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「ボールペンを使って、原画を描きました」

───プロフィールに描かれていましたが、まつざわさんはボールペンを使って絵を描かれているんですよね。絵本からはボールペンで描かれているとはとても思えないのですが、どうやって描いているんですか?

それは実際に見ていただいた方が分かりやすいかと思います。

アトリエの机の上には、ボールペン、水入れ、めん棒が。

 

 

 




 

 

 


最初に色がほとんどつかないくらいの、水のような薄墨を紙になじませ、乾いたらその上からボールペンで薄く色をつけていきます。









色をつけた部分をさらに上からめん棒でこすってにじませます。
この作業の繰り返しでグラデーションを作っていきます。

───こんなに細かい作業をされていたなんて…!!見ていると息をするのも忘れてしまいました。

色はパソコンでつけているのですが、私、あとさき塾に通っていた頃、「ボールペンだけで絵を描いて、色は絶対つけない!」とかたくなに考えていたんです。バクさんを絵本にしようと思ったのも、ボールペンなら夜の景色が出せると思っていて。ただ、出版するにあたって、絵本塾出版さんから「色をつけてみませんか?」と提案していただいて、パソコンで色を乗せてみたら、ボールペンで描いた濃淡がとてもきれいに表れたんです。それですごく嬉しくなっちゃって(笑)。色をつける作業は楽しみながら描けました。

───絵本を作ることで、まつざわさんの絵が新しい境地を開いたんですね。そもそもボールペンだけで絵を描くのはとても珍しいことだと思うのですが、ボールペンを使うきっかけは何だったのでしょうか?

最初はごくごく一般的に、高校生の頃、時間のあるときにノートに絵を描き始めたことでした。そのときの絵も残っています。


───すごい!! グッズになりそうなくらいクオリティが高いですね!

描き始めた頃は線画がメインだったんですけど、だんだん、凝ってきて濃淡をつけて立体的に描くようになりました。西荻窪に「ニヒル牛」というアーティストが作品を展示販売できるお店があるんですけど、そこにポストカードを持っていって、販売していたこともあります。

───高校生の頃から!? もうすでにまつざわさんの特徴が出ていますね。絵本作家になりたいと具体的に思ったのは、月刊『MOE』の特集がきっかけと伺いましたが、小さい頃に絵本を読んだ思い出や、好きな絵本作家さんがいたなどの記憶はありますか?

グリム童話や昔話が沢山載っている分厚い本を何度も読んでもらった記憶がありますね。小さいころで記憶に残っている絵本は、『うさぎのくれたバレエシューズ』(作:安房 直子  絵:南塚 直子  出版社:小峰書店)の絵がとても綺麗だったことと、『こぶたがずんずん』(作:渡辺 一枝  絵:長 新太  出版社:あすなろ書房)を見たときにすごくインパクトが強かったことです。絵本作家さんを意識して絵本を読むようになったのは大人になってからで、長新太さんや井上洋介さん、片山健さんの絵本に強く惹かれました。子ども心に引き戻されるような感覚に、「絵本ってなんて面白いんだろう!」と思ったんです。

───『だれもしらない バクさんのよる』で絵本作家の仲間入りをされましたが、1冊完成させた今、絵本の魅力や面白さをどんなところに感じますか?

ラフのときから発売まで、いろんな発見や感動がありましたが、特に感動したのは、絵本を発売した後、「トムズボックス」のギャラリーで原画展をさせてもらったんです。そのときに制作中には感じることのできなかった読者の方の声を直接聞くことができて、とても大きな力になりました。バクさんが私の手をひいて、いろんなところを結びつけてくれているように感じて、4年間この作品に取り組むことができて、本当に良かったなぁと改めて実感しました。

───今回のインタビューを読んで、絵本ナビのユーザーの方からも沢山レビューが集まると思います。

本当ですか!こわい夢を見てこわがっていた子がこの絵本を読んで安心して眠れるようになってくれたらとても嬉しいですね。

───バクさんの続きのおはなしなどは考えているんですか?

今、ちょうど続編を考えているところなんです。
まだラフのやり取りをしている段階ですが、バクさんの新しい活躍を皆さんに見ていただけるように頑張ります!

───バクさんの続編、すごく楽しみです。最後に、絵本ナビのユーザーさんに『だれもしらない バクさんのよる』のみどころ、メッセージをお願いします。

やっぱり、バクさんが大活躍するところが一番のみどころなんですが、バクさんが訪れる動物達の家の中の小物など、細かいところを子どもたちと一緒に探してもらったり、少し違う楽しみ方も試してほしいなと思います。それと、絵本を閉じた後の、うしろのところまで見てほしいです。バクさんが満足して朝日の中眠っている場面なんですが、きっといい夢を見ているんだろうな…と感じてもらえるように描きました。『だれもしらない バクさんのよる』は寝る前に読んでいただくのがオススメです(笑)。絵本がスキンシップのツールになったり、想像力を育んでもらえたら嬉しいです。

───ありがとうございました!

まつざわさんのアトリエとなっているお部屋にもお邪魔させていただきました。

画材はごく普通のボールペンだけ!とても整然としているアトリエなのです。
ここからあの綿密な絵が生まれてくるのかと思うと、改めて驚いてしまいます。

本棚にはまつざわさんの好きな作家さんの絵本や小物が飾られています。あ、バクさんもいる!




おまけ

2009年、トムズボックスから200部限定で出版された、記念すべき初作品だそうです。
とてもリアルなタッチで描かれた動物達はどこかユーモラスで、「あいうえお」のリズムに乗ってとても生き生きと活動しています。

原画は墨一色なんです。近くで見れば見るほど、思わずため息が出てしまうほど繊細で、雰囲気があります。とてもボールペンだけで描かれているとは思えませんよね。




ここに一色ずつ丁寧にパソコンで色をつけていくと...

繊細なグラデーションそのままに、美しい色が付いて完成するのです!

どちらも魅力的ですよね。

(編集協力:木村 春子)

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まつざわ ありさ(まつざわありさ)

  • 埼玉県生まれ。
    絵本ワークショッップ「あとさき塾」出身。
    幼いころから絵を描くのが好きで、高校時代からボールペン画を描き始める。
    現在は埼玉県在住、歯科助手をしながら絵本を制作中。

作品紹介

だれもしらない バクさんのよる
だれもしらない バクさんのよるの試し読みができます!
作・絵:まつざわ ありさ
出版社:絵本塾出版
全ページためしよみ
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