●デジタルから紙の絵本へ
───デジタルで人気があるこの作品が今回紙の絵本として出版された、その経緯を教えていただけますか?原作が紙の絵本というデジタル絵本はありますが、逆にデジタル絵本が書籍化というのは今まであまりないことなので興味深いです。書籍化しようということになったのはなぜですか?

中尾:まずは、クリエイター支援ということがあります。書籍になるということはクリエイターにとって喜ばしいことだと思いますし、それを実現させたかった。もうひとつは、デジタルアプリを楽しむ環境のない人にも読んでほしいという思いです。100万回という数字が出ましたが、優れた作品だからこそ「こえほん」上でこれだけ多く読まれているということだと思うんです。書籍として手にとってもらえれば、もっと多くの人に読んでもらえる、ということから、今回の書籍化となりました。
───今回『だっこ だっこ』の他にもう一冊、『スキってなーに?』も同時に書籍化されていますね。こちらも「こえほん」での人気作ということで選ばれたんですか?
永田:はい。『スキってなーに?』は、「こえほん」内で寄せられた感想の数が一番多かった作品です。
───古賀さんは書籍化のお話を聞いたとき、どう思われましたか?
古賀:最初に書籍化と聞いたときは、「本当に?!」という感じでした。実際に本が出来上がって手にとってからやっと実感がわいたというか。発売されたときは、本屋さんに、並んでいるのを見に行きました。いつか本を作りたいという思いはありましたが、デジタルの『だっこ だっこ』が出来た当初は思ってもみなかったことだったので、とても嬉しかったですね。
───デジタル絵本の『だっこ だっこ』から、変わったところはありますか?

古賀:実は、新しく加わったページがあります。デジタル版は、最後お母さんとのだっこで終わっていますが、書籍化にあたって、永田さんから「お父さんも入れませんか?」と提案をいただいて、最後に1見開き追加することになりました。お父さんお母さんと子どもの、より家族らしいだっこのページになったので、そうしたら他の動物たちも家族でだっこして登場させたいなと思ったんです。それまで背景が白いページが続くので、最後に動物の親子を集合させてにぎやかなページを作りたかったのもありますね。 デジタル版の最後のフレーズ「だっこ だっこ だっこってたのしいな」をもう1回繰り返すことで、紙の絵本として「締め」が作れたかなと思います。

───この最後のページで、「わー家族がいっぱい!」と驚きがあって楽しくて。デジタル版『だっこ だっこ』から入っても、書籍版を純粋に楽しめるなぁと思いました。 デジタルから紙の絵本を作るということで大変だったことはありましたか?
永田:デジタル絵本では、液晶のディスプレイが白くて明るいので、原画の発色が生かされるというか、きれいに見えるんです。比べて、紙に印刷するのはやはり想像と違う部分も多くて。色の点では苦労がありましたね。 ですが、結果的に紙ならではの色というか「絵本」らしさが出せたと思います。
───デジタル絵本を体験したことがない人も、紙の絵本の『だっこ だっこ』を読んで、デジタル版の『だっこ だっこ』を見てみようかな、というきっかけにもなりそうですよね。 どのように楽しんでほしいですか?
古賀:書籍版とデジタル版、それぞれの良さがあると思いますが、書籍版は、紙を触ってめくる感じや、本を読むという感覚を楽しんでほしいですね。小さい子だったら、本に書き込んだりしてもいいですし、紙の本ならではの楽しみかたをしてほしいです。
───古賀さんは今後もオリジナルの絵本を制作していくご予定ですか?
古賀:そうですね。今回は、「だっこ だっこ」という作品で、幸運なことにデジタル絵本と書籍と両方お話をいただきましたが、今後も勉強して絵本作りをしていきたいです。こうやって、今回こうして作品が本の形になったことでも背中を押してもらった気がします。
───アイフリークさんも、紙の絵本の出版について、今後も考えていらっしゃるんでしょうか。
中尾:「こえほん」のデジタル絵本作品も増やしていきたいですし、そこから良い作品があれば書籍化していきたいと思っています。
───今後も新しい作品を楽しみにしています! 最後に、絵本ナビのユーザーの方へメッセージをお願いします。
古賀:まだ字が読めない子でも、お父さんお母さんと一緒に読んで楽しんでほしいです。読むだけでなく、普段のだっこというコミュニケーションの部分につながればいいなと思います。読み聞かせを考えてリズムを意識して作っているので、ぜひ声に出して楽しんでいただきたいです。
中尾:「こえほん」の「録る」機能ではお父さんお母さんが読み聞かせの声を録音して楽しんでいただく他にも、ぜひお子さん自身が読む声も録音していただきたいです。ごっこ絵本のシリーズもありまして、これは録音前提の作品なんです。お姫様になりきったり、ヒーローになりきったりして遊べます。ぜひ、そういう作品でも「録る」ことを家族で楽しんでいただけたらと思います。お子さんの場合、何度も録音しているとだんだん上手になっていくと思うんですが、家族の「声のアルバム」として使っていただけたら嬉しいです。
───ありがとうございました!
古賀さんをはさんでアイフリーク永田さん、中尾さん
取材・文・構成:掛川晶子・富田直美