連載

絵本ナビスタッフ便り 9月

絵本ナビ編集部

2015/09/14

ついに刊行!この秋、大注目の、梨木香歩さんによる長編ファンタジー!

ついに刊行!この秋、大注目の、梨木香歩さんによる長編ファンタジー!

『西の魔女が死んだ』『裏庭』など児童文学ファンタジーの傑作を輩出しつづけてきた梨木香歩さんの、久しぶりの新作長編『岸辺のヤービ』がこのたび刊行されました。表紙の真ん中でこちらを見つめているふわふわした生き物と緑いっぱいの美しい自然の情景を目にした瞬間、刊行を今か今かと待ちわびていました!
そして届いたのは、豪華な函入りの、うっとりしてしまうほど美しい装丁の1冊。
この秋、大きな話題になること間違いなしの、『岸辺のヤービ』のみどころをいち早くご紹介します。
◆まずは気になるあらすじから・・・

岸辺のヤービ 岸辺のヤービ」 作:梨木 香歩
画:小沢 さかえ
出版社:福音館書店

寄宿学校で教師をしている「わたし」は、ある晴れた夏の日、学校近くの三日月湖、マッドガイド・ウォーターに浮かべたボートの上で、ふわふわの毛につつまれた、二足歩行するハリネズミのような、小さなふしぎな生きものと出会います。そして、「わたし」が彼にあげた一粒のミルクキャンディーがきっかけとなり、「ヤービ」と名乗るその生きものとの交流がはじまります。ヤービの口から語られる水辺の生きものたちの暮らしは、穏やかだけれど、静かな驚きに満ちていました。

◆ここがみどころ!
●「マッドガイド・ウォーターシリーズ」第一作目の開幕です!
「マッドガイド・ウォーター」というのは、「わたし」が勤務する学校のそばにある「小さな三日月湖」の名前。
自然豊かなこの湖沼地帯を舞台に起こる、穏やかだけれど、驚きと冒険に満ちた「ヤービ」の世界と「わたし」の世界との交流を描いた日々。第一作となる本書の中に、あとから出てきそうな話の予告もちらほら見えて、どんどん続きが気になります。これから長くおつきあいが続きそうな期待に溢れるシリーズの開幕です。
●「ヤービ」ってどんな生きもの?
なんといっても気になるのは、「わたし」がマッドガイド・ウォーターの岸辺で出会った、やわらかそうなふわふわした毛に包まれたハリネズミのような男の子のこと。二本足で歩き、顔の部分だけ毛がないため、表情がよく分かるのだそう。
お話の中には、この「ヤービ」のママやパパのほか、「ヤービ」のいとこのセジロ、セジロの友達のトリカなどが登場し、それぞれ「クーイ族」「ベック族」などに属しています。いったいこのかわいらしい生きものたちは、日々どんなことをして、何を食べ、何を考えて生活しているのでしょう。読めば読むほど、興味がつきません。
●ミルクキャンディーはどう役にたった?
「わたし」が「ヤービ」にはじめて出会った時にあげた「ミルクキャンディー」は、「ヤービ」にとってものすごく役にたったよう。この「ミルクキャンディー」をつかって「ママ・ヤービ」が作ってくれたシロップの美味しそうなことったら。そしてこの後、「わたし」は「ヤービ」から「ミルクキャンディー」と引き換えに、いろいろな話を聞くことになります。
(お話の中には、他にも、「ヤービ」たちが食べている美味しそうな食べ物がたくさん出てきますので、こちらもお楽しみに!でも、私たち人間には食べられなそうなものばかりなのですけどね・・・)
●「ヤービ」たちの悩み
自然に囲まれた豊かな場所で、平和に暮らしているようにみえる「ヤービ」たちにも実はあれこれ深い悩みがあるようです。
「ヤービ」のいとこの「セジロ」が知り合った「トリカ」は、物語中の言葉を借りれば、「じぶんの、そんざいの、すべてが、ひていされる、きもちになる」ような悩みを抱えていて、その「トリカ」の影響を受けて「セジロ」は食べ物を全く口にしなくなってしまいます。その理由は、私たちにも身に覚えがあったり、一度は疑問を抱いたことがあるような問題かも?!小さな生きものの心の中にある思いに触れて、共感したり、考えさせられるところにも強く惹かれる物語です。
●みずみずしい自然の美しい情景
雨の日の水辺ほどすてきなものは、世の中にそうそうあるものではありません。水中や水底に棲む生きものたちにとってはお祭りのようなものです。水滴が、まるで「うながし太鼓」のように、ててつん、ててつん、と天井をえんりょ深げにたたいたかとおもうと、やがて絶え間ない問いかけのような振動が水世界ぜんたいにひろがります”(本文69ページより抜粋)

「世界ってなんてすばらしいんでしょう!」
ヤービと目が合ったママが、片手を大きく上げました。
見わたすと、夕方のやわらかい光を浴びてはるか前方、銀色に輝くマッドガイド・ウォーターの両端から、この宝石のような小さな湖をはさみこむように、七色の虹が立っていたのでした”(本文132ページより抜粋)

「ヤービ」たち小さな生きもの視点から見た、自然の広大さと美しさ。それは色鮮やかな緑に溢れた表紙のイメージそのもの。読んでいるとまるでその情景の中に入り込んだような心地良さに包まれます。
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さて、あれこれおすすめのみどころポイントをまとめてみましたが、いかがでしたか?
対象年齢は、小学校四年生ぐらいから大人の方まで幅広い年齢の方におすすめです。
読み始めたら、ワクワクの展開と「ヤービ」への興味でたちまち物語にひきこまれ、自分も湖の岸辺でボートに揺られながら、「ヤービ」からの物語をゆったりと聴いているような気分に包まれました。どうぞ物語の面白さにどっぷり浸かれる贅沢な時間をお楽しみください。

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