●細かいところも本当にリアル! 絵に込めた思いは…?
───絵本のこともいろいろ伺いたいのですが、今回もすごく細かいところまでリアルに描きこまれていますよね。本の陳列とか、やはり取材をした本屋さんを参考にされているのですか?

───人生!?
その書店では、棚の一番左の端に出産、そして子育て関係の本、それから絵本や学習参考書、仕事関係、恋愛、結婚の本が並ぶ棚と続いて、最後、一番右の棚にはお墓の選び方やエンディングノートなどの本を並べているそうなんです。それを聞いたときに、なるほど!と思いましたね。
───絵本のなかの「どんぐりしょてん」の本も、1冊、1冊本の表紙や背がデザインされていて、何より、タイトルにすごくこだわりを感じました(笑)。この回転塔もカワイイですよね!
───そうなんですか? 子どもたちはあそこから本を選ぶのが大好きだと思うのですが。
何軒か取材をして、ようやく神奈川県茅ケ崎にある長谷川書店さんで見つけたときは嬉しかったですね。物語が進むに従って、回転塔に置いてあった本が売れて、しばらくはなくて、後日、新しい本が補充されていたり…と変化しているんですよ。
売れた絵本が補充されたのが、わかりますか?
───さすがです! 「売れた本は補充!」も本屋さんのお仕事。それをさりげなく、回転塔の絵本の変化で描いているんですね! 個人的に「ほんは、こころのえいようです!!」というどんぐりしょてんのキャッチコピーがかなり気になったのですが。

これも長谷川書店さんが実際に掲げているキャッチコピーをもとにしています。地域密着型の書店さんなんですが、本は文化教養を伝えるものだから、地域には絶対必要なのだと、志高くお仕事をされている姿がとても印象的で、どんぐりむらでも少しアレンジして使わせてもらいました。
───いろんな書店さんの要素が、どんぐりしょてんには生かされているんですね。


「どんぐりしょてんつうしん」にもかなり力が入っています!お楽しみに♪
───読者の方が、この絵本を持って本屋さんに行き、似ている部分を探してみるのも盛り上がりそうですね。今回、どんぐりしょてんでは、「てんちょう」「くるん」「こなろう」の3つぶのどんぐりが働いています。みんなそれぞれ役割がちがっていいですよね。モデルはいるのでしょうか?
───本が好きで、知識も豊富、お客さんみんなに対して親切丁寧…まさに憧れの存在ですね。てんちょうさんはあの売れっ子小説家「すだ・じい」先生の弟なんですよね。看板娘の「くるん」ちゃんは『どんぐりむらのぼうしやさん』で登場した「くりん」の妹で…。どんぐりむらの家族関係の広がりが見えて、とても面白かったです。

───知らないキャラクターがいたら辞書がわりに調べられますね! ところで、おはなしの後半では、絵本のおはなし会の様子が描かれていますが、「どんぐりむら」シリーズで海の世界を体験できるなんて…とビックリしました!
私も海の生き物を描くのは初めてでした(笑)。学研さんの得意分野である、図鑑チームから資料をご提供いただいたりしながら、頑張って描いたのですが、柄や形をとらえるのが難しい魚もいて、結構苦労しました…。一番難しかったのが、左端のツバメウオの群れです。
───そんな苦労を感じないくらい、美しい海中の様子が描かれていて、「どんぐりレッド」の絵本の世界に引き込まれてしまいました。

───本の世界に入っていける。そういう読書体験を多くしている子が、本好きになるんでしょうね。