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出版社エディターズブログ

2023.10.09

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〜ねんねの時間が幸せでありますように〜絵本『おふとんさんがまってるよ』植垣歩子さんインタビュー (Gakken)

 夜10時になっても寝ない……なんて声もよく聞きますね。そんなとき、絵本を通じて「おふとんさんがまってるよ」と優しく呼びかけてみませんか。『おふとんさんがまってるよ』は、同じくお子さんの寝かしつけに悩んでいた絵本作家・植垣歩子さんが、お子さんに「おふとんさんがまってるよ、もう寝ようよ」と語りかけたことから生まれた絵本です。絵本作家・植垣歩子さんに、この絵本にこめた思いなどを伺いました。

  • おふとんさんがまってるよ

    出版社からの内容紹介

    ◆あらすじ
    夜になりました。そろそろねんねの時間です。ぬいぐるみのうさこちゃんやまくらさんが、ゆうちゃんを呼びにきました。でもゆうちゃんは、やーだ、まだ眠くないもん。とうとう、おふとんさんが呼んで……。

寝かしつけに悩んでいた日々から生まれた絵本

―― お子さんをどうやって寝かしつけようか、悩んでいた日々から生まれた『おふとんさんがまってるよ』

わたしにも幼児と小学生の息子がふたりいて、息子たちがほんとうに小さい頃、夫と育児日記みたいなものを書いたりしていました。簡単なメモみたいなものですけど、気付いたこととか、おもしろかったこととか、いつか絵本にしたいなあって。そんなとき担当編集のNさんが、赤ちゃん絵本を作りませんかって声をかけてくださって。下の子がまだ小さくて、育児に苦労していた時期ですね。子どもたちが寝る前におふとんの上で運動会とかして、ぜんぜん寝る気配がなくて……。もう、どうやって寝かしつけようかって、毎日悩んでましたね。「おふとんさんがまってるよ、ほら、もう寝ようよ」って話しかけることもあって。そうしたら、まくらさんも呼びにくるかしら、そうだ、大好きなぬいぐるみも呼びにきてくれるんじゃないかしら、と考えていくうちに、この絵本が生まれました。

―― 子育てが忙しかった時期、数年かけてお話を形にしていきました

 お話の案ができたのはちょうど子育てが忙しかった頃で、しかもコロナ禍が始まって、園や学校がお休みになったりして、なかなか仕事に時間をさけない時期が続きました。自宅の引越も重なったんですね。そういうなかで、担当編集のNさんとラフのやり取りを重ね、ゆっくりとお話を形にしていきました。

実際に小さい子を見たり、ものの感触を確かめたりしながら描く

―― とても愛らしくリアルな植垣さんの描く子どもたち。読者からも「うちの子も、こんなふうに、おへそをつんつんするんです」などの声がありました

絵本を描くにあたっては、息子たちの写真を見返したり、お友だちの2歳くらいの子にモデルになってもらったりしました。あとは街を歩きながら、2歳くらいの子を眺めたりして。ほんとうに、子どもってひとり残らず可愛いんですよね。イヤイヤしてる子もいたりするんですけど、そんな子もみんな可愛くて。もちろん親御さんは大変でしょうけれども。そんなふうに、小さい子を実際に見て、体のフォルムを大事にして描きました。

あとは、資料として、2歳児向きのパジャマなんかも買いました。そうしたら、2歳児のパジャマってこんなに小さいんだって驚いたりして。うちの子も着ていたはずなんですけどね。そうそう、お話に出てくるうさぎの人形やまくらも母と作ってみたんですよ。やっぱり実際に、持ったときの感じとか、布の感じとか、質感が、実物を見ないとわからないなあと思って。まくらは、母が2歳児が使う大きさで作ってくれて。こんなふうに実物を見て触ったりして、だんだん、ああ、2歳児のねんねってこんなだったと思い出しました。

―― 眠りについた子どもを見るのは幸せだし、そういう姿を描くのはほんとうに幸せなことでした

「あかりをけしますよ、ぱっちん」って、でんきさんが明かりを消して、ゆうちゃんが寝たところが、描いていていちばん楽しいページでした。ゆうちゃんがうさこちゃんをだっこして、無の感じで、くたっと寝ているところ。子どもの寝姿って、無なんだけれど、一生懸命寝ている感じがするんですよね。そういう懸命な姿が好きで。

わたし、よく、子どもが「一生懸命寝てる」っていう言葉を使うんですけれど、子どもって、ただ寝てるだけなのに、なぜか全力で寝ている感じがするんです。まあ、寝るだけじゃなくて、子どもは何にでも一生懸命なんですけれど。この絵本でも、おふとんさんも全力でおいでよって呼んでますよね。だから、ゆうちゃんも、おふとんに行こうっていう気になるんじゃないかしら。

子どもって、エネルギーの塊だから、親も疲れちゃいますよね。寝る寸前まで全力ですし。夕方になると、親は、これから夕飯食べて、お風呂に入れて、おふとんで寝かしつけるっていう大仕事が待ってて、もう毎日、どうやって寝かしつけようかなって考えてると思うんです。それで子どもが寝たら、「やっと寝たなー」と、わたしも何か成し遂げたような気持ちになります。ほっとしながら、眠りについた子どもを見るのは幸せだし、そういう姿を描くのはほんとうに幸せなことでした。

ものがたりに身をゆだね、新しい絵本の世界を作る

 ―― 原画は、ものがたりの流れに身をゆだねて、1枚ずつ前のページから描いていく

 わたしは1枚ずつ、前のページから描いていきます。ストーリーのあるものですし、今回の絵本は特に、画面がシンプルなので、1面1面たどるように描いていきました。ゆうちゃん、なかなか寝ないなあって思いながら描いて、ついにおふとんさん出てきたなあ、ああ、やっとあくびしたなあ、あともうひと押しだって思って。ゆうちゃんを寝かしつけるぞって。『おふとんさんがまってるよ』の表紙は最後に描きました。お話の最後に、ゆうちゃんがみんなと仲よくなったので、それで、よーし、表紙だって。

 

―― 原画を描き始めるときの準備は、これから新しい絵本の世界を作るんだ、という儀式みたいなもの

絵本の原画に入るときは、いったん部屋の掃除をして、まくら作って、人形作って、部屋がだんだんその絵本一色になっていって、ようやく原画に入るという感じなんですよ。だから、わたしが今、何の絵本を描いているか、子どもも分かるみたいですね。パジャマとか人形とかちらばっていますし。家族と食事していても、突然「おふとんさんの鼻は丸いけど、それでいいかなあ」って話しかけたりしちゃうんです。特に答えがほしいわけじゃなくて、ひとり言に近い感じで。原画に入っても、色が決まるまで時間がかかります。何パターンも塗ってみて、この配色はどうかなとか試して。

部屋の掃除をしたり、小物を用意したり、色を考えたり、こういうことが全部、新しい絵本の世界を作るんだ、という儀式みたいなものかもしれないですね。作品を、自分の思い描いたものに近づけていく楽しさがあります。

絵本は、描いていてほんとうに楽しいんです。鼻歌が出てくるくらい。でも、これ以上やると疲れるな、というときは、絵に出るからやめようって思います。そういうときは、お茶を飲んだり、お菓子をつまんだり、気分転換してます。絵を描くって、手先で描いてるんじゃない、気持ちで描いてるんだと思うんですよね。

植垣歩子さんが、この絵本にめた思い

―― 子どもと過ごすねんねの時間が、幸せでありますように

小さい子と寝るって、大変だけど、とても贅沢な時間だなあって思うんですね。お父さん、お母さんは忙しいと思うけれど、ねんねの時間を幸せに過ごしてほしいなって。もちろんねんねの時間だけじゃなくて、小さい子と過ごす時間って、ごはんでもお散歩でも、かけがえのない時間ですよね。だからお父さん、お母さん、子どもたちに、幸せなねんねの時間を過ごしてほしいなって思います。この絵本が、そんなひとときに読んでもらえたら、ほんとうにうれしいです。

植垣さん、すてきなお話をありがとうございました!

この書籍を作った人

植垣 歩子

植垣 歩子 (うえがきあゆこ)

1978年神奈川県生まれ。和光大学芸術学科日本画専攻卒業。現在は絵本や児童書を中心に活躍中。2002年、第3回ピンポイント絵本コンペ優秀賞受賞。『すみれおばあちゃんのひみつ』『おじいさんのいえ』(偕成社)、『ぶんぶくちゃがま』(文・富安陽子/小学館)など。おたんじょう月は10月。

植垣歩子さん作品一覧

<出版社ページ>Gakken

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