柳田邦夫さんが、翻訳したということだけでとても意味のある絵本でした。
収容所に強制移動される列車の絵の隅に描かれたベビーカー。連行される人たちの、顔の下でカットされたモノクロームの絵にユダヤ人の印にだけかすかに色がついている。列車から放り投げられた赤ちゃんのエリカの毛布だけがピンク。現在を語る絵はカラー彩色。
絵だけでも、カメラで切り取った現実のワンカットのように饒舌に、戦争の悲惨さと理不尽さをするどく読者に訴えています。
そして文章。タイトルページ裏から、「出あい---著者のことば」として、始まる語りは柳田邦夫の多くの著作のように事実を見つめる眼を感じますし、とても重みがあります。
文章だけでも、戦争の悲惨さと理不尽さを語り続け、読者にのしかかってきます。
ただ、長文であるだけに読み聞かせは難しかった。
息子は、苦労する私の語りより、絵をじっと見つめていたように思います。
読み終わってから、自分で読んでみたいと本を受け取った息子。難しい顔をして読み終わってからしばらく間をおいて、「哀しい話だね」と一言。
絵と文章が、何度もつっかえつっかえした私の本読みのまずさをカバーしてくれました。