●どれだけ描き直したかわからないくらいたくさん描きました。
───鬼まんじゅうのでき上がりを待つ、「もういいかい?」の場面は、1作目の『おふくさん』のにらめっこ、「あっぷっぷ」の楽しい展開が引き継がれていますね。
鬼まんじゅうができるのを待つ場面で、「もういいかい?」「まーだだよ」と繰り返すことは、早い段階で決めていました。話し合っているときに、私も當田さんもぴったり同じイメージを持っていたことが分かって、「やっぱり!」と思いました。
原画を見せていただきました。
───今回の掛け合いの場面も、おにさんとおふくさんの表情が最高です!
おにさんとおふくさんの顔の変化は、どれだけ描き直したかわからないくらいたくさん描きました。
特に最後のおにさんの表情は、毎日のように描いたものを當田さんに送っては、話し合って直していきました。
大日本図書・當田:描いてくださった絵は、どの表情も良かったのですが、ストーリーの流れの中で、コミカル過ぎたり怖すぎたりしないか、その本当に微妙な違いを、ラフ(ダミー本)ページをめくりながら確認して、繰り返し調整していきました。毎日送ってくださったものを、ラフのページにどんどん貼り付けていったので、「もういいかい?」のページがものすごく分厚くなりました(笑)。
───おにさんの顔がこれだけ並んでいると圧巻ですね!
「これだよね!」と納得するまでに、本当にたくさん描きました。友人の絵本作家・岩田明子さんが、「迷ったら手を動かして、描いて描いて、描くと見えてくる。」とポロッと言ったことがあって、それがずっと私の心の中で軸になっているんです。今はわからなくても描いているうちに何かつかめるだろうと思って、とにかく描き続けました。
───それは、大変な作業ですね。
大変でもあり、楽しくもありました。やり直せば、今より上に到達すると分かっていたので、「またやり直しだ……」と思うけれど、半分嬉しい。マゾかもしれないですね(笑)。
當田:直してくださる度に良くなって、それがどんどん絵本の完成度の高さに繋がっていったと思います。
本番の絵も、同じ場面を4、5枚、同時に描いて、良いものを選ぶようにしました。絵の具が乾く前と乾いた後で印象が変わってくるので、それも実験のようで楽しかったです。
でも、やっとできた! と思ったおにさんの絵に、湯気をもっと増やしてほしいと言われときは、「えー! やっと描けたのに?!」「顔にかぶせて湯気を描くの?!」と思いました(笑)。でも湯気を描いて結果的にとても良くなりました。
───この湯気がまた美味しそうです。おにさんの表情とマッチしていて笑ってしまいます。
おにさんの絵は、最後に、自分で思っている鬼像が出せたと思います。
───1作目のインタビュー(インタビュー記事はこちら>>)の際、『おふくさん』の制作から、筆で描く技法に挑戦されたと伺いました。
それまで使っていたステンシルの技法も続けていますが、今は、筆で描くことをとても楽しんでいます。
筆で描いていると、偶然で起こる変化を待っている時間が多いですよね。今のこの時期の、この湿度でしか描けない絵、そう感じて描けることが、ちょっと嬉しいです。もっと若いときは、自分で操作できない部分にイライラしたりしたものですが、今はそれを、何か大事なものに助けられているように思えます。
───のびやかな筆で描かれたおふくさんのにこにこ顔を見ているだけで、いいことがありそうです。
最後に、絵本ナビユーザーへメッセージをお願いします。
『おふくさんのおふくわけ』の絵本の最後のページで、こっちを向いている小さな男の子がいます。この子は、読者に「おふくわけするよー!」と、叫んでいるんですよ。『おふくさんのおふくわけ』の絵本で、おふくわけをもらってほしいと思います。 それから、時間があったら、巻末のレシピで鬼まんじゅうを作ってみてください。そして今度は、誰かにおふくわけをする側になってもらえたら嬉しいです。 誰かと一緒に笑ったり、美味しいものを食べたりすること。時が経っても、思い出すだけで、いつでもそこに戻れる特別な時間です。そういう気持ちになってもらえたらいいな、と思います。
───ありがとうございました!
『おふくさんのおふくわけ』奥付より
オリジナル「おふくさんのふくわらい」が当たるキャンペーン実施中!
〆切は2017年11月30日!詳しくは絵本に入っているハガキをご覧ください。
●絵本ナビ限定、おふくさんの複製画を描いていただきました!
───この度、おふくさんの複製画の絵を描き下ろしていただきました。この絵についても少し伺えますか?
絵本ナビ限定 複製原画 おふくさん
おふくさんを、絵本ではなく飾るための絵にするのに、どうしたらいいか、悩みました。 そんなとき、友人の引っ越し祝いに絵を描いたんです。蕎麦を食べているおふくさんの絵に「福もおそばに」というメッセージをつけて。その写真を當田さんに見せたら、「これじゃない?!」と。
當田:絵と言葉が組み合わさることで強いメッセージ性が出て、飾るならこういう絵がいいのでは、と思いました。
それから、絵に添える言葉をいろいろ考えました。ほぼダジャレですね(笑)。
───たくさん候補があったのですね。どれも福いっぱいで、おめでたいです!
部屋に飾りたい絵、贈りたい絵はどれか、周りに意見を聞いて、最終的に「福よ、コイ!」に決定しました!
───おふくさんから福の「おふくわけ」をしてもらっているような絵ですね。 素敵な絵を描いてくださって、ありがとうございます!
●おまけ
イベントで展示したおふくさんおみくじを見せていただきました。
おふくさんが、おみくじを持って、とことこ歩いてきてくれる仕組みになっています。かわいい!

文・構成: 掛川 晶子 (絵本ナビ編集部)
撮影: 所 靖子 (絵本ナビ編集部)
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※期間内【2017年11月9日から2017年12月7日まで】にご回答いただいた絵本ナビメンバーの方全員に、
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