●せなけいこさんの絵本を親子で楽しんでいました。
───minchiさんはイラストレーターとして、ミュージシャンのアルバムジャケットのイラストを手がけたり、3Dショートフィルムの原作とアートディレクションを担当されるなど、幅広いジャンルで活躍されています。元々、絵本には興味があったのでしょうか?
絵を描くのは子どもの頃から好きだったので、学生時代はマンガ家に憧れていました。投稿などもしたことがあったのですが、マンガは絵だけでなく、ストーリーも考えなければいけないというのが難しくて、あきらめたんです。そこでイラストレーターとして1枚のイラストの中に世界観を込めるような作風を作っていったのですが、やはりどこかでおはなしを作ってみたいという思いはあったのだと思います。
───ご自身が小さいころに好きだった絵本を覚えていますか?
小学校の図書室に置いてあった絵本をずっと読んでいた記憶はありますね。特にかこさとしさんの「あそびずかん」シリーズ(小峰書店)の、細かく描きこまれた絵がかわいくて大好きでした。今、義理の母が出版関係に近い仕事をしていたこともあり、娘はたくさん絵本と接しています。中でも、特に好きなのは、せなけいこさんの『おばけの てんぷら』(ポプラ社)と『ちいさな たまねぎさん』(金の星社)。私自身も娘と一緒にせなさんの作品を読む中で、大好きな作品になりました。
───親子3代にわたり愛されている作品なんですね。お子さんは最近どんな作品が好きですか?
この間、映画で「ハリー・ポッター」シリーズを観たらはまってしまい、今、少しずつですが原作を読み始めています。といっても、まだ読めない漢字も多いので、少しずつ私が読み聞かせをしています。
───長い作品もしっかりと耳で聞いて楽しんでいるんですね。
そうですね。大きくなるにしたがって、子どもは絵本から離れていきますが、私は改めて絵本の魅力にはまっています(笑)。石黒亜矢子さんの『えとえとがっせん』(WAVE出版)や、どいかやさんの『ひまなこなべ』(文:萱野茂 出版社:あすなろ書房)などを買ってきて、楽しんでいます。
───どちらも今、注目の作品ですね。ご自身が絵を描くときは、どんな画材を使っているのですか?
アクリルガッシュをメインで使って、ところどころポイントに色鉛筆を使います。絵本でも普段の作品でも、使う画材は基本変えていません。
───『いっさいはん』の作風は、普段描かれているイラストと雰囲気がかなり異なると思いました。このタッチで描くために、いろいろ試行錯誤を繰り返されたのでしょうか?
最初に描いていたものは、今よりも少し等身が高くて、1歳半よりもうちょっと年上に見える体形だったのです。そこを編集者さんに指摘していただいて、お尻のラインや、体のバランスなどを調整しました。色も何枚か試作で描いてから本描きに入りました。
───かなり細かい部分まで描き込まれていますが、特に苦労したところはどこですか?
細かい所は特に大変ではなかったのですが、普段、自然物ばかりを描いているからか、人工物を描くことがあまり得意ではなく……。自転車や部屋の中の家具などを書くのに苦労した覚えがあります。
─── 絵本を見ても全くそんな感じがしなかったので、すごく意外です。絵本の中にふしぎなキャラクターが登場しますが、これはminchiさんのオリジナルキャラクターなんですよね。
はい。絵本の中にちょこちょこ登場するのは「虫歯ちゃん」というキャラクターです。これは私が、虫歯のフォルムがかわいいと思い作りました。仲間に「乳歯ちゃん」もいます。
ぬいぐるみが「虫歯ちゃん」です。
───オリジナルグッズも制作されているんですよね。絵本の中でもかなりインパクトがありましたが、実物を見ると、かわいさとふしぎさが混在していて、面白いです。
まだ先になると思いますが、虫歯ちゃんと乳歯ちゃんのおはなしもいずれ絵本にしたいと思っています。
───それは楽しみです。『いっさいはん』を読んだ子どもたちが、虫歯ちゃんと乳歯ちゃんの絵本を見つけたとき、「『いっさいはん』に出てきたキャラクターだ!」と大喜びしそうですね。
普段、ちょっとダークでエロティックな作品を作っているだけに、私のイラストが好きな方は、『いっさいはん』や絵本の仕事を見て、きっと、ビックリされているのでは……と、ちょっと不安も感じているんです。
───作家さんのいろいろなタッチの絵を見ることができるのは、ファンとしてとても嬉しいことだと思います。最後に、絵本ナビユーザーへメッセージをお願いします。
『いっさいはん』の子どものあるあるを集めた作品なので、大人向けの絵本だと思われる方もいらっしゃると思います。もちろん、お子さんをお持ちの親御さんが、1歳半だった我が子の当時の様子を思い出しながら読んでいただくのも良いですし、今まさに、1歳半のお子さんに振り回されて、育児に疲れている方に「私だけじゃなかった」と共感していただけるのも嬉しいです。けれども、私自身、この本を作って、我が子と当時を思い出して話が弾んだこともあるので、お子さんと一緒に読んでいただき、当時のことをお子さんに話してあげるような、コミュニケーションツールとして楽しんでもらえると嬉しいです。
───ありがとうございました。