「小さなスズナ姫」シリーズ、「シノダ!」シリーズ、『やまんば山のモッコたち』、『盆まねき』、「妖怪一家 九十九さん」シリーズなど、数々の児童文学作品の書き手としてファンが多い富安陽子さん。
そんな富安さんの「おかしな」毎日が綴られたエッセイです。
関西在住の作家、2人の息子の母。そして実父と義父をささえる「キーパーソン」であり、弟2人がいる姉……。
いろんな顔をもつ作者が、おもしろおかしく日常を語ります。
ご両親の不思議な馴れ初めや、ランドセルに父が名前を書いてくれた話、高校の仮装行列、介護の「キーパーソン」である富安さんにかかってきた講演開始直前の電話など……。
うっかりバスや電車の中で読もうものなら、笑いをこらえること必至!
読んでソンはありませんよ、と、周囲におすすめしたくなるおもしろさです。
おもしろいだけではありません。『盆まねき』を読んだ方はご存知かもしれませんが、ご自身のルーツである九州の富安家のこと、物語好きな祖母・伯母や、生まれる前に亡くなった伯父たちのこと……。
太平洋戦争を挟んで両親が命をつなぎ、その先に自分がいることをしみじみとした味わいで綴っています。
実は本作のイラストを描いているのは、ご本人。
絵が好きな父がリード役となって長年作成されていた、富安家の家族合作カレンダーは一見の価値ありです(口絵に登場)。
富安洋子さんの作品ファンには、もちろんおすすめ。
同時に、両親や祖父母のクセ・性格・好みなどを思い出し、ちょっぴり、今自分が生きている奇跡を受け止めたい気持ちになります。
生真面目に語られる遊び心、茶目っ気たっぷりの言い回し、テンポよく綴られる日常はクセになりそう。
富安陽子さんのエッセイをもっと読みたい方は『さいでっか見聞録』もぜひどうぞ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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