大切な人へのプレゼントにピッタリな絵本が2冊出版されました。
1冊は、男性から女性への思いを綴った『そのままの キミがすき』。もう1冊は、女性から男性への気持ちを伝える『あなたなんて だいきらい』(共にあすなろ書房)。
本作の文を担当した、絵本作家のきむらゆういちさんにお話を伺いに、きむらさんのご自宅兼仕事場にお邪魔しました。「実は『そのままの キミがすき』は30分で書き上げたんだけど、『あなたなんて だいきらい』は書くのに3ヶ月かかったんだよ……」と話すきむらさんに、大人の絵本2冊が生まれた経緯を伺いました。
- そのままのキミがすき
- 作:きむら ゆういち
絵:高橋 和枝 - 出版社:あすなろ書房
たとえばキミが、穴のあいた靴下をはいてても、漢字が書けなくても、世界中がキミをブスと呼んでも、80歳をすぎても、そのままのキミでいいんだよ。きむらゆういち&高橋和枝の大人の絵本。
- あなたなんてだいきらい
- 作:きむら ゆういち
絵:高橋 和枝 - 出版社:あすなろ書房
あなたの寝顔、まじめな顔、だいきらい。困った顔、恥ずかしそうに笑った顔、これもキライ。でも何より一番キライなのは、私のそばにいないあなた。だから・・・・・。
●男性へのメッセージを書くのに、とても時間がかかりました。
───まず、2冊並んだ表紙を見てデザインのオシャレさに心を奪われてしまいました。『そのままの キミがすき』『あなたなんて だいきらい』は共に2017年2月に発売されましたが、実は『そのままの キミがすき』は一度、別の方の絵で出版されていたことがあるんですよね。
そうです。2003年に一度、出版されていました。ぼくはよく講演会のラストに『そのままの キミがすき』を読み聞かせしていたから、そのときの絵本をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません……。
───講演会で読まれるということは、とても反響が大きい作品だったのですね。
「これで泣きました」という方が多くて、講演会で販売すると必ず完売していた作品なんです。ただ、残念なことに、その出版社の在庫がなくなってしまい、重版されるという話も聞きませんでした。それで、講演会でも読まなくなってしまったのですが、講演会に行くたびに「『そのままの キミがすき』はないのですか?」と聞かれることが多くて……。
そんなとき、知り合いからネットのオークションで『そのままの キミがすき』が非常に高値で取引されていることを教えてもらったんです。それでビックリしてしまって、あわてて、あすなろ書房の山浦さんに、そのサイトをコピーして、再販してもらえないか持ち込みに行ったんです。
───どうしてあすなろ書房さんに持ち込もうと思われたのですか?
この作品が大人をターゲットにしていたので、子どもの本をメインにしている出版社より、大人の絵本も出しているようなところが合っていると思いました。それで何社か持ち込み先を考えていたのですが、たまたま、山浦さんとお会いする機会があって、打ち合わせをする約束をしたことがきっかけです。
───山浦さんの反応はいかがでしたか?
とても面白いと興味を示していただき、すぐにでも出版しようという運びになりました。ただ、同時に、『そのままの キミがすき』だけではなく、もう1冊出版する話が出てきたんです。
───それは、出版社さんからの提案だったのですか?
実はかねてから、ぼく自身、もう一冊姉妹編を出すことを考えていました。……というのも、『そのままの キミがすき』は男性から女性へのメッセージ本なので、女性が自分用に購入していくことが多かったんです。
でも、女性が男性にプレゼントしたいと思う本があれば、もっと手に取ってもらえるだろうと思っていました。それを山浦さんに話したら、とても乗り気になってくれて、2冊同時に出版しようという話が固まりました。
───では『あなたなんて だいきらい』は新たに描き下ろした作品なんですね。
そうですね。そして、この2冊目を作るのが非常に大変だったんです……。
───そうなんですか?
『そのままの キミがすき』は、ある編集者さんと打ち合わせをしていたときに、「女性はどんな高価なものをプレゼントされるよりも、“そのままの君が好き”と言われるのが、結局一番嬉しいんですよ」ということを雑談していて、聞いたときに、「それは、絵本になるな」と思ったんです。そして、打ち合わせから帰る電車の中で、30分くらいの時間で書き上げてしまった話なんです。
───絵本の原稿を30分で書き上げてしまうなんて、すごいですね!
『そのままの キミがすき』は女性に向けたメッセージだから、男の自分が書くのはそれほど難しくなかったんだと思うんです。けれど、『あなたなんて だいきらい』は男性に向けた言葉なので、考えるのがとても難しくて、結局3ヶ月くらいかかってしまったんです。
───木村さんは男性なので、男性が言われて嬉しい言葉の方が思い浮かぶようなイメージがあります。
それらしいのはいっぱい書けるんです。でも、男性へのメッセージって、伝え方を間違えると、誉め言葉だけを並べているような、わざとらしい感じが出てしまって……。
───なるほど、女性は帯の文章のように、「世界中がキミをブスと呼んでも、ぼくとっては、世界一!」と言われると嬉しいけれど、男性は同じように言われても、嬉しいとは限らないということですね。
そうなんです。男性はどんなに社会に出てバカにされても、自宅ではお城を作りたいし、そこを家族に否定されるとすぐに落ち込んでしまうものなので。
───結構、ナイーブなんですね(笑)。
ナイーブですよ。だから、どう言えば、男性も嬉しく思うかな……と考えたとき、もしかして、「大嫌い」って「大好き」と同じニュアンスなんじゃないかと気づいたんです。
───「大嫌い」と「大好き」が同じ、ですか?
『あなたなんて だいきらい』では、「よこがお ねがお まじめなかお みんなみんな だいきらい。」と言っているでしょう。これはつまり、言葉を変えて「そのままのキミがすき」って伝えているのと同じですよね。
「みんな みんな だいきらい。」(『あなたなんて だいきらい』)
───たしかにそうですね。だから「大嫌い」と「大好き」はイコールなんですね。
それと以前、ぼくの姉が言っていたことがあるんです。「人間がマンションだとすると、男性は恋をすると、“彼女の部屋”ができるの。でもそれ以外にも“仕事の部屋”や“趣味の部屋”は別にあるの。でも、女性は“仕事”や“趣味”すべての部屋に男性がいる」と。
それを聞いて、女性は仕事をしていても、買い物をしていても、友だちとおしゃべりしていても、男性のことを考えることができるけれど、男性は、趣味や仕事のとき、あまり女性のことを思い出すことはないということだろうなと思いました。それくらい男女では頭の構造が違うようなんですよ。
それはつまり、身体の構造も同じでメスは相手の遺伝子を受け入れたら子育ても含めて5年くらい(人類400万年のほとんどは育児は4年で終わったので)同じ相手の遺伝子に拘束されますが、オスは次の瞬間から自由だったのですよね。
───だから、『あなたなんて だいきらい』では「わすれようとしても いつも心から 離れてくれない あなたは もっと きらい!」と言っているんですね。
そうそう。でも、男性も全く彼女のことを考えていないわけじゃなくて、違う部屋にきちんと彼女専用の部屋があるんだよ……と。そういう微妙な違いが、男女にはあるなと常々思っていたので、2冊書きたいと思ったんです。
「わすれようとしても いつも心から 離れてくれない」(『あなたなんて だいきらい』)
───つまり、『あなたなんか だいきらい』と『そのままの キミがすき』はどちらも「大好き」ということを、違う切り口で伝えているんですね。