●ワークショップでは、大人が涙を浮かべることもあります。
───『にじいろのネジ』をお子さんの前で読む機会もあるのでしょうか?
KONOE 河野:そうですね。「キッズプロジェクト」で開催しているワークショップのときに、何度か絵本の読み聞かせをしたことがあります。
安田:『にじいろのネジ』の中には、「調べる学習シート」が付いているんです。これは絵本を読んで楽しむだけでなく、さらにその先に「考える力」「調べる力」「まとめる力」を養うことができるようにと考えて作りました。ワークショップでは、絵本を読んだ後にこの「調べる学習シート」で身の回りにあるネジを探したり、自分だけの虹色のネジを描いてもらったりして楽しんでもらいます。
調べる学習シート
───自分だけの虹色のネジを描くなんて、夢が広がりますね。絵本を読んだときのお子さんの反応はいかがでしたか?
KONOE 河野:どの子もとても喜んでくれていました。印象的だったのは、子どもたちだけではなく、大人の方も真剣に聞いてくれたことです。そのワークショップには、親御さんも参加されていたのですが、おはなしを聞いて涙を浮かべる方も多かったんです。
安田:絵本を読んだスタッフが、読み終わった後に子どもたちに向かって「ネジみたいに見えないところで頑張って働いてるものはいっぱいあります。ちょっとおうちのことを考えてみてください。みんなのお母さんやお父さんも、みんなが遊んでいるときに、働いていたり、料理作ってくれたり、いっぱい頑張っているんじゃないかな。」と声をかけたんです。その後「みんな、お父さん、お母さんに“ありがとう”ってお礼の言葉を言いましょう」って。お父さんお母さんたち、号泣されてました。
───とてもすてきなワークショップですね。
安田:私たちもその姿を見て、改めて今回、絵本という形でネジのことを子どもたちに知ってもらえるものを作ることができて良かったと思いました。
───今後、この「にじいろのネジ」プロジェクトはどのような展開を考えているのですか?
KONOE 河野:プロジェクト全体としては、ワークショップと今回の『にじいろのネジ』のようなコンテンツとしての絵本制作。この両輪で活動していく予定でいます。さらに、もう少し未来の話になるかもしれませんが、日本のものづくりを、次の世代に伝えていきたいという理念に共感していただける企業様がいましたら、ぜひ、このプロジェクトにご賛同いただき、例えば「にじいろの金型」や「にじいろのゴム」のように、新たなワークショップ、絵本の制作などができたら良いな……という夢を持っています。
───それは素敵ですね。
KONOE 河野:そしてゆくゆくは、何かひとつ製品を完成させるのに必要なメンバーが揃うと良いですね。とりあえず、「にじいろの●●」プロジェクトなので、7社集めたいという目標があります。
───7社集まったら、『にじいろのネジ』に出てくる「ネジロボット」が作れそうですね。今日は『にじいろのネジ』を中心に、皆さんの熱い思いを伺わせていただきました。ありがとうございます。最後に絵本ナビユーザーへメッセージをお願いできますか。
安田:今回、ご縁があってKONOEさんでネジのことを詳しく伺えたことで、ネジはロケットやパソコンにも負けない大発明なんだと認識を改める場面が何度もありました。ネジのように影で頑張ってるものは、私たちの身の回りにたくさんあります。そのひとつひとつに光を当てることは難しいけれど、もし、私たちの「にじいろのネジ」プロジェクトに賛同していただける方がいたら、一緒に活動したいと思っています。
『にじいろのネジ』はネジを通して、人間同士のつながりや、物を大切にする心など普遍的なテーマを描いています。絵本を読んでくれた子どもたちの中から、ひとりでも多く、ものづくりに興味を持ってくれたら嬉しいです。
はり:ぼくは絵の担当として、絵本を手にしたお子さんと親御さんが、一緒にコミュニケーションが取れるように、細かい所まで考えて、描き込みました。ネジの形を見たり、あちこちにいる小さい動物を探したり、いろいろ発見して家族で楽しんでみてください。
───ありがとうございます。河野さんからもお願いします。
KONOE 河野:私共が常日頃から商品として扱っている「ネジ」が、多くの親御さんの目に留まる絵本という形で世に出ることになったのは、とてもすごいことだと思っています。この絵本を通じて、ひとりでも多くの方に、ネジの大切さ、重要性を知っていただきたいと思います。ニュースなどでネジが話題に上がるとき、その多くは「ネジの劣化で公園の遊具が壊れました」「ネジが緩んで、トンネルの天井が落盤しました」というネガティブなものでした。でも、それはけしてネジのせいではなく、それを扱っている人間側に問題のある場合が多いんです。むしろ、ネジがなければ、高層ビルも建てられないし、橋もかからない、そういうネジがあることの利点にも、もっと触れてほしいと常に思っていました。
『にじいろのネジ』を読んでくれた皆さんは、ぜひ、身の回りにあるネジを探してみて、ネジのすごさ、大切さを改めて感じていただけたら、いちネジ屋としてこれほどうれしいことはありません。
───ありがとうございました。
知っていましたか? 6月1日はネジの日です。
「ネジの日」はネジの重要性を多くの人に知ってもらおうと、1975年に制定されました。なぜ、6月1日なのかというと、工業標準化法が制定され、JIS規格にネジ製品類が指定された日が1949年6月1日だったからなのだそうです。記念すべきネジの日に、身の回りにあるネジを探してみてくださいね。
KONOEさんが制作した、「にじいろのネジ」。7色のネジがとてもきれいです。
