私はネコが嫌いだ。
- 作・絵:
- よこただいすけ
- 出版社:
- つちや書店
インタビュー
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2025.07.11
皆さんはネコは好きですか? 「好き!」という人も「苦手」という人も、この本を読むと胸がぎゅっとしめつけられて、涙がスッと零れ落ちる。『私はネコが嫌いだ。』は愛しさと悲しさがいっぺんに押し寄せてくる、そんな絵本です。
『私はネコが嫌いだ。』を生み出したよこただいすけさんは、どんな思いでこの作品を描いたのでしょうか…。よこたさんにお話を伺いました。
この人にインタビューしました
1973年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒業後渡米し、Art Center College of Designを卒業。著書に『私はネコが嫌いだ。』(つちや書店)、『ニャンコどこいった?』(少年写真新聞社)などがある。
昭和を感じさせるような、ガンコに見えるお父さんに実在のモデルはいないのですが、「黒ネコが目の前を横切ると縁起が悪い(良くないことが起こる前兆)」という、昔からある迷信をかたくなに信じているお父さん――を具現化したら、この姿になりました。
黒ネコは、ボクがアメリカ留学中に部屋に出入りしていたネコがイメージに近いかもしれません。アパートの大家さんの家で飼われていた黒ネコなんですけど、ボクの部屋に自由に出入りさせていたので、アメリカでの生活でとっても癒されていました。
ネコ飼いさんには特に強く共感してもらえるエピソードなのかな、と思うのですが、これはネコの「あるある」を成長過程に沿って並べていったので、特に順序で悩むことはなかったように思います。
子どもの手のひらに乗るくらいの小さな黒ネコは体調を壊しやすいから病院にも行きがちだし、自分(ネコ)の都合で飼い主が寝ていても起こしにくる。そして元気いっぱいに家を走り回っていたネコでも、やっぱり年老いたら寝ている時間がどんどん増えて……。本の中で、黒ネコとお父さんの15年間が描かれているわけです。
『私はネコが嫌いだ。』の物語は、1ページ目から順番に描いたわけではなくて、じつはネコとお父さんのアップから描き始めました。
このときにすでにお父さんはガンコスタイルでいくと決めていたので、この1枚を描いたあとは、もう表情はあまり悩まずに、口はへの字で吊り上がり眉になっていました。全体のタッチや構図は最初に描いたネコとお父さんのアップの表情から、ストーリーに沿って細部を固めていった感じです。
お父さんは文筆家です。このお父さんは自宅で仕事をしているので、自然と家にいるネコとの触れ合い(衝突)が増えちゃうんですよね。原稿用紙に万年筆で文字を書くスタイルなので、きっと文豪なんだと思います。なにを書いているのかは……、ボクも知りたいです(笑)。
アクリル絵の具で描いています。重ね塗りに適していて使いやすいのと、ドライブラシという技法を使うことで厚みのある、ちょっとレトロな雰囲気に仕上がるとこが、この絵本の世界観を表現するのに最適だと思いました。黒ネコは表面に見える黒色だけで塗っているのではなくて、オレンジ色→青色→黒色の順で塗っているので、絵をよーくみてもらうと塗り重ねがわかると思います。
じつはボクがカバー絵にしたかったのは、現状、表紙の絵に使っている黒ネコの絵だったんです。本の中の女の子が黒ネコを拾ってくるように、実際に黒ネコを連れて帰ってもらうような気持ちで絵本を手にしてもらえたらいいなと考えていました。なので、はじめはこの黒ネコの絵でカバーを作る予定だったのですが、編集担当さんと相談を重ねていった上で新しいカバーデザインが生まれました。
ネコがお父さんを見上げている構図にしたことで、お父さんを描くことなく共演させることができたかな、と思っています。
小さな家族を愛おしく思う気持ちとか、愛するものを失ったときの感情とか、自分が伝えたかったことが読者のみなさんに届いた、理解してもらえた、ということが本当にうれしかったです。ただ、「泣いてしまって……」というメッセージには、申し訳なさも感じています。
「何派か?」であえて答えるとしたら「モフモフ派」です。小さい頃からモフモフしたかわいい生き物は大好きでしたが、じつはかなりの犬派でした。アメリカのホームステイ先にいた柴犬たちにとても癒され、精神的に救われた思い出があります。ネコはむしろ絵本を出版してからどんどん好きになっていったという感じなんです。
それからビーバーが好きなんですけど、これは見た目もさることながら、あのコツコツ作業してなにかを一途に作っているところとかが(ビーバーはダムを作る名人)、自分と似てるなーって重ねるとこが多くあるから好きなのかもしれません。
今、注目している動物ですか? それは、モグラです。今、いちばん気になっている存在です。あの一生懸命、穴を掘っているところなんかが好きですね。
言わないと伝わらないこともあるけれど、同じことばでも変わっていくニュアンスとか、ことばでは伝わらない感情もあると思います。人間同士でもこうですから、動物はことばを使わないので、動物が思っていること、ボクたちに伝えたいことの真実はわからない。だからこそ、ことばを使うことを丁寧にしなければと、ボク自身も改めて考えさせられているところです。
この本をとおして、みなさんにもなにか感じてもらえることができたらうれしいです。