●お母さんに「寄り添う絵本作り」。親子の思い出に残る絵本。
───主婦の友社では読み手となるお母さん方が共感を覚えた絵本を数多く出版されています。絵本を出版することに関して、特別な思いや大切にしていることがありますか。
弊社はおかげさまで来年創業100周年を迎えます。「主婦の友社」という社名が示す通り、約100年間、女性を応援する本づくりをしてまいりました。雑誌、書籍ムック、絵本さまざまな形で多岐にわたるジャンルで多数の刊行物を世に出してきましたが、常に共通するマインドは「読み手の立場に立つこと」であったのではないだろうかと思います。料理書であれば「そのレシピを見ればおいしく作れるように」、育児書であれば「お母さんが何が心配なのか、どんなアドバイスが欲しいのかにお答えする」、そういった視点です。

育児・絵本担当 編集委員 山口香織さん
絵本についても、どんな人が、どんなシーンで、どのようにこの絵本を読んでくれるのか、そういったことをいつも考えています。「本が読まれている」そのシーンをイメージしながら、判型、ページ数、タイトルなどを決定していきます。
弊社ではマタニティ誌『Pre-mo』(プレモ)、育児雑誌『Baby-mo』(ベビモ)、幼児から小学生ママ向けの『Como』(コモ)という雑誌を発行していて、主にお母さん向けコンテンツをお届けしています。編集作業を通して、お母さまがたにお会いする機会も多く、「生の声」を日々お聞きしながら記事作りをしております。また、担当編集者には子どもを持つママが多数いますし、私自身も2人の子がおり、今後ますます、その貴重な体験をお子さんやお母さんに「寄り添う絵本づくり」をする上で生かしていきたいと思っております。
お母さん向けのコンテンツをたくさん提供してきた弊社として、絵本を1つの「親子のコミュニケーションの場にしていただきたい」という強い思いがあります。
子どものころの絵本を読んだ記憶が、その内容ももちろんなのですが、「お母さんが寝る前に読んでくれた」「お父さんのおひざの上で読んでもらった」など、親子の思い出として心に残ってくれたら、こんなにうれしいことはありません! ぜひ、お子さんに読み聞かせたり、いっしょに絵本を読むときには、抱っこしたり、隣にピッタリくっついたりとスキンシップをとりながら、心温かい読書タイムをお過ごしいただければと思います。
●あかちゃんから大人まで、愛され支持されている理由
───海外作品も数多く出版され、お母さんに人気の高い良質な絵本もたくさんありますね。作品について少しご紹介していただけないでしょうか。

お母さんに絶大な人気を誇る、主婦の友社の絵本
ありがとうございます。
海外の翻訳絵本については『ちいさなあなたへ』が50万部を超えるなど、おかげさまでたくさんのかたに読んでいただいております。
国内の本では『わたしがあなたを選びました』が40万部を超えました。この2冊は、読んだかたがご友人などにプレゼントされ、また口コミで広がりと、長く愛されて続けています。「読んで自然に涙が流れた」というご感想を、ほんとうにたくさんいただいていますどちらも「お母さんを癒やす本」という共通項があります。
- ちいさなあなたへ
- 作:アリスン・マギー
絵:ピーター・レイノルズ
訳:なかがわ ちひろ - 出版社:主婦の友社
親でいることの喜び、不安、苦しみ、つらさ、寂しさ、子どもへの思い――普遍の真実が、あたたかな絵とシンプルな言葉で語りつくされ、読む人たちの涙をさそいます。だれもが一生の宝物にしたくなるような絵本です。
- わたしがあなたを選びました
- 作:鮫島浩二
絵:植野ゆかり - 出版社:主婦の友社
「子どもはみな、愛されるために生まれてくるのです」……胎児のモノローグの形でつづられる小さな絵本。親子の原点を呼び起こす癒しのメッセージとして、口コミやネットをつうじて、感動の波が広がっています。
また、『いつまでも』は「おかあさん、いつまでぼくの おかあさんでいてくれる?」と子どもが問いかける絵本なのですが、心和むイラストに、俵万智さん翻訳の言葉がつづられているやはり「抱っこして読んであげ、お母さんもほのぼのとした気持ちになる」のに、まさにピッタリな一冊かなと思っています。長年、「お母さん」を応援する実用書や雑誌を多数発行してきた弊社としては、このジャンルは大切にしていきたいと思っています。
───絵本以外にも実は、ユニークな3Dずかんやしかけ絵本、児童書など幅広いジャンルの子どもの本を手掛けていらっしゃいますが、御社で対象としている子どもの年齢層を教えていただけますか。

赤ちゃんのための絵本「はじめてブック」シリーズ
『だっだぁ〜』などはファースト絵本として0才から楽しんでいただきたい本ですし。いろんな手触りで楽しめる『ベビータッチ』シリーズも人気です。『頭のいい子を育てる』シリーズは幼児から小学生を対象としています。 また、翻訳ものの科学系読み物で、小学校高学年から大人までを対象にした本もあります。『発明図鑑 世界をかえた100のひらめき!』という新刊が11月に出ました。アインシュタインからビルゲイツまで、たくさんの歴史的発明を紹介しているおもしろい絵本です。既刊本では『元素図鑑 宇宙は92のこの元素でできている』が人気です。 前述の「お母さんを癒やす」方向性の本は『大人向け』です。つまり、対象年齢層となると、0才〜大人ということになると思います。
古代から現代までの偉大な発明品と、発明した人にまつわるエピソードや、それらができた背景などを紹介する読み物図鑑。いまやあたりまえのように生活の中にあるものたちが、その最初のころはどうだったのか、またその後、発明によって世界がどのように変わっていったかまでを、わかりやすく解説しています。車や飛行機などの乗り物や、紙、印刷機、電話、テレビ、コンピューター、ロボット、冷蔵庫、予防接種、抗生物質など、子どもたちにもなじみのあるテーマがいっぱい。
車と星、ロケットとハンバーガーに共通していることはなんでしょう?それは、どれも同じ92の元素からできているということ。そして、それは人間も同じです。つまり、この宇宙全体に存在するものすべては、92の元素からできているのです!でも、どうやって?それは、この絵本を読めばわかります。この絵本では、元素それぞれの性質を説明しながら、それがどう結びついて、地球上、いや全宇宙のあらゆるものをつくっているかを説明しています。元素入門にふさわしい1冊です。この絵本を読んだあとでは、周期表がまったくちがって見えてくるはず!

それと同時に、今後は、お子さんの想像力を伸ばす、いろいろな興味関心を広げるといったジャンルにも、積極的に力を入れていきたいと思っております。「頭のいい子を育てる」というシリーズタイトルで刊行しているラインナップがあり、同シリーズの最初の1冊『おはなし366』は40万部を超えるロングセラーとなっております。1日1話365日+1日の国内外の名作を集めたおはなし本です。お出かけ用には「日本のおはなし」と「世界のおはなし」を90話づつ収録したハンディ版もご好評をいただいております。
───これまでに刊行された絵本でおすすめの絵本がありましたら、ご紹介いただけますか。
前述の「頭のいい子を育てる」シリーズに、先日(2015年11月)『しぜんとかがくのはっけん!366』という、タイトルが追加になりました。
この本では、自然科学に関する子どもの興味に毎日1つづつお答えしていく構成になっています。図鑑はまだ早い?という2〜3才のお子さんでも、誌面をながめて楽しんでいただけ、その後も小学校高学年まで知識を広げるのに活用していただけるような、長くご愛読いただける内容になっています。プレゼントにも最適で、自信をもっておすすめしたい1冊です。
●「ヘ〜!そうなんだ!」と、小さなころから自然科学への知的好奇心・理系アタマを育み、モノの考え方や見方をグンと広げます。●1冊で自然科学の全14ジャンル、「動物」「植物」「虫」「鳥」「魚」「水の生き物」「恐竜」「宇宙」「地球・天気」「体」「もの・しくみ」「食べ物」「実験・あそび」「科学の読み物」を網羅! 1年366日分の毎日の発見が、自然科学へのとびらになります!●美しい写真や楽しいイラスト満載、ひと目でパッと見てわかりやすい誌面。漢字はすべてふりがながふってあるので、ひとりで読んでも理解が深まります。●ひとつの発見から、たくさんの発見が生まれるように、プラスワン情報「もっとはっけん!」をコラム形式で紹介。親子の会話もはずみます。●1日ひとつの発見をしたら、1枚ずつ「はっけん!シール」を貼っていきましょう。1年間、四季を通して見てきた自然科学の知識の、大切な記録になります。
「かがく図鑑絵本」という呼び方をしているのですが、自然科学に関するテーマを14ジャンル網羅している点もポイントです。お子様の興味関心が「どこにあるのか?」まだ分からない段階から、図鑑選びのその前のステップから取り入れていただける本です。
広いジャンルの内容を季節ごとに、時期に合うように365日+1日の構成にしているので、興味のあるテーマだけを読むのではなく、新しい興味・関心への扉を開くことができる、ということもおすすめのポイントです。
すでに実際に読んでいただいたご家庭から「読み始めたら、子どもがこの本から離れなくなり、毎晩読んで、とせがまれます」「5才と小学4年生が2人でとりっこをしています」などといった感想をいただいています。
● 「honto for ニンテンドー3DS」で出会うおすすめの絵本とは?
───honto for ニンテンドー3DSの 電子書籍で、主婦の友社の絵本を楽しむことができるようになりました。今回、電子書籍化に選書された作品の方針などがございましたら教えていただけますか。
海外の翻訳絵本は、版権の関係などで残念ながら電子化が進めづらいのが現状です。国内の本については、作家のかたが電子化に理解があるケースでは、積極的に電子化を進めていきたいと考えています。現在、「はみがき」「トイレ」などがテーマになっている、お子さんのしつけに役立てていただけそうなものも、積極的に選んでおります。今、大人気ののぶみさんの作品『るんたのはみがき』もそのうちの1冊です。
───このシリーズ3冊は、honto for ニンテンドー3DSで読むことができます!
───電子書籍化された絵本の中で、とくにおすすめの絵本、読んでもらいたい絵本などありましたらご紹介ください。
『りんごりんごりんごりんごりんごりんご』は安西水丸さんの作品で、リズムのいい言葉と、ママもなごめるシンプルなイラストがご好評です。
「あるひ りんごが ころんと おちた」で 始まる、楽しい冒険のお話。 緑の大地を 真っ赤なりんごが 転がっていきます。 カエルに ぶつかり、 ぶらんこにゆられ、ぶらんこから 落っこち、地面にもぐり、 もぐらに出あって……。りんごの 冒険は ダイナミックに つづきます。 繰り返される「りんご りんご りんご」のリズムが なんとも軽快で、 読む大人も読んでもらう赤ちゃんも、きっとやみつきになることでしょう。 赤ちゃんの目に とてもわかりやすい はっきりとした色づかい。 りんごの なんともかわいい表情に、大人も釘付けです。 イラストレーター安西水丸さんの魅力があますところなく発揮された味わいのある絵本です。

───子どもたちに大変人気のある「ニンテンドー3DS」で絵本が読めることは、児童書や絵本に触れ合う機会が少ない子どもたちにもその機会を与えてくれると思うのですが・・・。
愛用されているお子さまにとっては、大人にとってのスマホのような存在だと思います。そんな身近なデバイスの中に、児童書や絵本が入っていけることをうれしく思います。紙に印刷された本の良さはもちろんあるのですが、また違った形で内容に触れていただけるきっかけになればと思います。
●続々刊行!気になる2016年の新刊は?
───これから登場するおすすめの新刊も教えていただけますか。
『だったぁ〜』でおなじみの著者のナムーラミチヨさんの『だったあ〜』の姉妹版とも呼べそうな赤ちゃん向けの新作を来年度刊行を予定しています。また、『頭のいい子を育てる』シリーズでは『お姫さまや魔女がいっぱいでてくるおはなし』が刊行予定です。女の子が大好きなお姫さまワールド全開の楽しい絵本にしたいと思っております。また、その他にも同シリーズで新刊を複数予定しています。
───最後になりますが、絵本ナビユーザーにメッセージをいただけますでしょうか。

子ども時代にお父さん、お母さんとたくさんの楽しい共有体験を持つことが、心の強い子に育てることにとても大切と言われていますが、絵本は「いつでも」「どこでも」「手軽に」「楽しく」共有体験が持てる、子育てに欠かせないオススメのツールだと思います。 1冊の本を繰り返し繰り返し読むもよし、たくさんの種類に触れるもよし、ぜひ、楽しい絵本ライフを送っていただければと思います。
そのために、弊社の本が役立てていただければ、とてもうれしく思います。
───貴重なお話と素敵なメッセージをありがとうございました!
取材・構成: 富田直美(絵本ナビ編集部)
※掲載されている情報は公開当時のものです。
※ニンテンドー3DSは任天堂の商標です。
※画面はハメ込みです。