮前6-31-15 マンション31 3C)

https://goo.gl/maps/P9uALqpCmwdHD7Zj9

【鈴木のりたけさん在廊日】2月24日(金)13:00〜17:00(予定)

※新型コロナウイルスの感染状況により、急遽、中止または延期の判断をさせていただく可能性があります。あらかじめご了承ください。

取材・文/木村春子

写真/所靖子

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