●目標は、文章も絵も描ける絵本作家になること。
───きむらさんは「あかちゃんのあそびえほん」シリーズなど、ご自分で絵を描かれる作品と、「あらしのよるに」シリーズなど、ほかの画家さんと組んで作品を作られることがありますが、今回の2作は、ご自分で描こうとは思わなかったのですか?
なぜか全然、思わなかったですよね。やっぱり、こういう女の子が喜びそうな、センスと雰囲気のある絵は、自分で描くのはなかなか難しいという意識があったのかもしれませんね。だって、ぼくの目標は田島征三と宮西達也ですから。
───そうなんですか? なんだかちょっと意外に思いました。田島征三さんと宮西達也さんの、どんなところを目標とされているんですか?
絵も描いて、イメージと絵が合ってるところですね。二人とも、泣かせる話も、笑える話も描ける。それが作品ととても合っている。これって、簡単にできることじゃないんです。
───なるほど。
でも、ぼくも20代から子どもの本の仕事を続けてきているので、やっぱり、この路線は目指したいんです。
───最近も文章と絵の両方を担当された作品が出版されましたよね。
『されどオオカミ』(あるまじろ書房)ですね。あれはなかなか重厚なテーマでした。頑張ったけれど、ぼくからすると、一生懸命重たい刀を振り回して殺陣をやった感じ。まだ自由に獲物を扱うことができていないんです。ただ、イメージしていたことはできた感触はあるので、これから、もっともっと吹っ切っていって、少しずつ、目標としている2人に近づいていきたいと思います。
───これからの進化をますます期待しています。
最後に絵本ナビユーザーに向けて、『そのままの キミがすき』と『あなたなんて だいきらい』のメッセージをいただけますか。
以前、中高年夫婦の熟年離婚を取り上げた番組を見ていたとき、街頭インタビューで、「最近、奥さん(旦那さん)との関係はどうですか?」と男女それぞれに質問をしていたんです。すると、男性の多くは「最近、いちいち言葉を交わさなくても、妻に意思が通じるようになってきた」と答えたんです。しかし、奥さんは「最近、全く会話がない」と回答しているんです。旦那さんと奥さん、同じ環境にいるのに、とらえ方はこんなに違うんです。
───正反対ですね。
そう。それがインタビューに答えていた、ほとんどの夫婦に該当していたの。何が言いたいかというと、それくらい男と女って違う生き物なんですよ。
───たしかに……。
女性は男性が記念日を忘れていると、「もう私を愛してないのね」って思いますよね。でも、男性からすると、たまたま忘れてしまっただけで、愛情は薄れていないことが多い。だから、「普通ならこうするだろう」と自分で思っていることを、無意識に相手に要求してしまう。それが間違いなんじゃないかと思うんです。お互いが自分の物差しだけで相手を図ってしまうと、そこで破綻してしまいますよね。
───誰もが陥りそうなことですね。
もし、そんな危機を感じたときは、この絵本をそっと相手に手渡してください。もちろん、大切な人ができたとき、ちょっとしたケンカのとき、何かのイベントのときに相手に贈るのもオススメです。
───こんなにかわいいデザインの本をプレゼントされたら、性別問わず、嬉しいですよね。
やっぱり、長く一緒にいると、お互いが一緒にいることに慣れてしまって、なかなか刺激を生み出すことは難しくなりますよね。「何かしなければ!」という気持ちはあっても、行動や言葉で示すことがとてもやりにくくなる。そういうときに、「こんな絵本を見つけたよ」って言って、プレゼントする。そういうのって、すごくオシャレじゃないかなぁ……。
絵本ナビインスタグラムより。
───オシャレですね。ちょっとケンカした後、なかなか謝れないときに、そっと相手に見えるところにこの本を置いておくのも良いですよね。
そう。あとは本棚の片隅に置いておいて、何かあるときにそっと使ってもらえるような、そんな風に何度も開いてもらえると嬉しいですね。
───老若男女問わず、大切な人ができたとき、大切な人といるとき、そしてその人とちょっと関係が慣れてきたとき、いろいろな側面で活躍してくれる作品ですね。
今日は本当にありがとうございました。
愛猫のんぴと絵本ときむらゆういちさんの、スリーショット。
おまけ ☆ きむらゆういちさんのアトリエ探訪
文章も絵も、こちらのスペースで制作されるのだそう。
壁にはいろいろな絵本作家さんのイラストが飾られていました。
きむらさんの絵も飾ってあります!

文・編集/木村春子
写真/所靖子