●面白い活動をしている日本人のことや自然のことを、絵本にして伝えていきたいと思っています。
───お話を伺えば伺うほど、さとうさんもみそのさんも、とても面白い経歴をお持ちの方だと思いました。
みその:そうですか? ぼくの周りにいる人たちの方が、とても個性的なので、自分ではあまり気にしたことはありませんね。
───どんな方がいらっしゃるのでしょう。
みその:例えば、ぼくは30年以上有機農業をやっているのですが、そこに集まる仲間たちとお米を作って、酒蔵にその米を持ち込んで、日本酒を作っている人がいます。それと、日本の和紙に魅了されて、原料となる「楮(こうぞ)」から作っている和紙作家のアメリカ人の方とか。ぼくが自費出版で出した絵本『かみさまからのおくりもの ひまわりの油』に登場する「いなばさん」こと稲葉光圀さんは「アジア環境創造型稲作技術会議」を開催し、今はブータンでの有機農業を広める活動をしています。
みそのさんと、さとうさんが最初に作った絵本。
───すごい活動をされている方ばかりですね……。
さとう:そういうみそのさんも、ニホンミツバチの保護活動を長く行っていて、浅草の浅草寺や東京拘置所とか、すごい場所にニホンミツバチの群れを保護しているんですよ。
───東京にもニホンミツバチの巣があるんですか?
みその:あるんですよ。浅草寺には以前から6〜7の群れがいます。巣別れの時期はとても迫力がありますよ、一度にミツバチたちがブワーと移動するんですから。
───想像もつきません……。
みその:ぼくなんか、いつも我流でやっているので、世の中が言う「当たり前」がよくわからないんですよ。農業も最初に有機農業からはじめたのでそれが当たり前だったし……。ただ、周りにいる人たちが面白い人たちだということは分かるので、これからは彼らのことや、彼らの行っている活動を絵本にして、子どもたちに伝えていきたいと思っているんです。
───なるほど。すごく面白そうですね。
みその:おはなしの種はいくらでもあるので、これからさとうさんと組んで、たくさん絵本を出していきたいですね。
さとう:みそのさんの作品はどれも、私たちの身の回りの環境や自然について、一度足を止めて、考えるきっかけになると思います。テーマによっては重くなるものもあると思いますが、そこはみそのさんのストーリー作りで『大きなクスノキ』のように、小さい子でも楽しめる作品になると思います。
みその:「環境についてもっと考えよう!」と声高に言うよりも、さらっと伝えて、環境についてちょっとでも詳しくなれるような絵本をずっと作りたかったんです。『大きなクスノキ』を読んだお母さんや子どもたちが、「ウタちゃん、クスノキを守れてよかったね」と優しい気持ちになってくれると嬉しいですね。
───みそのさんの思い、さとうさんの思いを伺えて、『大きなクスノキ』がもっともっと魅力的に感じました。最後に絵本ナビユーザーへのメッセージをお願いします。
みその:『大きなクスノキ』は、実際に小学校に植えられていて、校歌にも歌われていた一本のクスノキを守るために奮闘する少女のおはなしです。クスノキ1本を切ることは、そこに暮らす多くの生き物を殺してしまうことだと、絵本を読んで気づいていただきたいと思って作りました。もちろん、木を切ること自体を反対しているのではなく、切らなくてもいい場所に生えている木を、むやみに切ってしまう人たちがいることに対して、少しでも考えてほしいという思いを込めました。でも、この絵本を読んでくれる子どもたちには、ウタちゃんのがんばりや、セミやチョウ、ハト、そしてクスノキなど、いろいろな生き物が登場する絵本そのものを楽しんでもらいたいと思います。
さとう:家族で読んでいただけたら嬉しいです。そして、絵本の中に描いてあることについて、ちょっと話をしたり、近所にある大きな木を探して見に行ったり……。絵本を読むだけではない広がりを持っていただけたらより、楽しめると思います。
───ありがとうございました。
さとうさんのアトリエを見せていただきました。
この机で『大きなクスノキ』は生まれました。
机の上には、クレヨンや絵の具などが所狭しと並んでいます。
まるで次の出番を待っているよう……。
