「日本の伝統芸能を楽しむ」(全4巻)シリーズの1冊。
写真をたっぷり使用した、ビジュアルの大判絵本。
「基礎知識編」「支える人たち編」「資料編」と3つにわかれた構成で、能と狂言についてわかりやすく伝えてくれます。
そもそも能と狂言ってなに? どうちがうの?
じつは能と狂言をあわせて「能楽」というそう。能楽は700年ものあいだ演じられてきた伝統芸能です。むずかしいというイメージをもたれがちですが、小学生にも楽しめる作品も中にはあるのだそうです。
まずは、能楽を演じる舞台、「能楽堂」に入ってみましょう。屋内なのに、能舞台の上には屋根がついているのですが、これはかつて野外に建っていたものの名残り。正面奥にはかならず松が描かれていますが、これは神様は松の木におりてくると信じられているから……。
前半では能のキャラクター図鑑や、楽器、お面、道具などについてもわかりやすく解説。
後半では狂言について解説しながら、能と狂言のちがいを教えてくれます。たとえば、能は、謡と舞が中心。狂言は、セリフが中心。狂言は「喜劇」といわれますが、庶民のよろこびやかなしみがこめられていることなども解説してくれます。
能も狂言も、今は子ども向けの公演もありますので、興味をもったら本書がとても参考になりそうです。
「支える人たち編」では能面が作られる過程や、装束復原への挑戦、扇作りの作業過程など、たくさんの写真を並べて解説。職人たちのミニインタビューも挿入され、読みごたえがあります。「一見むずかしそう」に見えた伝統芸能の世界が、様々な人たちによって支えられ、いきいきと今も生き続けているのがわかります。
むずかしい漢字にルビがふられ、小学生のお子さんでも読める貴重な一冊です。
このシリーズには他に『文楽』『歌舞伎』『落語・寄席芸』もありますので気になったものから手にとってみてください。小学生や中学生にとって、伝統芸能鑑賞の、最適の参考書となる一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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