絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  寝ちゃうなんてもったいない!? 新感覚のおやすみ絵本『ねたあとゆうえんち』大串ゆうじさんインタビュー

描きながら、自分も絵の中の世界で楽しんじゃう!

───『ねたあとゆうえんち』では、どんなところを工夫しましたか?

子どもたちがベルトコンベアで運ばれるシーンで思い浮かんだ背景が、なんにもない、広い夜空だったんです。遊園地に着く前は、夜の冒険の始まりみたいな静けさが欲しいなって思って。でも、こんな風に空間が空いたイラストをあまり描いたことがなかったし、夜景に挑戦したのも初めてだったので、すごくがんばりました。


ベルトコンベアで次々と運ばれている子どもたち。でもよく見ると、銅像やペットまでいる!?

───「遊園地がどこに出てくるんだろう」と期待が高まります! ページをめくると、なんとベルトコンベアを吸っているたこが!


まるで、酉の市で売られている縁起物の「くまで」のような外観!

これが遊園地の入口です。その後に登場する、遊園地の中のイラストを描いているときが、この絵本で一番楽しかったです。

───いよいよ「寝たら損をする遊園地」ですね。最初が大きなパンダのお店屋さんがあるエリア、次が忍者屋敷のエリア、最後におかしのエリアと、3つの絵が登場します。このシーンは、まさに大串さんのイラストの味が全面に出ていますが、それぞれこだわったポイントを教えてください。

お祭りの縁日が好きなので、お店屋さんのエリアは、縁日で並ぶお店をイメージして描きました。ポイントは……招き猫のオブジェの耳が味付け卵になっているところかな? あと、子どもが喜んでくれるのが「いいにおいおなら」ですね。「お尻だ! お尻だ!」と笑ってくれる(笑)。男の子の部屋にあったおもちゃや本と同じ物も、いろんな所にちりばめています。


赤べこやはにわなど、おもしろいオブジェがいっぱい!

───現実の子ども部屋と見比べて、探しものをしても楽しめそうです。遊園地の中には、三角ぼうしをかぶった小さい人たちがたくさんいますが、『しょうてんがいくん』でも同じキャラクターが登場していましたね。

そうなんです。小さい人たちは、遊園地で働いているんです。

───次に登場するのが、忍者のヒミツ基地です。

子どものころから忍者のからくり屋敷が大好きで、ずっと描きたいなと思っていた絵だったので、絵を描いているときはすごく楽しかったです。大きな水車とか仕掛け階段とか、からくりを考えるのも楽しかったですね。


まるで観覧車のように、水車で運ばれる子どもたち。こんなベルトコンベアがあったら、乗ってみたい!

こちらが見返しに収録された、単行本描きおろしイラスト。

───絵本の見返しには忍者屋敷のからくり図解があって、2度楽しめます。

そうなんです。忍者たちがどの部屋でどんなことをしているなど、ちょっとしたヒミツを解説しています。

───こんな風に密度が高い絵は、どんな部分から描き始めるんですか?

下絵でなんとなく、オブジェの位置を決める感じでしょうか。きっちり描いてしまうと、本番が楽しくなくなっちゃうので、下絵で絵のバランスを見ながら、なんとなく構図を決める感じです。

本番のイラストは、汚れないように、紙の左上から右下に向かって描いていきます。描きながら、好きな物を好きな所に置いていく感じで。

───そうだったんですね! 図解などがあるので、きっちりと設計図のようなものを描いていると思っていました。

下絵をきっちり描くと、色塗りが楽しくなくなっちゃうんです。描きながら、どんどん細かくつめていくのが好きなんです。

───『ねたあとうゆうえんち』は、どこの絵から描き始めたのですか?

絵本の順番とほとんど同じで、最初に子ども部屋のシーン、次が夜のシーン、最後に遊園地のシーンを描きました。おはなしの終わりに出てくる部屋のシーンは、最初の子ども部屋といっしょに描きました。ベッドの描き方や色のイメージが自分の頭に残っているうちに、一気に描いてしまおうと思って。

───遊園地のシーンを1枚描くのには、どのくらいかかるんですか?

イラストにかかりっきりな状態で、1シーン20日くらいかな? 絵を描いているときには、それ以外のことはなるべくしたくないなって思っちゃうんです。ベッドに寝るのももったいなくて、机の下で寝たりして。ごはんを食べると眠くなっちゃうので、お昼抜きで描いたりもしました。

僕にとって、絵を描いている時間は、絵の世界に入り込んで没頭している感じなんです。描くのが楽しくて楽しくて、締め切りがあって早く完成させなきゃとドキドキしながらも、「このままずーっと描いていたい! 終わりたくない」とも思っていて。絵を描き終わると、いつもの日常に戻っちゃうのが、ちょっぴり残念でした。

───描いている大串さん本人がそんな風に楽しんでいるからこそ、できあがった絵も楽しくなるんですね。 次のぺージでは、絵本に散りばめられた小ネタや、読者からの反響などをお話してもらいます。

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大串 ゆうじ(オオクシ ユウジ)

  • 1976年生まれ。茨城県出身。多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。卒業後は個展などで作品を発表をしながら雑誌、テレビ、広告、などのイラストレーションで活動。本書がはじめての絵本。おもな受賞に、グラフィックアートひとつぼ展入選(1999年、2002年、2005年)、ターナーアクリルアワード入選(2001年〜2005年)、第29回ザ・チョイス年度賞入賞(2012年)などがある。

作品紹介

ねたあとゆうえんち
著者:大串 ゆうじ
出版社:白泉社
全ページためしよみ
年齢別絵本セット