●しばらく鬼まんじゅうはいいや! というくらい食べました。
───美味しいものを一緒に作って食べるのも、食欲の秋らしいおはなしですね。
最初は、フルーツを「おふくわけ」する夏のおはなしを考えていたんです。でも、編集者の當田さんと話し合ううちに、夏じゃなくても良いのでは? という話になり、そこで「鬼まんじゅう」のアイディアを出したんです。さつまいもが入ったお菓子で秋にぴったりですよね。
───おふくさんとおにさんが一緒に作る「鬼まんじゅう」。絵本を読むまで、絵本ナビスタッフのほとんどが、鬼まんじゅうを知らなかったのですが、名古屋では、メジャーなお菓子なんだそうですね。
私は小さいときから当たり前に鬼まんじゅうがあったので、當田さんにも鬼まんじゅうを知らないと言われたときは、びっくりしました! 調べてみて、はじめて名古屋限定のお菓子だと知りました(笑)。
お店でも売っていますが、家庭でもよく作るお菓子です。この絵本の制作中も、近所のおばあちゃんが、手作りの「鬼まんじゅう」をおふくわけに持ってきてくれたり。名古屋では、ソウルフードのようなお菓子です。
後姿が服部美法さん
───そうなんですね。 服部さんも絵本の制作中、実際に鬼まんじゅうを作られたのですか?
絵本の最後に、子どもたちが簡単に作れるレシピを付けたいと考えていたので、自分でも何回か作ってみました。でも自分も周りの人たちも、いつもだいたいの目分量で作っているので、レシピに載せるような分量がわからない。母に聞いても、「え? 何グラムとか分からないわよ」と、言われてしまって(笑)。
───家庭料理ならではですね(笑)。
さつまいも「1本」と言っても、おいもによって大きさも色々あるから難しいですよね。そこで、パンやケーキ作りが上手な友人に協力してもらって、実験のように、材料の量を少しずつ変えながら、何通りも鬼まんじゅうを作りました。子どもたちが作るには、できるだけ工程も材料の種類も少ないほうがいいので、簡単で美味しくなるレシピを見つけ出すのが大変でした。だんだん食べすぎて味が分からなくなってきて、新しい友達を呼んできて試食してもらったり。そのときは、しばらく鬼まんじゅうはいいや! というくらい食べましたね。
見返しの「おふくさんレシピ」
───そうやってレシピが完成したのですね。おふくさんレシピの鬼まんじゅうは、材料も、さつまいもと砂糖と小麦粉と水だけ。作り方もシンプルで、とても分かりやすいです。
おふくさんとおにさんが鬼まんじゅうを作る場面は、「梅花堂」さんという鬼まんじゅうが有名な名古屋のお菓子屋さんにご協力いただいて、ラフの時点から、「これで鬼まんじゅうはできますか?」「道具で間違っているところはないですか?」と、おかしいところがないか確認してもらいました。 お料理が得意なおふくさん「きさらぎさん」の前掛けの柄は梅花堂さんの包装紙のイメージなんですよ。
お料理得意な、きさらぎさん
梅花堂さんの鬼まんじゅう(左)と、レシピをもとに絵本ナビスタッフが作った鬼まんじゅう(右)
※絵本ナビスタッフの手作りのものは、お砂糖をきび砂糖で作っているので色が茶色いです。
───鬼まんじゅう、おいもがゴロゴロ入っていて、もっちりした食感と素朴な味がとてもおいしいです!
絵本を読んだ後に、ご家庭で、ぜひ作ってみてほしいです。