●学童の子ども達から生まれた『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』
『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』は私の絵本の中で食べ物を擬人化した最初の作品で、じっくり作りこんでいった印象が強いです。作り方も他とは少し違いましたし…。
───どんなところが違ったんですか?
当時、家の近くにある学童で指導員としてアルバイトをしていたんですが、その学童に通っていた小学1年生の女の子が歌っていたのが「♪あっちゃん、あがつくアイスクリーム〜♪」でした。それを聞いて「その歌、面白いね。」と歌詞を教えてもらって、子ども達と一緒に「あっちゃんあがつく」の手作り絵本やカルタを作って遊んだんです。
いちごジャムのページは最初から変わっていないんですね!!美味しそう…。
こちらは手作りカルタ。絵札はとってもカラフル!宝物ですね。
ちょうどその頃、仕事をしていた出版社さんに、学童で作った絵本の話をしたら、すぐに「その絵本、作りましょう!」と乗ってくれて、あっという間に本格的に出版することが決まったんです。
───すごくラッキーというか、めずらしいスタートですよね。
そうだと思います。でも、それからが大変でした。「♪あっちゃんあがつく〜」と歌があるんだから、その歌を作った人がいるわけで、絵本にするにはその方にも許可をいただかなければならない。でも、教えてくれた女の子は作曲者なんか知らない。結局、女の子の通っていた保育園の先生が調べてくれて、峯陽(みね よう)さんという方が作られたということが分かったんです。それで改めて峯さんに「あっちゃんあがつく」を絵本にしたいとお伝えしました。同時に、絵本にするにあたって、元の歌詞だと今の子ども達には馴染みのないお菓子もあったので、その部分も変えて良いかどうかも峯さんにお伺いしました。
───峯さんのお返事は?
「僕の詩は、歌っている人たちが自由に変えて良いんですよ」と快諾してくださいました。磯崎さんは「おばけなんてないさ」や「カレーライスの歌」、ご存知ですか?
───ええ、もちろん。子どもの頃に歌いましたし、息子も保育園で歌っていたくらい有名な歌ですよね。
その歌を作ったのも峯さんなんですよ。
───そうなんですか!
その他にもたくさん子どもの歌を作られている方なんです。峯さんの了承をいただいて、ようやく絵本作りをスタートさせることが出来たんですが、そこからも大変で…。
───まず、「あ」から「ん」までの食べ物を選ばなければならないですよね。
はい。それは、学童の子ども達にそれぞれ好きな食べ物を教えてもらうという形で、全面協力してもらいました。一番出なかったのは「へ」。元の歌詞は「へそまんじゅう」だったんですが、最後まで粘って…「へるしーさらだ」に落ち着きました。そんな風に子ども達の力を借りながらようやく50音全てが決まって、ラフも描き終えて、いよいよ原画だ!というときに、編集さんから連絡が入ったんです。 「大変です。このままでは“じゅんこちゃん”や“だいちゃん”が遊べません!」って…。
───まさか…。
───実際の絵本も、他に類を見ない厚みですものね…。絵本が完成したときは学童の子ども達も喜んだのではないですか。
───学童の子達からしたら、一緒に作った感じですものね(笑)。絵本を見て感動していましたか?
───(笑)。さいとうさんと子ども達は本当に気心の知れた間柄だったんですね。