箱のなかにはいっているのは?!
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絵本紹介
2021.11.19
出版社からの内容紹介
かこさとしの「からす」は『からすのパンやさん』だけではなかった!!
からすの兄弟の成長物語… 子どもの好奇心を描いた名作絵本が復刊!!
かこさとしのからす絵本は、何といっても『からすのパンやさん』ですが、実は、他にもからすたちが主人公の絵本があったのです。
からすの兄弟、たろうがらすとじろうがらす。
ある雨の日、お母さんがらすに、静かに留守番をするよう言われますが、雨が雪になったから、おとなしくなんてしちゃいられない!
寒〜い雪の中で何して遊ぼう!? お母さんの言いつけも、あふれる好奇心には勝てません。
さてさて、その結果はいかに…。
かこさとし先生による、保護者たちに向けての「あとがき」も秀逸。子どもの成長に本当に必要なことは何かを気づかされる一冊です。
※本書は、1984年・偕成社刊『たろうがらす じろうがらす』を再編集し、新装復刊するものです。
※カバー画像はイメージです。
この書籍を作った人
加古里子1926(大正15)年福井県武生町(現・越前市)生まれ。1948年東京大学工学部卒業。工学博士。技術士。民間化学会社研究所に勤務しながら、セツルメント活動、児童文化活動に従事。1959年から出版活動にかかわり、1973年に勤務先を退社後、作家活動とともに、テレビニュースキャスター、東京大学、横浜国立大学などで児童文化、行動論の講師をつとめた。また、パキスタン、ラオス、ベトナム、オマーン、中国などで識字活動、障がい児教育、科学教育の実践指導などを行い、アメリカ、カナダ、台湾の現地補習校、幼稚園、日本人会で幼児教育、児童指導について講演実践を行った。『だるまちゃんとてんぐちゃん』『かわ』(福音館書店)、『からすのパンやさん』(偕成社)、『富士山大ばくはつ』(小峰書店)など、500冊以上の児童書の他、『伝承遊び考』(全4巻・小峰書店)など著書多数。土木学会著作賞、日本科学読物賞、児童福祉文化特別賞、菊池寛賞、日本化学会特別功労賞、神奈川文化賞、川崎市文化賞、日本児童文学学会特別賞、日本保育学会文献賞、越前市文化功労賞、東燃ゼネラル児童文化賞などを受賞。
「たろうがらす じろうがらす」は大人から見ると一見、からすの兄弟がお留守番中に雪遊びをする(そして風邪をひく)という日常風景が描かれているだけに思えますが、子供から見ると雨があられに変わり、雪に変わる中での兄弟の発見や感動や想像力で遊ぶ様子が描かれていて、この一日は兄弟にとって風邪をひいたことまで含めていろんな体験、経験に結びつく特別な一日だったんだなと、かこさとしさんのあとがきを読んで気づかされました。
ついつい大人は雪で遊ぶ→風邪をひくという結果までが見通せてしまい、制止しがちですがこどもはこういった一つ一つの小さな経験の積み重ねによって大きく成長しているんですね。
2021年夏、東京オリンピックで13歳の女の子がスケボーで金メダルを獲りました。「真夏の大冒険」と称されたその活躍は、今までのオリンピックのイメージを覆すような、のびのびと大舞台を楽しんでいる姿で、日本中を明るくしてくれたように思います。
13歳、我が家の長男と同い年!長男はついつい過保護になってしまい、小さい頃は自転車すら危ないからと遠ざけてしまっていました。
どうしても危なくなるまえに障害をどけてしまったり・・・。
スポーツにけがは付き物なので小さいころから色々挑戦させるのは、特に危険なスポーツであるほど親御さんは躊躇したことと思います。でも子供の好奇心、挑戦する心を見守って大事に大事に育てた結果が、こういった快挙に結びついたんだと思います。
かこさとしさんがこの本のあとがきでおっしゃっていることがこうやって花開いてますよ!と天国のかこさんに伝えたいです。
「たろうがらす じろうがらす」が復刊された今、ぜひ子供たちに読み継いでいきたいですし、自分の子育ての反省もこめてこれから小さい子に接するすべての人にかこさんのメッセージが伝わってほしいと思います。
(いちりんのはなさん 40代 ママ)
この絵本の面白さを絵から読み解いていきましょう。
まずは、表紙の絵をよーく見てみます。くちばしが青いカラスと黄色いカラスがいますね。
「えっ、どっちがお兄さんのたろうがらすかな」という疑問が湧くとともに、
「くちばしは黄色いほうが大きいから黄色い子の方かな」などと考えをめぐらします。
次に、めくって中表紙の絵を見ると、絵は箒とちりとりでこの二人がチャンバラをしている絵に変わっています。
「お兄さんがリーダーシップを持っているなら、お兄さんが先に武器を取るだろうから武器らしい箒を持っている青いカラスがたろうがらすだろう」と考えたります。
この謎が解けるのは12ページにおいてです。文章に、あられのおだんごをたろうがらすが売り始めたと書いてあり、その下には、青いくちばしのカラスがおだんごになったあられを売っている絵が描いてあるからです。
「やっぱり、箒をもっていたのがお兄さんのたろうがらすだ」と自分の予想が正しかったことにここで「ニヤっ」とできます。
14ページから17ページまでは、圧巻の連想造形遊びシーンです。エズラ・ジャック・キーツの「ゆきのひ」を始め子供が雪で造形遊びをする絵本は多いのですが、降りつつある雪の中で作っているからこその連想造形遊びを描いている絵本は他にないと思うのです。
上を向いて降ってくる雪をずーと見ていると、自分の体が空に向かって飛んで行くような錯覚を覚えるわけですが、その様子を14ページでは、ただの丸い雪で表現し、15ページになると、それに白いスピード線を入れて錯覚のスピード感を表現しています。
かこさんは親切に、たろうがらすの脇にはあられのお団子も描いてあり、こっちがたろうがらすだよと分かるようにしてくれてます。
15ページの最後の方で、二人が「宇宙船に乗っているみたいだ」と言っているのを読みながら、次の見開きに行くと雪だるまから発展した大きな雪宇宙船を二人で作ってしまった様子が描かれています。ここでは、降る雪のスピード感はさらに強まっています。単純な絵なのに、見れば見るほど発見があります。絵本は絵を見ることが大切だということを教えてくれる絵本でもあります。
かこさんの素晴らしさをまとめますと、子供の想像力を掻き立てる絵本作りのベースとして子供の心がどのように動くかを熟知しているだけでなく、文章と絵の掛け合いを使ってその子供の心の動きに寄り添い、さらに揺さぶりをかけるという、絵本作りの高度な技術をも持ち合わせている人、と言えると思うのです。作る側も読む側もたくさんのことを学べる絵本を復刊していただけたことは大変喜ばしいことだと思いす。ありがとうございます。
(笠尾さん 50代 せんせい)
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