絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  『ティニー ふうせんいぬのものがたり』川村元気さん、佐野研二郎さんインタビュー

───文章を書いているときに、絵本の文章のプロセスについて発見はありましたか?

川村:たくさんありました。最も強く感じたのは、絵本は親子や先生と生徒など、2人以上で1つの作品に向き合うものだということ。読み手の読み方でいくらでもニュアンスが変わるんですよね。どんな人が読んでも面白くなるように作りたいと思ったので、「ばいんばいん」や「ふうわふうわ」など面白く読めるオノマトペを工夫して、読んで伝えるプロセスをすごく考えました。

───絵を描くときに気づいたことなどの発見はどんなものがありましたか?


このつぶらな瞳の可愛さ・・・


佐野:今回、ティニーのキャラクターを川村さんと話しながら時間をかけて作り上げていくことができたのですが、目に白いハイライトを入れたのはぼくの中で初めてのことでした。ハイライトを入れることで、いつもより目力が付くというか、何か言葉を発しそうな息遣いのあるキャラクターができたと思います。それと、空を飛んでいる重力から解放された感じを出すように、影の位置や大きさなど少し工夫して描きました。

川村:ぼくは特に、ティニー達が地上に降りていくときの空の色の変化が好きです。あそこは、1枚の絵で表現することもできたページですがコマ割のようにして、動きを表している。物語がラストに向かう感動的な演出だと思います。

佐野:あそこは虹をイメージして色の変化を描きました。色はこの絵本のひとつの重要なテーマだと思ったので。

物語だけではない、たくさんの要素を絵本に散りばめています!

───絵本ナビのユーザーにだけ教える、『ティニー ふうせんいぬの ものがたり』のみどころを伺えますか?

佐野:この絵本は物語としての面白さ以外にも、いろんな部分にしかけを加えています。例えば、知育的な部分として動物の名前や、ものの色、形、模様などが覚えられるところ。それと、ティニーと出会う動物たちの大きさがだんだん大きくなっていることに気づいたり、絵の中のどこに動物たちがいるか探し絵遊びのようにして楽しむことができるなど要素も含んでいます。

川村:子どもは絵本を何度も読み返しますよね。毎回毎回新しい発見があった方が楽しめると思うし、絵本を囲んで親子でコミュニケーションが取れると思うんです。大人はなかなか気づかないけれど、子どもはカバーをめくったところに隠れているティニーや、見返しの部分の風船が最初と最後で少し変わっていることをすぐに見つけるんですよね。そういう細かいところを佐野さんと一緒に考えて、たくさん絵本の中に散りばめました。

佐野:ぼくと川村さんがどんなに一生懸命工夫しても、子どもはぼくたちが思いもつかなかいような発想をしてくれるんです。例えば、初回限定版にシールを付けているんですが、子どもはこれを表紙に貼って遊ぶんですよ、…そういう発想はなかったぞ…と子どもの楽しい事への探究心に驚かされましたね。

───『ティニー ふうせんいぬのものがたり』が発売されたばかりですが、今後、絵本を作られる予定など、すでに決まっているものはありますか?

川村:今、『Casa BRUTUS』でティニーの新しい連載をしています。それは今回の絵本よりももう少し年齢を下げた、色や形をストレートに紹介するファーストブックなんです。これを絵本化したものが来年秋に発売される予定です。それ以外にも春に1冊、原作を担当した絵本が出版される予定です。
佐野さんとは、今度は『ティニー』と違う形の絵本もやってみたいとひそかに思っているんです。

佐野:それはどんな内容?

川村:絵を先に描いてもらって、その後にぼくが文章をつける。『もこ もこもこ』(作: 谷川 俊太郎 絵: 元永 定正 出版社: 文研出版)みたいな作品を作りたいです!

佐野:『もこもこもこ』はすごいですよね。何度読んでも子どもは大爆笑。『ティニー』を作ってぼくも色んなアイディアが湧いてきたので、新しい絵本にもどんどん挑戦していきたいです。

川村:ぼくが好きな谷川俊太郎さんや和田誠さんなどは、いろんなジャンルの絵本を作られているんですよ。ぼくたちもそこにチャレンジしてみたいですね。

───まだまだ絵本への探求は続きそうですね。お二人の新しい作品を、楽しみにしています!
今日は本当にありがとうございました。

インタビュー: 磯崎園子 (絵本ナビ編集長)
文・構成: 木村春子(絵本ナビライター)

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川村 元気(かわむらげんき)

  • 1979年横浜生まれ。東宝にて『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』などの映画を製作。
    2010年に米ハリウッド・レポート誌の「Next Generation Asia 2010」に選出され、2011年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。
    2012年には小説『世界から猫が消えなたら』を発表。

佐野 研二郎(さのけんじろう)

  • 1972年東京生まれ。 アートディレクターとして数々のTVCMや グラフィックデザインを手がける。
    トヨタ自動車「ReBORN」、サントリー「BOSS」「南アルプスの天然水」「グリーンダカラちゃん」、au「LISMO!」、日光江戸村「ニャンまげ」、 TBS「TブーS! 」、ミツカン「金のつぶ・とろっ豆」、ベネッセ「三歳児教材ほっぷ」などのデザインを手がける。

作品紹介

ティニー ふうせんいぬのものがたり
ティニー ふうせんいぬのものがたりの試し読みができます!
作:かわむら げんき
絵:さの けんじろう
出版社:マガジンハウス
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