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絵・文: 川浦 良枝  出版社: 白泉社 白泉社の特集ページがあります!
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イギリス発、思いやりの心をはぐくむ絵本『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』まつばらのりこさん インタビュー

なかよしのふわふわのくつしたが主人公のとってもかわいい絵本が発売となりました。作者のまつばらのりこさんは、イギリス在住のアーティスト。本書が絵本デビュー作なのですが、イギリスで最初に出版されています。イギリスではすでにシリーズ3冊目が出版され、中国語、韓国語、ベトナム語、スペイン語、カタロニア語…、とたくさんの国で翻訳されています。世界の子どもたちに読まれているかわいいくつした「ぼっちとぽっち」が、ついに日本にやってきました。まつばらさんは、レバノンでの日本語教師の経験を経て、美術の道に進んだという異色の経歴の持ち主でもあります。ぼっちとぽっちのおはなしの制作について、絵本を出版するまでのこと、イギリスでの毎日のことなど、メールでインタビューさせていただきました!

ぼっちとぽっち くつしたのおはなし
作・絵:まつばら のりこ
出版社:岩崎書店

くつしたのぼっちとぽっちは、いつでもどこでもいっしょ。 でもある日、ぽっちは消えてしまいます。 ぽっちはどこへ行ったの? 離れ離れになっちゃったけど、また会える?

思いやりの心を伝えたい

───いつも一緒のふたり、ぼっちとぽっちのキャラクターがとてもかわいくて、はじめて本を見たときに「わあ、かわいい!」と声をあげてしまいました。くつしたをキャラクターにしたきっかけを教えてください。

きっかけは子どもの頃の思い出です。子どもの頃、穴のあいたくつしたを祖母のところに持っていくと、いつも快く継ぎ当てをしてくれました。くつしたの穴を繕いながら、祖母はよく昔の話をしてくれて、私はそのお話を聞くのが大好きでした。継ぎ当てされたくつしたは、何だか特別な感じがして、愛着が湧いてきます。そのくつしたへの愛着が、「ぼっちとぽっち」というキャラクターの誕生につながりました。


まつばらのりこさん

───くつしたたちのおふろが洗濯機、ひなたぼっこが物干しなことも、とてもかわいらしくて、身近に感じます。

『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』の構想ができてから、一番最初に思い浮かんだのが、洗濯ひもにぶら下がっているくつしたたちの姿です。だから、この場面は絵本のどこかに入れたいとまず思いました。「おふろが洗濯機」というのは、夫のアイデアです!私がスケッチブックを片手に「ぼっちとぽっち」について話していたとき、「こんなシーンはどう?」と言って夫がアイデアをくれたんです。彼は繊細な感性の持ち主で、私の絵本づくりになくてはならない協力者です。

───ある日ぽっちに穴があいて、ぽっちはいなくなってしまいます。はなればなれになった場面では、ぼっちのさびしい気持ち、ぼっちがぽっちのことを大切に思う気持ちが強く伝わってきます。

くつしたって、時々片方だけなくなってしまうことってありますよね。ふたつで1組のペアなのに、片われがいなくなってしまったら、残された方はどんな気持ちだろう・・・と考えたとき、「ぼっちとぽっち」の構想が生まれました。
人間にも、夫婦とか、恋人とか、2人で1組、という感覚がありますね。私には妹が1人いるので、2人で1組の姉妹、という感覚もあります。その自分の大切な仲間、伴侶がいなくなってしまったら・・・という気持ちをくつしたのキャラクターに反映させました。

───子どもにとって、大切なものとはなればなれの時間はとても不安で悲しいものですよね。まつばらさんも子どもの頃の思い出があるのかな? と想像しました。

子どもの頃、大切にしていた「マンマ」という名前の犬のぬいぐるみがありまして。赤ちゃんのときから一緒だったのですが、小学3年生のときだったかな、穴があいて詰め物も飛び出してくるような有様でしたから、父が「もう捨てなさい」と言うんです。嫌だとずっと拒んでいたのですが、ある日学校から帰ってくるとマンマがいない!私が学校に行っている間に捨てられてしまったんですね。本当に悲しかったです。ゴミ捨て場に連れて行かれたマンマのことを考えると、もう切なくて切なくて。毎晩ふとんに入るときはいつも一緒だったマンマが突然いなくなって、とても寂しかったのを覚えています。
10代の頃、赤川次郎著『ふたり』を読んだときの印象も、もしかしたら関わっているのかもしれません。この物語では、姉妹の姉がいなくなってしまい、あるとき妹の中に現れるのですが、「もし妹がいなくなってしまったら・・・」と、自分たち姉妹を登場時人物に重ね、共感しながら読んだのを覚えています。

───ふわふわでやわらかい大切なくつした。ぼっちが、ぽっちがどこに行ったのか想像して心配する場面がとても好きです。とりさんとわんちゃんの登場することも想像が広がりますね。まつばらさんは、普段なくしものをしたときに、こういった想像をされますか?

特に子どもたちが生まれてから、想像するようになりましたね。子どもたちがなくしたおもちゃたちが集まってパーティーをしている場面とか、海に遊びに行ったときに砂に埋めて見つけられなくなった車のおもちゃが、海の生き物のおうちになっている場面とか。

───素敵ですね! なくしたら悲しいけれど、想像しておはなしが広がると、気持ちが和みます。
穴があいたぽっちを助けてくれるおばあさんねずみも印象的なキャラクターです。先ほどお話されていた、まつばらさんのおばあさんがモデルになっているのでしょうか?

はい。おばあさんねずみは、私にとって特別なキャラクターです。このキャラクターが生まれるきっかけも、私の幼少時代の思い出に遡ります。私が子どもの頃住んでいた家にはねずみがいました。夜になると、天井からカタカタとねずみたちの動き回る物音が聞こえてきます。このねずみの家族は一体何をやっているのだろう、と私はふとんの中で、ねずみたちの様子をよく想像したものです。 このねずみの思い出が、その後30年の時を経て、「おばあさんねずみ」とその家族として絵本の中に登場することになりました。ぼっちとぽっちが困っているときに助け舟を出してくれる「おばあさんねずみ」は、祖母をねずみに扮して登場させたものです。

───絵本の冒頭にも「おばあさんへ」と書かれていますね。

はい、この絵本は、祖母と過ごした子ども時代の思い出がきっかけとなって生まれたおはなしなので、「祖母に捧げる」という想いが込められています。私の両親は共働きだったので、家では祖母が私たち姉妹の面倒を見てくれました。ですから、幼少期の思い出は祖母の存在なしには語れません。

祖母との思い出で一つ思い出すのは、私がおもらしをする度に、祖母は「おお、サケとったか」と言って、手をたたいて笑っていたことです。おもらしをして水たまりができて、その中で泳ぐサケをつかまえた、ということで「サケとった」なんです。親におもらしをしたと言うと困った顔をされるのに、祖母におもらしの報告をすると「サケとった」と笑われるので、何だかおかしくって。自分の失敗を笑いに変えてくれた、祖母のいい思い出です。

『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』がイギリスで出版されることが決まって間もなく、祖母はこの世を去りました。祖母に絵本を手にとってもらうことは叶いませんでしたが、あの世できっと喜んでくれていると思います。祖母が「おばあさんねずみ」としていつまでも子どもたちに愛される存在になってくれるといいなあ、と願います。

───おはなしの展開で難しかったところなどはありますか?

最初は、ぼっちがぽっちのことを心配している場面のほかに、穴のあいたぽっちが、ねずみの巣にたどり着くまでの過程も描こうと思ったのですが、限られたページ数の中でどうやってひとつのおはなしにまとめるか、というところで葛藤がありました。結局、ぽっちがねずみの巣にたどり着くまでの過程はカットしたのですが、それによって最後にサプライズが待っているという形になったのでよかったと思います。絵本をつくるとき、アイデアをどうやって全部盛り込むかではなく、どうやってそぎ落としてシンプルにするかが、私が一番苦労するところです。

───まつばらさんのお気に入りの場面を教えてください。

ぼっちがぽっちと再会する場面です。このイラストを描いていた時、にこにこしながら描いていたのを覚えています。

───身近な誰かのことを大切に思う気持ちが描かれていて、親子でやさしい気持ちを共有できる物語ですね。このおはなしで、子どもたちへどんなことを伝えたいですか?

「思いやり」の心です。自分の身近にいる人やものを大切に想う気持ち、いてくれてありがたいなあと感謝する気持ち、それらの人やものへ注ぐ愛情がいかに人間の営みにとって大切であるか、ということを絵本を通して伝えていきたいです。

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まつばらのりこ

  • 1977年青森県八戸市生まれ。横浜国立大学教育学部を卒業後、レバノン、カナダ、英国で日本語教師をつとめる。アーティストになる夢を追いかけ、2003年からカナダのニューファンドランド・メモリアル大学でファイン・アートを学び、2008年に英国のセントラル・セント・マーティンズ芸術大学で修士号を取得。2013年、英国のトロイカ・ブックス社から『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』でデビュー。現在「ぼっちとぽっち」シリーズを手がけている。英国在住。

作品紹介

ぼっちとぽっち くつしたのおはなし
作・絵:まつばら のりこ
出版社:岩崎書店
全ページためしよみ
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