絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  『コウノトリのコウちゃん』かこさとしさんインタビュー&福井県越前市「コウノトリが舞う里づくり」レポート

越前市の「コウノトリと共生する町づくり」を、かこさんに応援していただいていると感じます。

福井県越前市では、2012年より生き物と共生する市を目指して、「コウノトリが舞う里づくり」戦略が展開されています。
奈良俊幸市長に、このたび『コウノトリのコウちゃん』が出版されることへの思いを伺いました。

───かこさとしさんが、越前市に縁のあるコウノトリから発想を得て、『コウノトリのコウちゃん』を描き上げたという話は、いつ、奈良市長の耳に届いたのですか?

2016年3月にかこ先生の卒寿のお祝いが開かれたのですが、その席で「コウノトリの絵本を作ろうと思っています」というお話を伺いました。それを聞いて、お生まれになった故郷をとても大事にされて、越前市を応援していただいているお気持ちが強く伝わって、大変嬉しく思いました。


越前市の奈良俊幸市長

───越前市では、2012年から「コウノトリが舞う里づくり」の活動が行われていると思いますが、小さいお子さんが楽しみながら、コウノトリのことを知ることのできる絵本は、とても貴重だと思います。

はい。子どもたちに、自分たちが暮らす越前市が行っている取り組みや、その背景にあるコウノトリとの関係、歴史などを感じてもらえるのは、とても嬉しいことです。また、全国の方々に、コウノトリと共生する町づくりを目指しているところがあるということを知っていただけるのも、とてもありがたいことだと思います。

───かこさんも、「コウノトリが住めるようなよい場所にしようと、兵庫県豊岡市、福井県越前市の白山・坂口地区などでは、熱心な努力がおこなわれています。」とあとがきに書いていらっしゃいますね。絵本が出版されたら、コウちゃんの暮らす場所を見ようと、多くの方が越前市に訪れるのではないでしょうか?

そうですね。2014年にオープンした、越前市にある「かこさとしふるさと絵本館 石石(らく)」にも、かこさとしさんを慕う大勢のファンの方が、足を運んでくださっています。これは市としても大変、嬉しいことです。
さらに2017年8月には、かこさとしさんに監修していただき、かこさんの絵本のモチーフが随所にちりばめられたセントラルパーク「武生中央公園」が誕生する予定です。


かこさとしふるさと絵本館 石石(らく)

───絵本のモチーフが使われた公園ができるのですか?

例えば、公園に設置する直径20mの平面噴水は、中央部に太陽、その周辺に惑星をイメージしたオブジェを配置します。これはかこさんの絵本『宇宙』(福音館書店)をイメージしています。子どもたちは、噴水で遊びながら、太陽系の惑星の大きさや距離を体感することができます。
また、公園内を流れる人口河川「せせらぎ広場」は、『かわ』(福音館書店)をモチーフとして、上流から下流にかけて川の特性を再現しています。
このほかにも、『からすのパンやさん』(偕成社)をイメージした大型複合遊具や、『だるまちゃんとかみなりちゃん』(福音館書店)をモチーフにしたトランポリン系遊具など、子どもたちが全身を使って遊びながら、絵本の世界、そして自然を体感できるアトラクションを多数設置する予定です。
もちろん、『コウノトリのコウちゃん』をモデルにしたシンボルも設置予定なので、ぜひ、公園に遊びに来ていただければと思います。


越前市広報より


越前市広報より

───とてもワクワクするテーマパークですね。

かこさんは、設計段階から、とても熱心に関わってくださっています。常に考えていらっしゃるのは子どもたちのこと。特に、ご自身が幼少期、軍国少年だったことを非常に悔いていらして、子どもたちには、自然の中で遊びながら、いろいろ発見し、正しい知識を身に着けてほしいと思っていらっしゃると、お話を伺うたびに感じています。
武生中央公園には市立図書館もあります。中央公園で自然に触れ、知らない植物や昆虫を見つけた子どもたちが、図書館で詳しく調べるために足を運ぶ……という流れができると良いと考えています。

───遊びの中から学び、体験するという理想的な学習の形ですね。
市長が特にオススメしたい武生中央公園のポイントを教えていただけますか?

個人的に楽しみなのは、中央公園内にある文化センターの壁面にペイントする予定の壁画です。この絵は2016年3月、かこ先生の卒寿祝いパーティーの折に、先生からサプライズで寄贈いただいたものです。

───だるまちゃんや、かみなりちゃんなどおなじみの登場人物たちが、たくさん描かれていますね。

この壁画には秘密があって、中央公園からは、ちょうど登場人物たちが向かっている先に、武生のシンボルと言われる「村国山」と越前富士と呼ばれている「日野山」が見えるのです。まるで、これから山登りを始めるような、絵と自然が一体となった世界がここに広がります。かこ先生はこのロケーションを見越して、この絵を寄贈してくださったんです。本当に頭の下がる思いがしました。

───今から8月が待ち遠しいですね。

はい。武生中央公園で思いっきり遊んでいただき、そのあと、「かこさとしふるさと絵本館 石石(らく)」に足を運んでいただき、そして、白山地区で飼育しているコウノトリを見てもらう……。すると、かこさとしさんの絵本の世界をより一層楽しんでいただけると思います。

───武生中央公園の完成が、今からとても楽しみです。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

それでは、次のページで、越前市白山地区で飼育されているコウノトリのレポートをお送りします。>>

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かこさとし(加古里子)

  • 1926(大正15)年福井県武生町(現・越前市)生まれ。1948年東京大学工学部卒業。工学博士。技術士。
    民間化学会社研究所に勤務しながら、セツルメント活動、児童文化活動に従事。1959年から出版活動にかかわり、1973年に勤務先を退社後、作家活動とともに、テレビニュースキャスター、東京大学、横浜国立大学などで児童文化、行動論の講師をつとめた。
    また、パキスタン、ラオス、ベトナム、オマーン、中国などで識字活動、障がい児教育、科学教育の実践指導などを行い、アメリカ、カナダ、台湾の現地補習校、幼稚園、日本人会で幼児教育、児童指導について講演実践を行った。
    『だるまちゃんとてんぐちゃん』『かわ』(福音館書店)、『からすのパンやさん』(偕成社)、『富士山大ばくはつ』(小峰書店)など、500冊以上の児童書の他、『伝承遊び考』(全4巻・小峰書店)など著書多数。
    土木学会著作賞、日本科学読物賞、児童福祉文化特別賞、菊池寛賞、日本化学会特別功労賞、神奈川文化賞、川崎市文化賞、日本児童文学学会特別賞、日本保育学会文献賞、越前市文化功労賞、東燃ゼネラル児童文化賞などを受賞。
    現在、科学、文化、教育に関する総合研究所を主宰。

作品紹介

コウノトリのコウちゃん
コウノトリのコウちゃんの試し読みができます!
作:かこ さとし
出版社:小峰書店
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