息子が小さな頃、大好きだった絵本です。邦訳が出ていることを最近知りました。(しかも詩人田村隆一さんの訳ですね!)赤、オレンジ色、黄色、草色、海の色、スミレ色の貨物列車、そして黒い蒸気機関車が、見開き左から右にまっすぐに伸びた線路を進みます。スピードを上げて走る場面は、プリズムをのぞいているようで夢見心地でした。子どもの心が躍る場面です。色の美しさにうっとり。
ただ、色が勝負の絵本なのに、訳書の方はちょっと色がくすんでいるかなあという印象です。また、いちばん残念に感じたのは、最後の「とうとう ぎょうれつは みえなくなっちゃた」のページ。原書は見開き2ページを使用しているので広い空間に余韻が残るのです。ところが訳書の方は左1ページだけ。途中で切れていて、これでは絵本の使命ともいえる空間も時間も感じられません。比較してみると日本語版は中表紙の前あたりに線路のページを多く取り過ぎています。最後が大切なのに、とても残念です。