───ダヤンを知らない子ども達がダヤンと出会うためのお話を作るというのは池田さんの中でも新しい試みだったのではありませんか?
そうですね。今までの作品は、自分の中の世界観を描き出すことがメインでしたが、ベベダヤンでは、子どもが理解できる設定やストーリー展開にするため、出版社の方の意見をかなり参考にさせていただきました。
───特に今までと意識して変えたところはどこですか?

もう全部ですね(笑)。話の展開も言葉のセレクトも、今までの作り方と完全に違った作り方をしました。私はどうしても物語を複雑にしがちで、最初は、リーマちゃんがベベダヤンを作るとき、胸にハートを縫い込むところを入れていたんです。でも、それも分かりにくいと編集さんにいわれて…直して…。編集さんとは結構バトルもしましたね(笑)。
───今までのダヤンの設定をあえて消すことに戸惑いや葛藤はありませんでしたか?
あまりなかったと思いますね。それなら、まったく新しいものを作ろう!と、燃えました(笑)。それに、編集さんと相談をしてお話を作っていく中で、「あ、そうなんだ」と私自身が絵本の魅力に改めて気づく場面がすごく多かったんです。そのひとつが、何度も何度も読んでもらえること。それは『だいすき ベベダヤン』の内容をシンプルにしていく度に、より明確になると感じました。何度も繰り返して読んでもらえる作品になるよう、意識しました。
───絵のタッチも今までのダヤンにはない、はっきりとしたラインで描かれていますよね。
はい。この描き方も今回初めて取り入れた描き方で、ベースとなるラインを私が手描きで描いて、それをデザイナーさんがパソコンに取り込んで彩色しています。最初は、クレヨンで描いた別バージョンも候補に挙がっていたんですが、これまでとの違いをタッチからも感じてもらえるようにしたいと思い、パソコンで色を付ける方法を選びました。デザイナーさんと話をしながら1冊の絵本を作り上げるというやり方も私の中では新しいチャレンジですね。
池田さんのペン描きとパソコンで色を塗った本絵。

クレヨンで描かれたベベダヤンの別バージョンを特別に見せていただきました。
───本当に新しいチャレンジづくしの絵本なんですね。今まで細かいタッチで描いてきたダヤンをここまでシンプルなフォルムにするのは大変ではありませんでしたか?
ダヤンでグッズのデザインをやってきているので、シンプルにするのはそれほど苦労しませんでした。グッズではシンプルな形にしないと迫力がないという面もあるんですよ。

───ベベダヤンも絵本が発売される前にすでにグッズも販売されていますよね。このグッズも、ピンクのベースにベベダヤンがプリントされている物があって、すごくかわいいです。
ダヤングッズは全国にあるわちふぃーるどショップをはじめ、オンラインショップでも販売しているんですが、べべダヤンは今までのダヤンファンの方はもちろん、その方達のお子さんやお孫さんへのプレゼントにぴったりみたいで、とても人気があります。
───小さい子に手に取ってもらいたいという池田さんの思いがちゃんと伝わった証拠ですね。
そうですね。ベベダヤンと同時期に作った絵本で『ダヤンのめいろ』(ほるぷ出版)があるのですが、これもダヤンを知らない子ども達に向けて、ダヤンの世界を知ってもらえるように作った迷路の絵本です。『だいすき ベベダヤン』と『ダヤンのめいろ』、子ども達に楽しんでもらえる2作品を同じタイミングで作ることができたのはとても良かったです。
●迷路を解きながらダヤンの世界を堪能できる『ダヤンのめいろ』
───『ダヤンのめいろ』(ほるぷ出版)は、10の迷路でわちふぃーるどの世界を巡ることができるという迷路要素だけでなく、途中に魔女のグッズを探したり、探し絵になっている部分を見つけたりと、いろんな遊び方が盛り込まれた豪華な1冊ですね。

『ダヤンのめいろ』こそ、編集さんが協力してくれたおかげで完成できた絵本です。たくさんの出口の提案をしていただいたり、わちふぃーるどを回る順番や、しりとりも考えてもらったり…。それぞれの絵のチェックも何度もしてくれてずいぶん編集さんにお世話になりました。
───迷路の楽しさもしっかり押さえつつ、どのページも一枚の絵として描きこまれていてすごく豪華ですよね。
ちょうど『ダヤンのめいろ』の依頼が来たときに、原画展の話が決まったこともあって、迷路の絵は原画展に出せる作品として、見応えのあるものを描こうということを決めてしまったんです。なので、想像していた以上に時間がかかりました…(笑)。原画展では『ダヤンのめいろ』を大きい原画で堪能してもらえると思います。
───特に描いていて楽しかったページはありますか。

私はマウリッツ・エッシャーのようなだまし絵が好きなので、雪の中に動物が隠れているようにした絵は個人的にもお気に入りです。今までいろんな画材を使ってダヤンを描いてきましたが『ダヤンのめいろ』はパステルと色鉛筆を使って描いて、やっぱり私はこの2つで描くのが一番好きだなーと再確認もできました。細かい部分は大変なんですけどね…(笑)。