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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  イギリス発、思いやりの心をはぐくむ絵本『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』まつばらのりこさん インタビュー

なかよしのふわふわのくつしたが主人公のとってもかわいい絵本が発売となりました。

作者のまつばらのりこさんは、イギリス在住のアーティスト。本書が絵本デビュー作なのですが、イギリスで最初に出版されています。イギリスではすでにシリーズ3冊目が出版され、中国語、韓国語、ベトナム語、スペイン語、カタロニア語…、とたくさんの国で翻訳されています。世界の子どもたちに読まれているかわいいくつした「ぼっちとぽっち」が、ついに日本にやってきました。

まつばらさんは、レバノンでの日本語教師の経験を経て、美術の道に進んだという異色の経歴の持ち主でもあります。ぼっちとぽっちのおはなしの制作について、絵本を出版するまでのこと、イギリスでの毎日のことなど、メールでインタビューさせていただきました!

この書籍を作った人

まつばら のりこ

まつばら のりこ (まつばらのりこ)

1977年青森県八戸市生まれ。横浜国立大学教育学部を卒業後、レバノン、カナダ、英国で日本語教師をつとめる。アーティストになる夢を追いかけ、2003年からカナダのニューファンドランド・メモリアル大学でファイン・アートを学び、2008年に英国のセントラル・セント・マーティンズ芸術大学で修士号を取得。2013年、英国のトロイカ・ブックス社から『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』でデビュー。現在「ぼっちとぽっち」シリーズを手がけている。英国在住。

思いやりの心を伝えたい

───いつも一緒のふたり、ぼっちとぽっちのキャラクターがとてもかわいくて、はじめて本を見たときに「わあ、かわいい!」と声をあげてしまいました。くつしたをキャラクターにしたきっかけを教えてください。

きっかけは子どもの頃の思い出です。子どもの頃、穴のあいたくつしたを祖母のところに持っていくと、いつも快く継ぎ当てをしてくれました。くつしたの穴を繕いながら、祖母はよく昔の話をしてくれて、私はそのお話を聞くのが大好きでした。継ぎ当てされたくつしたは、何だか特別な感じがして、愛着が湧いてきます。そのくつしたへの愛着が、「ぼっちとぽっち」というキャラクターの誕生につながりました。

まつばらのりこさん

───くつしたたちのおふろが洗濯機、ひなたぼっこが物干しなことも、とてもかわいらしくて、身近に感じます。

『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』の構想ができてから、一番最初に思い浮かんだのが、洗濯ひもにぶら下がっているくつしたたちの姿です。だから、この場面は絵本のどこかに入れたいとまず思いました。「おふろが洗濯機」というのは、夫のアイデアです!私がスケッチブックを片手に「ぼっちとぽっち」について話していたとき、「こんなシーンはどう?」と言って夫がアイデアをくれたんです。彼は繊細な感性の持ち主で、私の絵本づくりになくてはならない協力者です。

───ある日ぽっちに穴があいて、ぽっちはいなくなってしまいます。はなればなれになった場面では、ぼっちのさびしい気持ち、ぼっちがぽっちのことを大切に思う気持ちが強く伝わってきます。

くつしたって、時々片方だけなくなってしまうことってありますよね。ふたつで1組のペアなのに、片われがいなくなってしまったら、残された方はどんな気持ちだろう・・・と考えたとき、「ぼっちとぽっち」の構想が生まれました。
人間にも、夫婦とか、恋人とか、2人で1組、という感覚がありますね。私には妹が1人いるので、2人で1組の姉妹、という感覚もあります。その自分の大切な仲間、伴侶がいなくなってしまったら・・・という気持ちをくつしたのキャラクターに反映させました。

───子どもにとって、大切なものとはなればなれの時間はとても不安で悲しいものですよね。まつばらさんも子どもの頃の思い出があるのかな? と想像しました。

子どもの頃、大切にしていた「マンマ」という名前の犬のぬいぐるみがありまして。赤ちゃんのときから一緒だったのですが、小学3年生のときだったかな、穴があいて詰め物も飛び出してくるような有様でしたから、父が「もう捨てなさい」と言うんです。嫌だとずっと拒んでいたのですが、ある日学校から帰ってくるとマンマがいない!私が学校に行っている間に捨てられてしまったんですね。本当に悲しかったです。ゴミ捨て場に連れて行かれたマンマのことを考えると、もう切なくて切なくて。毎晩ふとんに入るときはいつも一緒だったマンマが突然いなくなって、とても寂しかったのを覚えています。
10代の頃、赤川次郎著『ふたり』を読んだときの印象も、もしかしたら関わっているのかもしれません。この物語では、姉妹の姉がいなくなってしまい、あるとき妹の中に現れるのですが、「もし妹がいなくなってしまったら・・・」と、自分たち姉妹を登場時人物に重ね、共感しながら読んだのを覚えています。

───ふわふわでやわらかい大切なくつした。ぼっちが、ぽっちがどこに行ったのか想像して心配する場面がとても好きです。とりさんとわんちゃんの登場することも想像が広がりますね。まつばらさんは、普段なくしものをしたときに、こういった想像をされますか?

特に子どもたちが生まれてから、想像するようになりましたね。子どもたちがなくしたおもちゃたちが集まってパーティーをしている場面とか、海に遊びに行ったときに砂に埋めて見つけられなくなった車のおもちゃが、海の生き物のおうちになっている場面とか。

───素敵ですね! なくしたら悲しいけれど、想像しておはなしが広がると、気持ちが和みます。
穴があいたぽっちを助けてくれるおばあさんねずみも印象的なキャラクターです。先ほどお話されていた、まつばらさんのおばあさんがモデルになっているのでしょうか?

はい。おばあさんねずみは、私にとって特別なキャラクターです。このキャラクターが生まれるきっかけも、私の幼少時代の思い出に遡ります。私が子どもの頃住んでいた家にはねずみがいました。夜になると、天井からカタカタとねずみたちの動き回る物音が聞こえてきます。このねずみの家族は一体何をやっているのだろう、と私はふとんの中で、ねずみたちの様子をよく想像したものです。 このねずみの思い出が、その後30年の時を経て、「おばあさんねずみ」とその家族として絵本の中に登場することになりました。ぼっちとぽっちが困っているときに助け舟を出してくれる「おばあさんねずみ」は、祖母をねずみに扮して登場させたものです。

───絵本の冒頭にも「おばあさんへ」と書かれていますね。

はい、この絵本は、祖母と過ごした子ども時代の思い出がきっかけとなって生まれたおはなしなので、「祖母に捧げる」という想いが込められています。私の両親は共働きだったので、家では祖母が私たち姉妹の面倒を見てくれました。ですから、幼少期の思い出は祖母の存在なしには語れません。

祖母との思い出で一つ思い出すのは、私がおもらしをする度に、祖母は「おお、サケとったか」と言って、手をたたいて笑っていたことです。おもらしをして水たまりができて、その中で泳ぐサケをつかまえた、ということで「サケとった」なんです。親におもらしをしたと言うと困った顔をされるのに、祖母におもらしの報告をすると「サケとった」と笑われるので、何だかおかしくって。自分の失敗を笑いに変えてくれた、祖母のいい思い出です。

『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』がイギリスで出版されることが決まって間もなく、祖母はこの世を去りました。祖母に絵本を手にとってもらうことは叶いませんでしたが、あの世できっと喜んでくれていると思います。祖母が「おばあさんねずみ」としていつまでも子どもたちに愛される存在になってくれるといいなあ、と願います。

───おはなしの展開で難しかったところなどはありますか?

最初は、ぼっちがぽっちのことを心配している場面のほかに、穴のあいたぽっちが、ねずみの巣にたどり着くまでの過程も描こうと思ったのですが、限られたページ数の中でどうやってひとつのおはなしにまとめるか、というところで葛藤がありました。結局、ぽっちがねずみの巣にたどり着くまでの過程はカットしたのですが、それによって最後にサプライズが待っているという形になったのでよかったと思います。絵本をつくるとき、アイデアをどうやって全部盛り込むかではなく、どうやってそぎ落としてシンプルにするかが、私が一番苦労するところです。

───まつばらさんのお気に入りの場面を教えてください。

ぼっちがぽっちと再会する場面です。このイラストを描いていた時、にこにこしながら描いていたのを覚えています。

───身近な誰かのことを大切に思う気持ちが描かれていて、親子でやさしい気持ちを共有できる物語ですね。このおはなしで、子どもたちへどんなことを伝えたいですか?

「思いやり」の心です。自分の身近にいる人やものを大切に想う気持ち、いてくれてありがたいなあと感謝する気持ち、それらの人やものへ注ぐ愛情がいかに人間の営みにとって大切であるか、ということを絵本を通して伝えていきたいです。

たった一人、君の絵本を気に入ってくれる人が見つかればいいんだよ

───『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』は、最初にイギリスで出版されました。イギリスで絵本を出版することになった経緯を教えていただけますか?

イギリスの大学院を卒業後、絵本を描き始めた私は、イギリスの出版社に「ぼっちとぽっち」の絵本を投稿し始めました。でも、投稿する度に戻ってくるのは、断りの手紙ばかり。「ぼっちとぽっち」の絵本をいったん諦めて、別のスタイルのイラストで、別の話を新たに描こうと思い立ったとき、夫にこう言われたんです。「ぼっちとぽっちの絵本、すべての出版社に送ったのかい?まだ送っていないんだったら、送ってみなきゃ。たった一人、君の絵本を気に入ってくれる人が見つかればいいんだよ。それって宝くじに当たるよりも確率高いよ。」
夫の励ましにより、私は気を取り直して、まだ投稿していなかった出版社に「ぼっちとぽっち」の絵本を送り始めました。そして、出版社に投稿するようになって2年後、「ぼっちとぽっち」を気に入ってくれた出版社にようやく出会うことができたのです。

書店でのサイン会風景

───イギリスに住んで11年と伺っています。おはなしをつくるときは、最初に英語で考えられたのでしょうか?

おはなしをつくるときは、日本語と英語がミックスしていました。ある場面は日本語で、ある場面は英語で、という風に。

───日本語版の出版にあたり、英語から日本語にするとき、悩んだことはありましたか?

例えば「Pocchi is precious.」という文章。「precious」には「大切な」という意味と「宝物のような」という意味のどちらも含まれているので、日本語に直すときにぴったりの言葉が見つからず、ちょっと悩みました。結局ここは、「ぽっちは たからもの」という表現にしました。
今後、赤ちゃん向けの絵本を描くなら、擬態語が豊富な文章を使いたいのですが、英語には擬態語が少ないので、日本語から英語にすると、ちょっと味気なくなってしまうかも。例えば、「雨がざあざあ」は、「ざあざあ」という言葉が英語にはないので、「It’s raining heavily」とか「It’s pouring」とでも訳さなければならないでしょうから。

───イギリスでの絵本の出版にあたって、意外だったこと、面白かったことなどがあったら教えてください。

『ぼっちとぽっち くつしたのおはなし』を出版したトロイカ・ブックスは個人経営の小さな出版社でしたので、書店でのサイン会や図書館での読み聞かせは、私がすべて自分で企画しました。何でも初めてづくしで、ドキドキの連続でしたよ。大手の書店は新人作家には目も向けてくれなかったので、個人経営の書店でサイン会をやらせてもらいました。図書館でのイベントでは、日本語なまりの英語で読み聞かせをするのは恥ずかしかったのですが、自分が日本人だというのを逆手にとって、日本語のあいさつを教えてあげたら、けっこう喜ばれましたね。また、ある図書館では「ぼっちとぽっち」の歌を作ってくださった人がいて、その歌は今も読み聞かせのときに使わせてもらっています。

図書館での読み聞かせ

───読み聞かせで、イギリスの子どもたちは、「ぼっちとぽっち」のおはなしをどんなふうに楽しんでいますか?

読み聞かせには、いつも手編みの「ぼっちとぽっち」のくつしたを持っていくのですが、子どもたちにはそれが人気です。その毛糸のくつした「ぼっちとぽっち」が、子どもたちに英語と日本語であいさつをして、読み聞かせを始めます。ぽっちがいなくなり、ぼっちがぽっちのことを心配している場面は、子どもたちもぼっちと同様、心配そうな表情を浮かべて聞いてくれます。ぼっちとぽっちが再会する場面では笑顔!子どもたちが共感してくれているのを感じ、嬉しくなります。
でも、読み聞かせがいつもうまくいくとは限りません。あるとき、ぽっちがいなくなってしまった場面で1人の赤ちゃんが泣き出し、そして別の赤ちゃんまで泣き出してしまいました。たまたまおっぱいがほしかっただけなのかもしれませんが、こういうときって、読み聞かせは難しいですねえ。

また、読み聞かせと一緒にワークショップも開催していて、絵本の内容に関連した工作を、主に図書館で行っています。

───「ぼっちとぽっち」のマスコットがとってもかわいいですね!

マスコットは、フェルトまたは厚紙にアイス棒をのり付けして、顔を描いたり、飾りをつけたり、自由にデザインしてもらい、自分だけの「ぼっちとぽっち」を作ってもらっています。私が読み聞かせをしているとき、子どもたちがマスコットを手に持ち、おはなしに合わせて動かしたり、おはなしとは関係なく自分の世界の中で遊んでいたりと、子どもによって遊び方はさまざまで、おもしろいです。

───現在「ぼっちとぽっち」の絵本は、イギリスでは3作品が刊行されていますね。また、たくさんの国(中国語、韓国語、ベトナム語、スペイン語、カタロニア語)で翻訳されていることについて、どのように感じていらっしゃいますか?

どこかの国で、親子が寝る前に「ぼっちとぽっち」を読んでいる姿を想像し、とても嬉しい気持ちになります。「ぼっちとぽっち」を手に取ってくれた人たち一人一人にありがとうと言いたいです。イギリスのamazonのレビューには、図書館から借りてきた「ぼっちとぽっち」を2才の子どもに読んであげたらすっかり気に入ってしまって、何度も何度も延長して借りていたけれど、しまいには買うことにしました、というエピソードなど、嬉しい言葉が並んでいます。本当にありがたいことです。

───今回、日本で出版され、日本の子どもたちに「ぼっちとぽっち」の物語が届くことへの思いを伺えますか?

母国日本での出版は私の夢でした。いつか日本の子どもたちに「ぼっちとぽっち」を読んでもらいたいと思っていましたが、その夢がついに叶って本当に嬉しいです。今まで応援し続けてくれた両親に、日本語の「ぼっちとぽっち」をやっと届けることができ、幸せに思います。出版社から絵本の見本を送ってもらったとき、やさしいひらがなの文字が並んでいるのを見て、とても心が満たされた気持ちになりました。さっそく自分の子どもたちに読んであげましたが、やっぱり日本語で読んだ方がしっくりきますね。

「世界の平和は、まず家庭の平和から」

───日本の大学を卒業後、レバノンで日本語の教師をされ、その後カナダ、イギリスの大学で美術を学ばれたそうですね。アートの道へ進むことになったきっかけを教えてください。

子どもの頃から絵が好きで、美術を学びたいという夢を持っていましたが、親から反対されて、アートの道は現実的でないと思うようになり、大学は教育学部に進みました。語学留学先で行ったアイルランドで、日本語教師になろうと思い立ち、翌年、日本語教師派遣の要請があった中東の国レバノンに赴きました。在レバノン日本国大使館で日本語を教えていた際、受講生の中に美大の学生さんたちがいました。彼らの制作現場を訪れたとき、自分の夢に向かって、本当に好きなことを勉強している学生さんたちの姿を目の当たりにしました。そのとき、「私が本当にやりたかったのは、これだ!」という思いが湧き上がってきたんです。「人生は一度きり、やりたいことをやらなければ、あとで絶対後悔する!」そう思った私は、アートの道へ進むことを決意しました。
帰国後、地元で塾講師として働いたのち、日本に比べて学費が安く、語学力も磨きながら美術を学べるカナダの大学に進学しました。これが、アートの道へ進むスタート地点となりました。

まつばらさんのアート作品

───その後、絵本を描こうと思ったのは、何か契機があったのでしょうか?

私の中で、「世界平和に貢献したい」という強い想いが子どもの頃からあって、自分には何ができるだろうと常々考えてきました。
イギリスの大学院時代、原子力産業の問題点をテーマにしたアート活動を始めましたが、原子力をめぐる問題を知れば知るほど、扱っている問題が大きすぎて自分のやっていることが無意味に思え、悶々とした日々が続きました。それで、いったんこのテーマから離れ、私自身が夢を描ける世界、私のアートを見る人が夢を描ける世界に意識を持っていこうと思いました。それで始めたのが絵本なんです。

「ぼっちとぽっち」のイラストを描いているとき、自然と笑顔になっている自分がいました。シンプルであたたかい世界が、私は好きです。最初は自分が楽しむために描き始めた絵本ですが、その後マザー・テレサについての逸話を読んで「あっ」と思うことがありました。

それは、ある男性が「世界平和のために私たちはどんなことをしたらいいですか?」と尋ねたとき、マザー・テレサは「家に帰って家族を大切にしてあげてください」と答えたというものです。

───まつばらさんにとって、絵本制作の面白さとはどんなところでしょうか。

自分の世界観を、おはなしと絵を通して自由に表現できるところ、そしてその世界観を読者と分かち合えるというところです。

「世界の平和は、まず家庭の平和から」
絵本を通して、その手伝いができたらいいなあ!と思いました。それで、絵本を描くことへの意欲に拍車がかかりました。

───絵本を制作するようになって、感じるようになったことはありますか?

子どもの視点から物事を見ることの大切さを強く感じるようになりました。ついつい大人の視点から物事を見てしまい、おはなしが理屈っぽくなってしまうことがあるんですよね。そういうときは、子どもの視点に立ち返るよう努めています。子どもが生まれる前はそれが難しかったのですが、2児の母となり、今は子どもたちを通して学ばせてもらっています。
今は、毎日の生活が絵本作りに活かされています。今手がけている「ぼっちとぽっち」シリーズ4作目の絵本も、2才のとってもいたずらな娘に振り回されている今の私の生活が活かされているんですよ(笑)

子どもたちに、やさしくてあたたかい世界を体験してほしい

───やわらかなタッチから生まれる画面のあたたかさ、ふわふわのくつしたや、色合いもとても美しくて、惹きつけられます。どんな画材を使って描かれているのでしょうか?

油性の色鉛筆を使っています。背景でぼかしてある部分は、指に布を巻いて、筆洗油をつけ、色鉛筆をぼかしています。
水彩絵の具、アクリル絵の具、パステル、クレヨンなど、いろいろ試したのですが、くつしたのふわふわ感を出すのには色鉛筆が一番適していたので、色鉛筆で描くことに決めました。水彩色鉛筆も試しましたが、私は色がより鮮やかな油性色鉛筆の方が好きです。

制作風景
原画『Bocchi and Pocchi's Big Surprise』より

───好きな絵本作家や影響を受けたアーティストを教えてください。

好きな絵本作家はいっぱいいるのですが、絵なら黒井健さん、いわさきちひろさん、『スノーマン』(評論社)のレイモンド・ブリッグズ、絵本としては、かこさとしさん、長新太さん、馬場のぼるさん、バージニア・リー・バートン、アーノルド・ローベルが特に好きです。「ぼっちとぽっち」の絵本を描くにあたっては、同じく色鉛筆を使っている黒井健さんとレイモンド・ブリッグズから受けた影響が大きいです。

───ご自身が子どもの頃は絵本が好きでしたか?

絵本、好きでしたねぇ。絵が大好きだった『しずくのぼうけん』(福音館書店)と、トラがバターになってしまう『ちびくろさんぼ』(瑞雲舎)がお気に入りでした。

───今後どんな絵本を作っていきたいですか?

「ぼっちとぽっち」シリーズは、まだまだいっぱいアイデアがあるので、この次はどんな風におはなしに膨らましていこうか、ワクワクしながら考えています。赤ちゃん向けのしかけ絵本も作ってみたいです。「ぼっちとぽっち」以外にも、息子が大好きな深海の世界を舞台にした絵本も作ってみたいなあと考えています。息子はどういうわけか、2才の頃からチョウチンアンコウが大好きで、6才になった今でもチョウチンアンコウの絵をしょっちゅう描いています。そのうち、想像力豊かな息子との合作絵本が誕生するかもしれません。

イギリスでの子育ての様子を描いた「絵本作家のイギリスどたばた子育てマンガ」のようなものも描きたいなあと考えています。ネタはノートにちょくちょくメモしているのですが、なにせ子育てでどたばたしているので、なかなか漫画を描く時間が確保できず・・・かと言って、今描かないと、子どもたちはどんどん大きくなってしまうし・・・。もっと早起きして描くしかないかな?

───最後に、絵本ナビ読者へメッセージをお願いします。

子どもたちは私たちの未来です。人類の未来の行方を決めるのは子どもたち。その子どもたちに、やさしくてあたたかい世界を体験してほしい。現代の情報世界では、否が応でもネガティブな情報がいっぱい入ってきます。こんな時代だからこそ、子どもたちが大人になったときに心のよりどころとなるような、幼児期の心あたたまる体験が大切だと思うのです。
「世界の平和は、まず家庭の平和から」というマザー・テレサの言葉に表れているように、親子が絵本を通して愛にあふれる温かい時間と空間を共有することは、子どもの人間としての感性を育み、共感力のある大人に成長する手助けになると思います。ぼっちとぽっちのお互いを思いやる気持ちにふれ、親子がやさしい気持ちになれることを願います。

───ありがとうございました!

<おまけ>まつばらさんにイギリスの生活についてもう少し聞いてみました!

Q 1日の好きな時間・制作時間について教えてください。

朝、目が覚めたときが一番好きです。「今日も一日が始まる!」と、嬉しい気持ちになります。軽くストレッチをしてから、子どもたちが起きてくるまでの間、仕事をします。息子を小学校、娘を保育園に送った後、お昼すぎに娘を迎えに行くまでの間、絵本を制作します。私は夜が弱いので、午前中が勝負です!今は子育てで絵本制作の時間はかなり限られていますが、娘が小学校に上がったら、もっと時間がとれるようになると思います。

Q 普段、気分転換はどんなことをされていますか?

家庭菜園です。外の空気にふれながら土をさわっていると、大地からエネルギーをもらったような感じがして、リフレッシュした気分になります。

Q イギリスで、今どんな絵本が人気があるのでしょうか?

最近はユーモアのある絵本が人気がありますが、昔からの絵本も根強い人気があります。「ピーター・ラビット」シリーズやクマの「パディントン」シリーズ、「ミスターメン」シリーズなど。日本の絵本はイラストがかわいいものが多いですが、イギリスの絵本は、かわいらしいイメージではないものも多いです。「怪物グラファロ」シリーズのイラストって日本のイラストとはちがう独特な雰囲気があるんですが、イギリスではとても人気があります。
キャラクターに関しては、男の子の服は青、女の子の服はピンク、という従来の型にはまった色感覚などをなくす風潮があるようです。また、人種・文化を融合したさまざまな登場人物が絵本に出てくるようになりましたね。イギリスの政治的・文化的な変化が絵本にも現れているんだと思います。

文・構成:掛川晶子(絵本ナビ編集部)

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