●丸山さんは文章を絵にする力がとてもすばらしい。
───今回、絵を丸山誠司さんが担当されていますが、丸山さんに絵を描いてもらおうと、どなたが提案したのですか?
今回はぼくですね。基本的に、ぼくは絵描きさんを編集者さんに提案してもらうようにしているんです。でも、ちょっと前に丸山さんと仕事をした『おいしゃさんが こどもだったころ』(保育社)の、絵がすばらしくて、また一緒に仕事をしたいと思ったのね。だから、珍しくぼくから丸山さんにしてほしいとお願いしました。
───丸山さんのどんなところが、すごいと感じたのですか?
文章を読んで、絵に再現する力だよね。読解力っていうのかな。ぼくの文章は「ト書き」などほとんどないものなので、例えば「ここは ビーンズせい。」と書いたら、それだけなの。でも、丸山さんはその文章を読み込んで、こんなにも大豆感あふれる、ビーンズせいを作ってくれたんです。
───ダイズマンとコメリーヌの姿も、すごくしっくりきますね。
そう。ダイズマンなんて、そのまんまだよね。でも、腕の部分はさやになっていたりして、ちょっと考えられているんだ。コメリーヌはやっぱり米だから、色白で面長。コメリーヌの絵を見たとき、「オコメマンにしなくてよかった」って思いましたね(笑)。
───ダイズマンとコメリーヌの手紙のやり取りが、納豆藁とおにぎりを使っているのはビックリしました。
ぼくも絵を見て「こうなるのか〜」と感心しました。納豆藁から取り出すとき、ネバネバしてそうだけどね(笑)。コメリーヌの方は、「あー、これは米粒つきそうだなぁ…」って。
───絵を見て、中川さんから提案したり、修正することもあるのですか?
よっぽど、考えていたことと違っていない限り、ぼくから修正をお願いすることは、まずないですね。ぼくは絵本を書くようになってから、ずっとそういうスタンスでいます。だって、そこは絵描きさんの領域だから、どんな絵が出てくるのかをワクワクしながら待つ。醍醐味ですね。今回の丸山さんは、特に前回の仕事で心配はなかったのですが、原画を見た瞬間に、想像を超える素晴らしい絵で、ほんと鳥肌が立ちました。
───ダイズマンとコメリーヌは、地球の子どもたちが、最近、やる気がなくて怒りっぽくなっていることを知り、地球へ行くことにします。子どもたちの食生活を脅かしていたのが、「ファストフードかいじん」と「カップラーメンかいじん」。見た目のインパクトも抜群な2人の怪人です。
この怪人たちもすごいよね。ファストフードかいじんは、顔はハンバーガーで体はドーナッツ、手はクレープとフライドチキン。足なんて、ポテトフライだよ。おっかしいよね。
───カップラーメンかいじんは、手は麺で足はフォーク……。でも2怪人とも、どことなく憎めない姿をしていますよね。
憎めない、憎めない(笑)。だって、この怪人たちは「こどもたちに からだに よくないものを たべさせて、ダメにんげんにし、さいごには このちきゅうを われわれが のっとる。」って言っているんだよ。結構な長期計画だよね。
───たしかに……。でも、子どもたちはかなり生気のない顔をしていますよ。もう、計画達成間近なのかもしれません。
だから、ダイズマンがやっつけるんだよ。でも、「なっとうパンチ!」「とうふキック!」って、ここからはアクションの連続。ヒーローが好きな子どもたちが大好きなページです。ぼくも原画を見たとき、すごい絵だと思ったね。
───「とうふキック」では、ダイズマンの足が豆腐になって、攻撃しています。
ここの「うわ、けんこうくさい」っていうのが好きなんだよ。イベントで読み聞かせをしても、ここが一番ウケるの。
「けんこうくさい!」表情。
───攻撃されて、「けんこうくさい」っていうのは、ダイズマンならではだと思いました。コメリーヌも、「おにぎりしゅりけん!」「いなほビーム!」と攻撃を繰り出します。
「おにぎりしゅりけん」と「いなほビーム」。これはぼくが考えました。
───「いなほビーム」に当たって、「うっとうしい」という、カップラーメンかいじんに思わず、同情しました。
でも、最後はみんなで、ごはんと納豆、みそ汁を食べようとまとめているでしょう。めでたしめでたし、いい話だよね。