絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  現代書家×人気イラストレーターのコラボ絵本 『おのまとぺの本』だんきょうこさん、ニシワキタダシさん、制作チームインタビュー

背表紙のない製本、「コデックス装」。

───『おのまとぺの本』は製本もこだわられていると伺いました。この製本様式はどのようなものでしょうか?

高田:正確には「コデックス装」という、糸で綴られている背の部分が見えるようになっている製本方法です。この本は当初、「日本の伝統文化に触れてほしい」というコンセプトがありました。それは、書の濃淡だったり、カスレ具合だったり、モノクロの世界で表現したものから感じてほしいという思いでした。それを最大限に表現できる製本を考えたときに、和綴じの本のような雰囲気がある「コデックス装」に至りました。

鈴木:この本の特徴は、背がないということです。そのため、ほかの本と違ってページが180度開く。普通の製本では、本の中心部分が見えにくいことがありますが、この製本だと、中心までしっかりと開いてページを楽しむことができるんです。

───たしかに、ページを開いたとき、中心まできれいに見えて読みやすかったです。


背表紙のない「コデックス装」という製本。


中心部分まできれいにページが開くのが特徴です。

だん:「コデックス装」のおはなしを伺ったときは、とても嬉しかったです。書を披露する「字本」ですから、ページのすみずみまで浸っていただけると思いました。

ニシワキ:ぼくも、最初に見本を見せていただいたとき、とてもきれいな製本だったので嬉しかったですね。美しいデザインと昔ながらの綴じ方というコンセプトの統一感に感動しました。

───装丁だけではなく、紙にもこだわりを感じました

鈴木:だんさんの書の濃淡や擦れ、それと、ニシワキさんの鉛筆のテクスチャーがとても素敵なので、二人の作品の良さができるだけ表現されるような紙をセレクトしました。

市川:おそらく、この紙に普通のカラーインクを乗せたら、インクが紙にしみこみすぎてしまって、きれいな色が出ないと思います。でも、モノクロ印刷では、筆のにじみ具合がうまく表現できるんです。裏に文字が透けているのも、意図的なものです。

高田:それと特にこだわったのが表紙です。パッと見るとわからないかもしれませんが、触ってみると凹凸があるのがわかると思います。これは「活版印刷」を使っています。

───モノクロに活版! とても豪華ですね。

高田:コデックス装、そして活版……これらの工程は、通常の印刷・製本よりも手間がかかるのです。したがって、印刷から本ができるまでの日数も、通常1週間あまりでできるところ、3週間ぐらいかかります。

───本当に、隅々までこだわりをもって作っているのですね。最後にみなさんから、絵本ナビユーザーへメッセージをいただけますか?

高田:この『おのまとぺの本』は、「2歳からの日本語エンターテインメント」と銘打っています。子どもたちが言葉に興味を持ちはじめたら、まず読んでほしい本です。日本語は特にオノマトペが豊かな言語ですから、小さいうちからオノマトペに接して、言語力、表現力が豊かになってほしいですね。

久下:この本のおわりに「言葉が、お子さまの友だちとなりますように」と書いてあるのですが、それがぼくのメッセージです。子どもたちが、言葉と友だちになって、言葉や文字が好きな子がひとりでも多く育ってくれると嬉しいです。本を読んで、想像力を膨らませる喜びが、小さい子どもたちにも伝わってほしいと思います。

市川:文字が読めるお子さんには、オノマトペを読んで楽しんでもらうのが一番ですが、まだ文字が読めないお子さんでも、お母さんが読んでくれるオノマトペの音を感じたり、いろいろなキャラクターのイラストを見たりして、楽しんでもらえると思います。特に、ニシワキさんのイラストとセリフのシュールさは大人の方もきっとハマっていただけると思うので、子どもだけでなく、大人の方にも読んでいただけたら嬉しいです。

ニシワキ:「字本」なので、だんさんの書の濃淡や、動きを味わいつつ、絵も見ていただいて。小さい子は絵と書を目で見て楽しんでもらって、もう少し大きくなったらセリフのところも楽しんでもらえたらと思います。

だん:「2歳から」と書いてありますが、我が家の8か月の孫も、最初のページで「ニッ」と笑ってくれました(笑)。お子さんだけでなく、子どもと一緒にこの本を読む大人の方にも、クスっと笑っていただいて、書と絵の面白さを感じていただける「字本」になっていると思います。子育てにちょっと疲れたときや、お仕事などで感じているストレスなどを、この『おのまとぺの本』で、少しでも和らげていただけると嬉しいです。ぜひ、多くの方に手に取っていただきたい作品です。

───ありがとうございました。

イベント情報

●『おのまとぺの本』パネル展●

【場所】
恵文社一乗寺店
〒606-8184
京都府京都市左京区一乗寺払殿町10
電話:075-711-5919
営業時間:10時00分〜21時00分

【日程】
6/20〜7/4

●ニシワキタダシさん個展 「しばらくかまない」開催情報●

【日程】
手紙舎 2nd STORY 7/12(火)〜7/24(日)
メリーゴーランド京都 7/30(土)〜8/10(水)
メリーゴーランド四日市 8/17(水)〜8/31(水)

3カ所を巡回します。期間中にはイベントも。詳細はそれぞれのお店のHPやニシワキタダシ(@_nishiwaki_t)のTwitter、インスタグラムにて。

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取材協力

本とコーヒー tegamisha

【住所】
東京都調布市菊野台1-17-5 1階
tel 042-440-3477
http://tegamisha.com/

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インタビュー・文: 木村春子
撮影:所靖子

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だんきょうこ

  • 書家。武蔵野美術短期大学デザイン科卒。1997年から、商業空間の中での『書』を多数手掛ける。作品に、『いいちこ』の三和酒類商品のロゴ、NHK大河ドラマ『功名が辻』の題字がある。 ’01年から書展を定期的に開催し、 2014年5月発行の書籍『文字のつくりかた “伝わる”文字はどうやって生まれるの?』(美術出版社)では、「文字のつくりかた 筆文字篇」の監修をしている。  http://hana324.jimdo.com/

ニシワキタダシ

  • イラストレーター。1976年生まれ。大阪在住。イラストレーションの仕事を中心に幅広く活動中。著書に『かんさい絵ことば辞典』、『ニシワキタダシの日々かるたブック』、『あたらしいことわざ絵辞典』、『こんなときのどうする絵辞典』(以上、パイ インターナショナル刊)、『えBOOK』(大福書林 刊)、DVDに「みるきくはなす かんさい絵ことば辞典」(ポニーキャニオン)などがある。

作品紹介

おのまとぺの本
おのまとぺの本の試し読みができます!
書:だんきょうこ
イラスト:ニシワキタダシ
出版社:高陵社書店
全ページためしよみ
年齢別絵本セット