絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「100円で かえるものって なんだろう?」 ものの“ねうち”を学べる絵本!『100円たんけん』岡本よしろうさんインタビュー

子どもの頃のあだ名は「絵が得意なおっかちゃん」

───岡本さんは武蔵野美術大学油絵科を卒業されていますが、子どもの頃から絵を描くのは得意だったのですか?

うちは両親が共働きだったからか、子どもの頃から一人遊びが得意だったんです。
工作したり、落描きしたりするのが好きというところからはじまって、小学校1、2年生のとき付いたあだ名が「絵が得意なおっかちゃん」。
当時、「機動戦士ガンダム」が流行っていたんですが、友だちが「おっかちゃん、ザク描いて」とか「ドム描いて」って言ってくるんです。
描いてあげるとすごく喜んでくれる。それがとても嬉しかったんです。

───小学生ですでに売れっ子画家さんだったんですね。

その経験がベースにあるからか、今でも注文されるのが好きという心理があって……。
「自由に描いてください」って言われると困ることの方が多いですね(笑)。

───子どもの頃に絵本を読んでもらったり、印象に残っている作品などはありましたか?

絵本に関する記憶はほとんどないんです……。
子どもの頃は超テレビっ子だったのですが、テレビを観ていて、あるチャンネルでは時代劇をやっていて、他のチャンネルに変えると、西洋の王様が出てくる……。「あれ? この人たちはどういう関係なんだろう?」とすごく不思議に思ったことをよく覚えています。
ぼくはテレビで言葉を覚えて、マンガとアニメに育てられたと思っています。

───では、子どもの頃憧れた職業は、マンガやアニメの仕事だったのでしょうか?

将来の夢はずっとマンガ家でした。高校生ぐらいのときに当時読んでいた「少年サンデー」に投稿し、一番小さい賞(「あと一歩で賞」)に引っかかったんですが、その結果に納得がいかない。
「今の自分に足りないものは何だろう……」と美術予備校の門を叩きました。デッサン力を磨こうと思ったんです。
そうしたら、美術そのものにはまってしまい、美大に入って、マンガから離れました。
でも、巡り巡って絵本作家になってからマンガを描く機会があったりして……不思議ですね。


「絵本のたから箱」に掲載されている岡本さんの4コマ漫画。

───「絵本のたから箱」にも岡本さんが描いた4コママンガが載っていますね。絵本を作りたいと思うようになったのはいつ頃からですか?

大学卒業後、しばらくは地元の山口で絵描きとして暮らしていたんです。でも、画家の仕事だけで食べていくのはとっても大変でした。ちょうど2009年くらいに、東京でギャラリー喫茶を営んでいる同級生から、「うちに福音館書店の編集者さんが良く来るから、よしろう君の作品ファイルを預かってあげるよ」って言われたんです。
送ってしばらくしたら、本当に福音館書店の「たくさんのふしぎ」の編集者さんから連絡が来ました。
依頼されたのは自然科学の作品でクモのおはなしだったのですが、その方が言うには「都会に住んでいる人は土が描けない。岡本さんの絵を見てこの人は土が描ける人だと思いました」と……。ありがたいことに、その方にいろいろ教わりながら、『まちぼうけの生態学』(遠藤知二・文、福音館書店)を描いて、2011年に絵本作家としてデビューしました。

───画家としてのお仕事と、絵本作家としてのお仕事では違いはありましたか?

そうですね……絵画を描いているときは、風景や人物などを描いていたんですが、そのときの経験はすべて絵本にも生かされています。
ただ、目にしてくれる人の数や、それを楽しんでくれる人の数は圧倒的に絵本の方が多い。
ぼくの場合、人に喜んでもらえるととっても嬉しいので、そのことを考えると、絵本の世界に来て本当に良かったと思います。

───今まで手がけられた中で、ご自身の中でターニングポイントとなった作品はありますか?

どの作品もそのときの自分にとってターニングポイントになっています。
特に『100円たんけん』は、その後の方向性を決定づけてくれたとても重要な作品です。

───それはどんなところですか?

それまで描かせてもらった作品はどれも科学絵本やノンフィクションだったので、どちらかと言うと内容も真面目なものが多かったんです。

───そうだったんですか……。

でも、ぼくは、自分の本質はコメディでしかない人間だと思っているんです。
素は、100%お笑い系(笑)。それを見抜いて(?)、くもん出版さんと中川さんはぼくに『100円たんけん』の絵を依頼してくれた。
『100円たんけん』はそれまでと比べると、すごく肩の力を抜いて、スッと気持ちよく描けた作品だと思います。

───たしかに『100円たんけん』後の作品はコミカルというか、より伸びやかなタッチになっているように思います。
絵を描くときに使っている画材は、ずっと同じものですか?

大学では油絵科に通っていたのですが、油絵は時間がかかるんです。
卒業後は、それよりも早く乾くアクリル絵の具に切り替えました。絵本を描くときはアクリル絵の具以外に色鉛筆やクレヨンなども使っています。
ぼく、画材はいろいろ試したい派で、気になる画材は何でも一度試して、自分に合うかどうか確認します。
パステルは全然合わなくて、使って10秒位で挫折しました。


貴重な原画も見せていただきました。

───今までに影響を受けた絵本作家さんはいますか?

絵本作家以外では、藤子・F・不二雄さんと鳥山明さんと、高橋留美子さんなんですが……(笑)。
絵本では、西村繁男さんの世界観が好きです。それと、長新太さんの自由さに憧れています。
そうそう、この間、あるイベントの搬入で鈴木まもるさんと同じ空間で制作をさせていただいたのですが、まもる先生の熱量を直で感じて、それからちょっと絵が上手になったような気がしています(笑)。

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岡本 よしろう

  • 1973年山口県宇部市生まれ。武蔵野美術大学油絵科卒業。絵画・イラストから立体まで、幅広く制作活動を行っている。絵本に『まちぼうけの生態学』(遠藤知二・文/福音館書店)、挿画に『ぼくたちに翼があったころ―コルチャック先生と107人の子どもたち』(タミ・シェブ=トヴ・作/福音館書店)などがある。

作品紹介

100円たんけん
100円たんけんの試し読みができます!
文:中川 ひろたか
絵:岡本 よしろう
出版社:くもん出版
全ページためしよみ
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