──── 刀根さんの絵本は、ヨーロッパやアジアでも出版されていますが、はじめは何語で考えられるのですか?
物語は日本語で考えますが、出版社に見せるときは英語、もしくはイタリア語で文をつけます。ネイティブではないので、表現は直してもらいます。言語がわからない国の翻訳版はノーチェック。一方、日本語版の場合、訳者さんは立てません。編集担当者さんと時間をかけてつめていきますが、日本語はわかるだけあって言葉選びは悩みますね。そうそう、イタリア語には擬音や擬態語がないらしいんです。『きみへのおくりもの』のなかで、湖に浮かぶものを「キラキラ光るもの」と表現しましたが、イタリア語は「光」という単語だけ。そういう意味では日本語版の表現が気に入っています。
「答えはすぐそこに」
・絵の雰囲気、構成が素敵です。ハートがたくさん出てきます、読むと幸せを分けてもわらえるようなそんな温かい、可愛い絵本です。
(ととくろさん 30代)
「贈りものにはみんな困ってきましたね」
・ボクたちは大切な人に何を贈ることができるだろう。できるだけそっとやさしくやさしく、読んでみてください。説明なんかはいりません。小さな心に、きっと届きます。
(すたすたじじいさん 60代)
「たくさんの「キュン」をくれる本です」
・不思議なもので、私が嬉しそうに読み聞かせる、クロとシロのお話に、布団の中の息子も毎晩じっと耳を傾けてくれます。私を喜ばせようと、私のお気に入りの絵本を優先させてくれたのかと思うとまたキュンと幸せな気持ちに包まれました。息子がこのまま優しく育って、素敵なシロに出会えますように。
(カオリンゴカモシレナイ 30代)
──── このサイトをご覧になっている方のなかには、絵本作家を目指している方がいらっしゃるかもしれません。メッセージをいただけますか。
イタリアで生活しながら絵本を創作していることを「すごい!」と言う人がいるのですが、すごいことはなにもないんですよ。言葉は生活していれば話せるようになりますし、私より絵が上手な人は五万といます。ただ、チャンスをつかむための努力はしてきたかな。海外で仕事をする場合には、まず言葉の壁は越える必要があります。実力があっても、それを相手にアピールできる力をつけなければなりません。人生やったもん勝ち! ぜひ夢がある人は、行動してほしいです。
2015年、ブックフェアの出版ブースで行われたサイン会
●編集者のことば

刀根里衣さんの絵に出会ったのは2014年のボローニャ児童書ブックフェアの会場でした。期間中、大量の絵本を手にしました。かわいらしい絵本も、ハートフルな絵本もたくさんありましたが、無条件に出版したいと思ったのは、『ぴっぽのたび』の原書である“El viaje de PIPOだけでした。前の年に国際イラストレーション賞を受賞した作品を絵本化したこの作品は、静かに、しかし、その存在をしっかりと主張していました。この作品と出会えたことを心から感謝しています。幼いころ、言葉で何かを表現することが苦手であった少女は、夢を諦めずに、生きる道をイタリアという場所に見出しました。誰にも媚びることなく、「自分のために描きたい」ということを恐れずに言葉にする勇気をもった絵本作家さんです。これからどんな作品を見せてくださるのか、編集者としてとても楽しみです。

取材・文:NHK出版
●刀根里衣さんサイン会、決定!!
日時:9月12日(土)・13日(日) 午後2時より
場所:西宮市大谷記念美術館
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