●子どもにイライラしちゃうのは、睡眠不足かも!?
───じつは、なかなか眠れないのは子どもだけじゃない(笑)。子育て中のおとうさん、おかあさんは、年齢的に働き盛りでもあるし、いつも睡眠不足で……。
とくに家事に育児にたいへんなおかあさんが寝不足だと、子どもにイライラしちゃうんですよね〜。
「睡眠不足が続くとイライラしやすくなり、カップルがケンカしやすく、仲直りしにくい」というアメリカの調査データがあるんですが、要は、イライラするとつい身近な人に当たりやすくなるわけです。睡眠不足になると、感情のコントロールがきかなくなりますから。
だからね、子どもに当たっちゃったり、強く言っちゃったりして落ち込んでいるおかあさんに言いたいです。それは自分の性格の問題じゃなくて、睡眠が足りてないからかもしれないのよ!と。
───ママが悪いわけではなくて?
そうなの! だから、ついお子さんに当たっちゃうのは、眠りが足りないからかもしれないと思って、まずは一緒に眠ってほしいなと思います。お子さんもだけど、まずあなた自身をゆっくり眠らせてあげてほしいなと思いますね。
あとね、睡眠不足になると自己評価も低くなるんですよ。

───わかる気がします!
あぁ〜〜こんな自分じゃダメだ!と自分を責めて落ち込んだり、自分はこんなもんかな、しょうがないな、とあきらめたりしちゃうんですね。
───今日もあれもできなかった、これもできなかった、と夜に思っちゃう自分がいます……。
だからね、やっぱり、まずは眠ったほうがいいですよ! だって、日本の女性は、世界でいちばん睡眠時間が短いことが統計でわかっているんです。みんなちゃんと眠るようになれば、ママとパパも、おうちの中でも外でも、もっとトラブルが減るかもしれない(笑)。
おすすめしたいのは、本当は『おやすみ、ロジャー』を読んで、親子で一緒に早く寝ちゃうこと! そのぶん早起きして朝自分の時間を作って、やりたいことをやってほしいと思います。
子どもたちが起きてくるまで、と期限が決まっていると、人間の行動は自然に効率が上がるものなんです。子どもが眠った後にやろうと思っているとどうしたって終わるまで寝られず、睡眠時間は足りなくなります。先に睡眠時間を確保しちゃうの。
───たしかに一度ちゃんと眠るとその効果がよくわかります。元気になるし、前向きな気持ちになれますものね。
眠りに入るときの意識ってすごく大事なんですよ。眠る前の心持ちで、眠りは変わります。
たとえば、一日って、いつ、どこからはじまると思います?
───やっぱり朝から……ですね。
起きてすぐ、目覚めたときに一日がはじまって、昼間活動して、夜の睡眠はそのあとにくるもの。昼間活動したから、その疲れをとるものが睡眠だという意識がないですか? 一日で考えたとき、睡眠のほうがあとにくるものだと。
───あります、あります。
じゃあ、もう一つ質問しますね。
もし自分の人生が、明日の深夜0時に確実に終わる、残り24時間とちょっとで死んでしまうとわかっていたら、今晩、眠りますか?
───眠らないような気がします。
そうですよね。私たちは明日がないとわかっていたら眠らないわけですよ。つまりどういうことかというと、一日の疲れをとることが睡眠の一番の目的ではなくて、明日のために眠るということが一番の目的なんです。
『おやすみ、ロジャー』を読み聞かせるパパママは、「やっと寝てくれた〜」という気持ちで、子どもが眠ったあとも色々片付けたり明日の準備をしたりして、「あ〜疲れた。ようやく一日が終わった、やれやれ」って眠りにつくかもしれない。そういう方たちのお役に立つのもうれしいけれど、それでは、ちょっともったいないです。
今、昼間活動して何を得るかにみなさんの焦点が当たっているけれど、それを成り立たせているのが夜の睡眠なんですね。昼のパフォーマンスを高める本質は、夜の睡眠をしっかりとることです。「昼の活動」と「夜の睡眠」は表裏一体で、二つは一つ。本来昼と夜は同じ価値があるわけです。
───昼と夜は同じ価値がある……。
そうです。だからこそ、眠りにつくときに「明日のために眠る」と意識しながら眠ってほしい、それが「快眠」につながるんです。
眠れない人って、大人もそうなんですけど、色々考えすぎて眠れないんですよ。脳がストレスで緊張したり、興奮してしまっていたりね。次から次に考えが止まらなくて眠れない。
でも、眠る前の時間の過ごし方の意識を変えてみる。そうしてリラックスして眠りに入っていくことに『おやすみ、ロジャー』が役立ったらいいなと思います。
夜の睡眠が心から大切に感じられる。そういうふうにすべての人の意識が変化したら、もっと暮らしやすくて、安心して人間らしさを表現できる豊かな世界になっていくんじゃないかなと思って、私は快眠セラピストの仕事をしています。
●眠る力は、脳を育てます!
───もっともっと遊びたい、眠りたくなんかない、という子どもたちに、「眠っている間に、体には大事なことが起きているんだよ。だからぐっすり眠るんだよ」と話してあげられたらいいなと思います。
眠ることは、子どもの体を成長させ発達させます。だから背が高くなりたい子はしっかり眠ったほうがいいですよね。
脳を育てるのも睡眠です。子どもは大人よりレム睡眠が長いってこと、知っていますか。
───レム睡眠というと……夢をよく見るときの、浅い眠りのほうですか?
レム睡眠は浅い眠りというだけではありません。レム睡眠のとき、私たちの脳はものすごく活発に動いています。
子どもについて言うと、レム睡眠は「脳を育てる眠り」なんです。子どもは、大人に比べて、一晩の睡眠のなかでレム睡眠の割合が多いんですね。
いずれにしてもレム睡眠って後半なんですよ。最初はノンレム睡眠にはじまり、後半のほうにレム睡眠の時間帯が増えるから、「睡眠の長さ」はある程度必要なんです。そうじゃないと、子どもの脳が育たないの。
───そうだったんですか!?
睡眠にもいくつか段階があるんですけど、寝入りばなは深いノンレム睡眠の時間帯が増えます。そこで成長ホルモンがぐっと分泌されるので、体を発達させるためには前半の深い眠りが大事です。そして、脳を育てるためには、後半の眠りが大事なんですよ。
───脳を育てるというのは、単純に「頭がよくなる」とかいうことではなく、感情も育てるということですよね。
もちろんです。情緒を司る脳が、眠りの後半に養われます。
最近、切れやすい子どもが増えているのは、睡眠不足が原因だというレポートも上がっています。だからやっぱり、子どもの眠りは短くちゃだめなんです。
でもね、大人だってそうですよ。質がよければ短くてもいいだろうって考えている方もいると思いますけど、ある程度は短くできても、削りすぎてはダメ。大人で言うと、6時間を切ると一気に脳の認知機能が落ちますからね。ぐっすり眠れる人は認知症にもなりにくいんですよ。
───そんなに睡眠が大事だったなんて。ちょっとドキドキしてきました(笑)。
『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』を効果的に楽しむために、三橋美穂さんからアドバイスをいただきました!
絵本と一緒にぜひ以下のおやすみチェックポイントも、チェックしてみてくださいね。

───最後に、快眠セラピスト・三橋美穂さんから、絵本ナビ読者のみなさんへメッセージをおねがいします。
『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』には、入眠に効果的なメソッドがたくさん盛り込まれています。意識的に体をゆるませ、眠りやすくする。そうしてリラックスして体を休ませることで、朝起きてからの活動が今よりもっと輝きを増すことでしょう。
気持ちよく眠ることは、とても大事なことです。働き盛りの30、40代のおとうさんおかあさんは、ストレスで脳が興奮したり緊張したり、よい眠りを確保することがきっとむずかしい時期でしょう。
ときにはこの本を読んで、お子さんと一緒に眠ってみてください。親も一緒に眠るつもりで読むと、お子さんの入眠効果が、より一層高まると思います。
『おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本』を読むことで、お子さんがロジャーとともにぐっすり眠り、ご両親も寝かしつけの奮闘から解放されて、心地よい眠りをむかえられますように!
───ありがとうございました!
編集後記

ショールームのような素敵なサロンでお話をうかがいました!
たくさんの形の枕や寝具類があり、取材後、スタッフは実際に枕を当てて体にフィットする形をアドバイスいただきました。頭の形と体型、姿勢を見ただけで、その人にどんな枕が合うかだいたいわかってしまうという三橋さん。 “快眠セラピスト”のすごい技を堪能させていただきました。
ちなみにライターの私には「かなり低くていいんじゃない? 枕なしでもいいけど、バスタオルを折ったくらいの高さで、首のところをちょっとだけ高くすると楽ですよ」とのアドバイス。本当によく眠れるようになりました! びっくり!

インタビュー・文: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所靖子