「猫舌」「閑古鳥」「一匹狼」‥‥‥。こんな言葉を耳にしたことはありますか? 熱いものを食べるのが苦手だったり、お客さんが入らずお店が流行っていなかったり。そんな日常の困ったことが、全部魔物のせいだとしたら!?
その日常にひそむ魔物を探しに挑むのは、小学五年生の女の子いさなです。なぜそんなことになったかって!? それは、花丸小学校に新しくやってきた、保健室の「乙千代子(おつちよこ)先生」、通称おっちょこ先生のピンチを救う役目を任されてしまったからなんです。
ある日、いさなが給食で舌を火傷して保健室へ向かうと、先生の姿が見当たりません。代わりにそこにいたのは慌てている小さな金茶色のハムスター。いさなは、ハムスターのつぶやきから、おっちょこ先生が実は魔女で、変身魔法に失敗してハムスターになってしまったことを知ります。先生を元の姿に戻すには、魔物を捕まえて魔気を集め、いさなが魔法を解ける力を持たなければならないとのこと。半ば強引におっちょこ先生にお願いをされて、魔物が見える「魔法メガネ」と、「魔物辞典」を片手に魔物探しに繰り出しますが、メガネは1日1時間しか使えないし、「魔物辞典」は量が多すぎて読む気がしないし、なかなかうまくいきません。そこに助っ人として思いついたのが頭脳明晰な親友の千種(ちぐさ)。勉強嫌いだけれどスポーツ万能のいさなと、頭の良さは抜群だけれど体力が全くない千種がタッグを組み、いざ魔物探しへ。期限はたったの3日! さて二人は無事に魔物を捕まえて、おっちょこ先生を元の姿に戻すことができるのでしょうか?
おっちょこ先生のドタバタぶりと、それに振り回されるいさなや千種のやりとりがとっても楽しい本書。「そういうこと、最初に言っといてよ!」のセリフが何回出てくることか‥‥‥。ハラハラしながらも、みんないつの間にかおっちょこ先生のペースに巻き込まれているかも!?
作者は「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」シリーズでたくさんの子どもたちを夢中にさせている廣嶋玲子さん。本書もまた、楽しい魔法アイテムの数々や、おっちょこ先生のどこか憎めないキャラクターに魅力がいっぱいです。おっちょこ先生がポケットに持っている、痛みがやわらいだり、気分がよくなったりするキャンディーや、保健室のロッカーの奥にある「魔女の部屋」、食べると運気が高まるラッキーアップ・ルという果物など、ぜひ本の中で探してみて下さいね。
ユーモアいっぱいのワクワクさせてくれる挿絵を描かれているのは、1980年代から現在に至るまで40年もの間ご活躍の絵本作家・イラストレータのひらいたかこさん。大人の方の中にはひらいたかこさんの絵に懐かしさを感じる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
さて、物語の最後に、「いさなと千種が思ったとおり、その後も、おっちょこ先生はとんでもない失敗や騒ぎを巻き起こしては、二人に泣きついてくるのです。そのことは、また今度お話しましょう。」とありますので、おっちょこ先生のお話はこの後もまだまだ続きそうです。次はどんな騒動が巻き起こるのか、今から楽しみですね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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