●自然は、わたしにとって大事なインスピレーションの源です。
───絵本を描くときは、ストーリーやテーマなどを考える所からはじめますか? それとも、描きたいシーンが浮かんできて、そこから物語を作ることが多いですか?
創作のプロセスを分析するのは、むずかしいことですね。それを理解しようとするのは、ずいぶん前にあきらめました。創作の不思議な力を台無しにするのが怖いからです。ピカソが、かつてこう言いました。「わたしは、探し求めない。見い出すのだ」と。要は、そんなところでしょうか。
わたしは、わざわざアイデアを探し求めませんが、注目に値するものには、創作過程の途中でふと出くわします。それは、あるイメージやちょっとした落書きだけでなく、フレーズや言葉の連なりだったりします。そして、自分の衝動には必ず従います。初めはその衝動が理解できなかったとしても、それに従うとどうなるかが知りたくて、探求せずにはいられないのです。
───絵本を描いているとき、誰かに作品を見せて感想を求めることはありますか?
初めは、ひとつひとつのアイデアを何らかの方法で練っていきます。ですがもちろん、すべてのアイデアが絵本として発展させるのに向いているとは限りません。もし自分で「絵本の素材」となると思ったアイデアに関しては、十分にアイデアを練り上げたと思えた段階で、妻にダミーを見せます。ほとんどの場合、彼女がわたしに感想をくれる最初の人となります。それから、出版社のわたしの担当者、シグリッドに見せます。長い付き合いなので、お互い信頼し合う間柄です。彼女のコメントは、わたしにとって鏡のようなもの。彼女の視点を通して、自分の作品がさらにはっきり見えてくることもあります。
───仕事に熱中しているときのリフレッシュ方法を教えてください。
仕事中は、どっぷり仕事に浸ります。何かを見たり、聞いたりもしません。そのように浸れる状況は、どんな仕事であっても素晴らしい経験です。仕事をしていない時でも、脳の一部はせっせと何かしらの創作活動に携わっています。
博物館を訪ねたり、コンサートや映画鑑賞へ出かけたりすることは、自分の焦点を切り替える方法です。その間は、他の誰かの創作した作品に夢中になります。そこからかなりの刺激を受けることもありますよ。
───創作の拠点となるお住まいはどんなところですか?
小さな街のはずれで、田園に囲まれて暮らしています。自然が近くにあるんです。ニワトリを飼って、自分たちで食べる野菜も育てています。自然は、わたしにとって大事なインスピレーションの源です。
お家から見える自然(パノラマで送っていただきました)。
───今、制作中の作品は、どんなおはなしですか?
複数の企画を同時進行して制作することがほとんどです。今はちょうど、Rickyシリーズの新作を手がけています。それから、とてもユーモラスなお父さんと息子のお話も。登場人物として、また動物を選びましたよ。今度はワニです。
───これからどんな絵本を作っていきたいと思いますか?
これからも、常に自分自身を驚かせるようにしたいです。どこに着地するのか見当がつかないことばかりですが、創作のプロセスにおいては、その着地点を徐々に見出していくことが、自分自身への刺激となります。何を見出すかは、その地点にたどり着いたときにしかわかりません。いつだって好奇心旺盛な性分なんです。
───日本の子どもたちとパパママへ、メッセージをお願いします。
本を作ることやお話を考えること、その絵を描くことなど、わたしがやっていることの本質はコミュニケーションです。親御さんや祖父母のみなさん、先生方がわたしのお話を子どもたちに読み聞かせるときにも、必ずコミュニケーションが交わされます。それはいつだって、温かくて魔法のようなひとときです。
このような時間を、子どもたちと共有することが何よりも大切です。読み聞かせている時やその後に、子どもたちが自分だけの物語を話し始めたり、自分の経験を表現しようとしたりする姿には、ほんとうに驚かされますよね。
最後にお伝えしたいのは、すべては愛情次第ということです。日本の子どもたちと親御さんたちが、一緒に本を読む最高の時間をたくさん持てますように。お話を読むことと、共に時間を過ごすこと。その両方を、楽しんでくださいね。
───貴重なお話をありがとうございました。
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文・構成/木村春子(絵本ナビ)
写真提供/ヒド・ファン・ヘネヒテン
インタビュー翻訳/大浜千尋