絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  地球を旅する絵本&アプリ『WORLD ATLAS(ワールドアトラス)』編集担当宮田和樹さんインタビュー

3Dの地球をぐるぐる回せるデジタルアプリ

(デジタル)ベアフットワールドアトラス世界をぼうけん!地図の絵本
出版社:Touch Press/実業之日本社

「ベアフット ワールドアトラス 世界をぼうけん!地図の絵本」は、インタラクティブな3D地球儀です。世界の大陸や海を探検し環境の変化を学んだり、各地に暮らす人々の生活を知ることもできます。不思議な生物や名所、特徴的な自然の風景、有名な建造物など様々な国や地域を自由に巡り、各地域で驚きと感動に満ちた発見に出会うことができるのです。案内役は、BBCテレビの番組司会者としても知られるニック・クレイン。アーティストのデビッド・ディーンが描き出す3Dの地球を、美しいアニメーションでお楽しみください。 日本語のほか、英語、フランス語、 スペイン語、カタロニア語など各国語に対応し、iPad、iPhone、iPod Touchで共通して使用できるアプリです。

───ニック・クレインさんの絵本の、日本語版を翻訳出版されようと思ったのは何がきっかけだったんですか。

実は、ハードカバーの絵本ではなく、デジタルアプリ版に出会ったのが先でした。
アプリを実際に見せてもらい、これは面白いなと思って翻訳権を入手したのがきっかけです。

───どんなところが面白いと思われたんですか。デジタルアプリ『ベアフット ワールドアトラス 世界をぼうけん!地図の絵本』の魅力について教えてください。

まず3Dの地球をぐるぐる回せるだけで楽しい(笑)。
拡大してそれぞれの地域の絵をタップすると、絵が動きます。コサックダンサーがロシア風の音楽をバックに踊ったり、オーロラの色が変わってカーテンのようにゆらめいたり。
アジアに行けばアジア風の音楽が流れ、海ではクジラやシャチが、まるで泳いでいるように絵が動いています。写真も見ることができます。興味のあるものをたどっていくことで、世界の広がりや個性的な生きものや文化を、知らないうちに、学ぶことができるんです。


動物、モノ、人や乗り物にアニメーションが付いています!


  手のひらサイズの地球を探索できるiPhoneバージョン

───こちらのアプリを制作したのは、有名な制作会社だと聞きました。

iPadのCMで使用され世界的に有名になったアプリ『the Element(元素図鑑)』を作ったタッチプレス社です。『the Element(元素図鑑)』といえば初期にでたクオリティの高い大ヒットアプリ。元になった書籍『世界で一番美しい元素図鑑』(創元社)も素晴らしかったのでご存知の方も多いと思います。
昨年4月に僕はロンドンで行われるブックフェアに行きました。その会場内で、タッチプレス社の一人がパネルディスカッションに参加すると知り、ぜひ話を聞いてみたいと思って「出待ち」をしたんです。ディスカッションが終わったタッチプレス社の人をつかまえて、「日本から来ました」「タッチプレス社のアプリの、ファンなんです!」と(笑)。

僕には、いいアプリを作っているタッチプレス社と何か一緒にできることがあればいいな、という「願望」がありました。その時点で具体的に何か(計画や企画提案のようなもの)があるわけじゃなかった。
でもその場で「ワールドアトラス」を見せてもらって、これは何か一緒にできるかもしれないと思いました。そのときマーケティングやプロモーションの重要性について様々に語り合ったのが、彼と意気投合し、具体的に話が進むきっかけになったんだと思います。
「ぜひオフィスにも遊びに来てください」と言ってもらえたので、後日、ロンドンの郊外にあるオフィスにも押しかけました(笑)。

───「出待ち」がスタートだったんですね(笑)。
世界でも人気のアプリだそうですね。

すでに10万人近くがダウンロードしているそうです。
デジタルアプリの特徴の一つは、持ち歩きの楽しさだと思います。
アプリを持って移動すると、各国まで何キロかの距離表示が変わるんです。たとえば、絵本ナビオフィスの場所から、地球上でいちばん遠い国はどこだと思いますか?


※画像のiPhoneは拡大されているため、実際のiPadとのサイズ比率と異なります。

───ええっと、ブラジル? それともチリ?

見てみましょう(と、iPadの画面を追っていく)・・・ウルグアイです(ただし、日本からいちばん遠い国は?という質問だと、「日本のどの場所からか」によって厳密には変わってきます)。
そのウルグアイはいまどんな気温で天気なのか(と、画面をさらに開いていきます・・・)ここに表示されます。通貨の最新情報や二酸化炭素の排出量も載っていますね。
たとえば、いちばん近い韓国なら、九州北部や山陰地方に近づいていけば行くほど、距離表示はどんどん近くなる。移動や旅に「使ってこそ」の楽しみがあると思います。

───旅先で使えそうですね。

たとえば今度の夏休み、車で渋滞にはまってしまうことや、電車内や待ち時間に、動き回りたい子どもたちに「座っていてほしい!」こともあるでしょう。そんなときアニメのDVDやゲームで紛らわせてもいいけれど、地図絵本アプリで時間を過ごすのはいかがでしょうか。
子どもが自由に触って楽しめ、知育の要素もあり、大人にわからないことを聞いたりクイズを出したりして、会話も広がるかもしれませんよ。「世界でいちばん高い山って知ってる?」「知らない、どこにある山?」というふうに。
iPadは画面が大きくてダイナミックに楽しめますが、iPhoneの小さい画面もまた面白い感覚なんです。まるで本当に手の中に地球があるみたい。ぜひ実際に味わってほしいと思います。

───アプリの中で、宮田さんの「ここを見てみて!」という箇所はありますか。

カナダのあたりにUFOが出てきます。それは、ここでUFOが見られるということではなく(笑)、町おこしのためにUFOの離着陸所を作った町があって、その場所を指しているんですよ。ちょっとしたユーモアを感じますよね。絵本には記載がない項目です。

───アプリにも興味はあるけど、なかなか手が出ないという方もいらっしゃると思います。
絵本とアプリの魅力、それぞれどのように考えていらっしゃいますか。

僕自身も紙の本で育っていますから、紙の本の楽しさはすごくよくわかります。紙にさわるときの手触りや、ページをめくる感覚、本を読むときのリズム。身体的な経験と結びついている。
本という限られたものであるからこそ、「ない部分」を補って想像力を働かせたり空想したり。そんな「余地が大きい」ことが、いちばんの魅力になる時代がこれからくるような気がします。
一方、デジタルアプリならではの魅力もあります。丸い地球をバーチャルでぐりぐり回しながら、海の広さを感じること、たくさんの個性豊かな生き物の存在を感じること。世界の国の最新のデータをいつでも調べられること。地球全体を多角的な目線で眺め、日本という国が外からどう見えるのかを考えたり感じたりするきっかけになると思います。

───最後にメッセージをお願いします。

大判のハードカバーの絵本と、デジタルのアプリ。地球上の面白さが詰め込まれたものを、それぞれからどんなふうに日本語で引き出せるようにするか。編集者として面白い体験をさせてもらいました。こうした作品と出会えて、とてもラッキーだったと思います。
丸い地球に、どこが中心ということはありません。そのことをぜひ、絵本やアプリに触れて、親子で体験してみてください。そして、その感想を、まわりの人たちと共有してもらえたらうれしいですね。絵本ナビのレビューも、楽しみにチェックしますよ!


───ありがとうございました。

<編集後記>

GW中、ドットDNP「デジタルえほんミュージアム」でワークショップをした宮田さん。サファリルックの服装はこのときに着用したものだそうです。
アプリを使ってクイズを出したり、おまけカードをプレゼントしたり、なんちゃって世界旅行写真を撮影してみたり・・・親子参加者と楽しい探検タイムを過ごされたそう。
編集者として作った絵本やアプリを持って、ご自分から出かけていき、デモンストレーションをされる情熱に脱帽! 作品の魅力がそうさせるのだとビシビシ伝わってくる一方で、宮田さんの屈託ない笑顔にすっかり魅了されてしまいました。もしかしたら夏休みには、どこかのワークショップ会場で宮田さんにお会いできるかもしれませんよ。

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インタビュー: 竹原雅子 (絵本ナビ編集部)
文・構成: 大和田佳世 (絵本ナビライター)

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作品紹介

WORLD ATLAS 世界をぼうけん!地図の絵本
WORLD ATLAS  世界をぼうけん!地図の絵本の試し読みができます!
文章:ニック・クレイン
イラスト:デビッド・ディーン
翻訳:柏木 しょうこ
出版社:実業之日本社
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