「すきなあの人」……思い浮かべるのはどんなことですか?
「すき」というとなんとなく恋愛の「すき」に結びつくことが多いでしょうか。
この本で出会う4つの物語には、恋愛の「すき」だけではない、さまざまな「すき」の感情と、さまざまな「すき」の関係が登場します。
憧れの完璧な同級生のことを全部真似したいぐらい「すき」、最高の答えを出してくれるバーチャルアシスタントがぼくの「カノジョ」に!?、登校時に見かける素敵な男の子に恋をする男の子の話、おばあちゃんの恋がわたしに教えてくれた「すき」のかたち。
各お話のラストに1枚の余白を置いて登場するひと言が印象的です。お話の余韻を感じている心に「あなたはどう思う?」とまっすぐに飛び込んでくるのです。
絵の具からいろいろな色が出現する「パレット」のように、4つの物語に出てくる主人公自身もユニークなら、体験する「すき」も多様であり、この本で思ったこともなかった「すき」の感情と出会う人も多いことでしょう。たびたび自分の「当たり前」を揺さぶられたり、自分の中に知らず知らずのうちに持っていた「ふつう」への価値観に気づかされたりと、発見がたくさんあります。
向き合う相手の本音を知ることや違う一面を知ること、それは決してこわいことではなく、自分の世界を広げてくれること。登場人物の多様性と柔軟さに、もっともっと自由に生きていいんだ、という希望がみえてくるのです。
現在6冊刊行されている「君色パレット」シリーズは、現在、児童文学の世界を引っ張る人気の書き手の方たちが揃って執筆されているところも大きな魅力です。1話1話完結の短編には、作者それぞれの魅力が詰まっていて、全く違った色相を見せてくれるところにも多様性が感じられます。好きな作家さんを見つけるきっかけや、気に入ったお話があったらそのお話を書いた作者の他の本を調べて読んでみるなど次の読書に繋げるきっかけとしてもおすすめです。
シリーズ第2弾で描かれるのは「すきなあの人」、「きらいなあの人」、「なんでもないあの人」……あなたはどの関係性が一番気になりますか? また自分に一番影響を与えてくれそうなのはどの人でしょうか。
多様な時代を生きていくみんなへの作家からの温かなエールが詰まったシリーズ、気になる関係性から、または気になる表紙の色から、自由に選んで手にとってみませんか。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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