●絵本を見て「なつかしい」
───どんな方が読んでくださっているのでしょう。
子ども向けの本ですが、読んでくださっている方の年齢層は幅広いみたいです。
先日、認知症のお母様を介護中の方から、母がこの絵本を見て笑いました、母の笑顔を久しぶりに見ました、とお手紙をいただいて・・・ああこの本を作ってよかったと心から思いました。
60・70歳代のシニア世代の方がお孫さんへのプレゼントとして買ってくださることもあると聞きます。それはこの本を見て「なつかしい」と感じてくださっているのかな。時代は変わりますし、変化していくことは当然だと思いますが、『「和」の行事えほん』は昔からの伝統的な事柄を絵にしていますから。
───月のカレンダーがあるのがいいですよね。ひとつひとつの行事の由来や意味はもちろん、月ごとにぎゅーっと詰め込まれた解説が細やか。情報量に驚きます。
その一方で、親しみやすいというか、読んだらすぐにでも見にいけそうな季節のお祭り知識が描かれていたり、家庭でマネできそうな季節の遊び方やアドバイスが描かれていたりする。ここがポイントなんです!
行事のお作法ばかりだと「これはできないなー」なんて私はすぐ思ってしまうんですけど(笑)。
「伝統的」で「本格的」なことをおうちでしましょうという提案ではないの。私だって、行事の由来を母と話したわけではないから、本を作って初めて知ることがたくさんありましたよ(笑)。
行事を知り、じゃあ、うちでできるのは何だろう?というとき参考にしてもらえればいいなあと。
───巻末の参考資料の数に驚きました。すごい量の資料を読んだのではないでしょうか。
地方やご家庭によって行事の仕方は様々です。編集者が資料を集めてくれましたが、とても間に合わず、もう一人手伝ってくれる方をお願いし、月ごとに資料を集めてぶあついファイルにして読み込んでいきました。
ひな祭りは迷うほど資料が集まるけれど、それほど資料が集まらないものもある。北海道と沖縄では行事がまったく違う。資料を集めて読むだけで半年はかかったと思います。そのなかから、それぞれの行事の意味や作法の、なるべく基本的なことをおさえつつ、子ども向けにはどんな情報がいいのか精査して構成を決め・・・調べた情報量の3分の2を捨てました。
本書きに入るまで1年半がかり。本書きに入ってからも丸1年はかかっています。
───聞くだけで気が遠くなりそうです!
ええ。大変なことをはじめちゃったと思いました。途中で息切れしそう、大丈夫かなと。でももう後には引けない。
先に「春と夏の巻」、あとから「秋と冬の巻」を出したのですが、「春と夏の巻」を実際に描きはじめるまでがいちばん大変だったかもしれない。
絵の数はこわくて数えていませんが、1冊に500〜600カットはあるんじゃないかな。それまでいくら手芸をしても絵を描いても腱鞘炎とは無縁だったのに、はじめて腱鞘炎になりました(笑)。
・・・でもそれだけこの本に懸けていたのかな。できあがったらもう・・・虚脱状態(笑)。
(編集者さん):動物の毛の一本一本まで描き込まれて圧巻でした。これは印刷所に製版をがんばってもらわなくっちゃと(可能な限り、原画に近づけるよう)印刷所の方々やデザイナーさんとも、何度も話し合いました。
───私も作家さんにお話をうかがうまで知らなかったのですが、原画の色合いやニュアンスを、絵本で再現するのはむずかしいことなのですよね。 高野さんはどんな画材で絵を描かれるんですか?草花、着物、器・・・細部までため息が出そうなほど細かくて美しいです。
カラーインクに少し色鉛筆を重ねて描いています。ぎゅーっと描き込みたいときは色鉛筆をさらに重ねて描いています。
着物の柄模様は意匠登録があるかもしれないので、出版後にトラブルにならないようすべてオリジナルです。お雛様衣装などの「伝統的な柄」というのはあるので、それはなるべくそのとおり、忠実に描きました。

───オリジナル・・・って高野さんが着物の模様を考案して描かれているということですか? すごい!!
きょうは原画を見せていただけるんですね。わーっ、お料理がおいしそう!
食べ物が好きで、食べ物の絵ばかり持ってきちゃった(笑)。 お正月の重箱は、うちにある梅の花の模様のお重を、お花の部分だけくまやうさぎの顔にして・・・なかなか気づいてもらえないから、ここにいるのよ!と言いたくて(笑)。

『「和」の行事えほん 秋と冬の巻』 七五三の原画

『「和」の行事えほん 秋と冬の巻』 お正月のお節料理の原画
出版社おすすめ
-
ひつじシステム
出版社:
小学館
めくるめく羊の世界!羊を数えると眠れるらしい。羊が1匹、、2匹、…108匹、ちくわ!、そうめん!?…