●絵本作りに、試行錯誤
───先ほどおっしゃった、最初のラフでストーリー性を意識して複雑になった、とは、どんな意味でしょうか。
カラシマ:たとえば最初のラフでは、コローロが道を歩いて、蜂さんと「こんにちは」。そしたら雨が降ってきたから、蜂さんは巣に戻るので「さようなら」。お父さんが傘を持ってむかえにきて「ありがとう」。家に帰ったらお母さんが待っていて「おかえりなさい」。
フジイ:そういえば最初は「ごめんなさい」も入っていましたね。ガーデニング好きのお母さんの植木鉢を割っちゃって「ごめんなさい」・・・でもこれも赤ちゃんにうまく表現して伝えるのは難しくて、「やっぱり、これ、やめよう!」と。最後の最後で「ごめんなさい」は削ってしまいました。
ラフその1。パローロが傘を持っておむかえ。
ラフその2。「だいすきだよ」の絵柄に注目!
ラフその3。「だいすきだよ」こんな案もありました!「かわいいけどハートが刺さりそうでしょ(笑)」とカラシマさん。
ラフその4。この時点で最後から2つめの見開きは「ごめんなさい」でした。
太陽はどれがいいかなと4種類描いてみたそう。原画は、筆で、黒1色で手描き。スキャンしデータ上で彩色。
フジイ:『COLORS(カラーズ)』とは変化をつけるためにも、『GREETINGS(グリーティングス)あいさつのえほん』のゾウは白色にして、背景をカラフルにしようと決めていました。
───全体的なデザインで迷ったり、お二人の意見が食い違ったりしたところはありませんでしたか。
カラシマ:そうですねえ・・・。表紙の色を、最後の最後で変えました。でも意見はぴったり同じだったね(笑)。
フジイ:実は私も気になって「ブルーで一度作ってみない?」とカラシマさんに伝えようと思っていたんです。そしたらカラシマさんからブルーの表紙案がメールで送られてきました!

最初の頃のカバーラフ。文字部分もカラフルです。
───話し合っていないのに、ですか?
フジイ:ええ、そうです。
もうブルーを見たらお互い「これしかない!」。編集者に頼み込んで、もう一度社内で検討してもらいました。
OKが出るまで少し時間がかかりましたよね。
カラシマ:もうブルーしか考えられなかった(笑)。
ベビーブルーより少し濃い、おしゃれな明るい青色に変えたことで、赤ちゃんの本でなおかつ「ちょっと洗練された素敵な感じ」を出すことができたんじゃないかなと思います。
───はじめて『COLORS(カラーズ)』を見たときに、僕は、この絵本はお母さんたちがとっても気に入るだろうなと思いました。 お母さんが絵本を気に入って楽しんで読むと、その楽しい気持ちが赤ちゃんにも伝わりますよね。

カラシマ:そうなるといいなあと思っていました。インテリアや雑貨感覚で大人に好きになってもらえたら、それもうれしいなと。
───角が丸く厚紙で作られたボードブックは安心感があって、赤ちゃん絵本としてはとてもニーズがありますよね。 赤ちゃん向けの絵柄が多いボードブックの中で、これは素敵だなとお母さんたちが手にとってみる。読んで聞かせると、なんだかわからないけど子どもが喜ぶということが起こるような気がします。
カラシマ:当初、『COLORS(カラーズ)』の読者は、生まれたばかりくらいから言葉を覚えはじめる1歳前後くらいまでかな、と何となく思っていたんですよ。