
『MOVE』という魅力的なタイトルの「動く図鑑」があるらしい。動くって、何が動くの!?と気になっていました。さっそく小学生の息子を誘って『大自然のふしぎ』や『鳥』付属DVDの上映会。「お母さん、オーロラって北極や南極でしか見られないの?なんで?」と息子。「ええっと(説明できない)・・・図鑑もっておいで!」と私。二人でのぞきこみながら、ふんふん、なるほど、これは使えます!
『動く図鑑MOVE』は、動画連動であることに加え、これまでの“図鑑”とはちょっと違う「新時代型」といううわさ。いったいどんなふうに違うの?「ドクター・モーリー」なる謎の人物、編集者の森定泉さんにお話をうかがってきました!

講談社の図鑑×NHKのスペシャル映像 DVD連動図鑑、誕生!
読んで、観て、ワクワクする!
<動く図鑑MOVEの特長>
●NHKのスペシャル映像を豊富に使った迫力のMOVEオリジナルDVD付
●大胆かつ斬新なデザイン(大きな写真と動きのあるイラスト)
●最新の学説を紹介した特設コラム
●最新の分類学を採用した、現在もっとも信頼できる図鑑
●生き物は動いてこそおもしろい
───はじめまして。ゆうべから楽しみにしていました!2011年の発売から大ヒットですね。

出版してから、読者カードハガキがたくさん返ってくるのでびっくりしています。保育園児、幼稚園児など4・5歳のお子さんがいる家庭にもよく買われている。とくにDVDは魚や鳥の名前など、情報が耳から入ってくるので、文字を読めないお子さんでもわかりやすいし覚えやすい、というのです。映像も本も何度も見ています、飽きずに見ています、という感想がどんどん届くんです。
───DVD付属という点に加え、これまでの図鑑ではあまり見たことのない、写真をどーんと大きく使ったページが多いことも特色ですよね。まるで写真集みたい。
『鳥』では、ハシビロコウや、アメリカヘビウが魚を丸ごと飲み込んでいる瞬間の上半身どアップに「わっ」と驚きました(笑)。
ハシビロコウのページには「DVDで見てみよう!」マークがついていたので、表示チャプターを見てみると、どさっと倒れこむようにしてえさをとる瞬間がよく見える!

これがハシビロコウです!
そうですね。ハシビロコウはあまり動かない鳥なんですが、『MOVE』では空も飛ぶし、えさもとっています。不器用でえさのとり方がおもしろいんですよね。泥のなかにどさっとダイブするというか倒れこむというか(笑)。
───たしかに。DVDを見て、おぉ〜ハシビロコウが動いてる!と感動しました(笑)。
従来の図鑑は、生き物の全身が見えなければいけないという“常識”のようなものがありました。でも頭のてっぺんから足先までうつった写真なんてなかなかないし、自然界でもそういうふうには見えないんですね。だから、イラストで描いたりするのですが、普段は見えないものをいっぺんに見せるように描くわけで、不自然なポーズになったりしてしまうんです。
でも生き物は動いてこそおもしろい。映像も写真も、どれだけおもしろいか、どれだけ興味をひくかで選んでいます。足がぜんぶ見えなくたっていい。子どもが釘付けになる。子どもに好奇心をもってもらう。それがすべてのスタートです。
───どの巻にも、えさをとる、「食べる」シーンがたくさん出てきますよね。
昆虫も動物も、生き物のいとなみはけっこうグロテスクです。でも子どもはそういう世界の真実に魅了され、目が離せなくなったりする。
僕は科学好きなほうの子どもでしたが、それでも、いきなり図鑑から熟読する子どもというのはすごく数が少ないことはよくわかります。図鑑は一度ぱらぱらっとめくられて、棚にしまわれてしまったのでは、「読まれた」ことにならない。
僕の狙いでは、たとえば、子どもが「おれんち、すっごいDVDあるんだぜ」って友だちに自慢して、昆虫の捕食のシーンや闘いのシーンを飽きずに「すげー!!」とか言いながら見る(笑)。何度も何度も・・・100回くらい見て、母親に「もう、いいかげんにしなさい!」と言われて止められるくらいのDVDだったらいいなと思ったんです。
僕は、小学生くらいの子どもは、一生懸命勉強しなくても、おもしろがれば「覚えちゃう」ものだと思っているので、まず「昆虫」「動物」「魚」「鳥」「恐竜」・・・好奇心をもってもらえるものになればいい。きっかけになる図鑑を作りたいと思った。好きになれば、勝手に自分でなんでも調べるようになるでしょう。
ぜんぜん好きじゃない子どもに、すごく詳しくてすごくしっかり解説した図鑑を買ってあげても意味がない。子どもが喜んで100回見て、100回めくるものを作りたかったのです
───狙いどおりにいったというわけですね。DVDだけ何回見ても楽しめるし、図鑑単体でも写真集のように楽しめる。

左ページが旧分類、右ページが新分類
ちゃんと図鑑としての内容は押さえています。『鳥』は、最近の遺伝子研究で明らかになってきたHarvestらの新分類(2008年に発表)を採用していること。これは特筆すべき点だと思います。日本鳥学会も今年(2012年)の9月に新しい分類の目録を刊行したばかりなので、現在、新分類の鳥の図鑑は『MOVE』だけです(今後出ると思いますが)。
たとえばハヤブサはタカの仲間とされてきましたが、近年の遺伝子研究でむしろオウムやスズメに近い、と解釈が変わってきています。