小学校3年生の「ぼく」のおじいちゃんは、お父ちゃんが1歳の時に戦争で亡くなりました。おばあちゃんは、戦争のことは思い出したくないと言います。
ある日、友だちのサトルくんと妹のサクラと、遊び場近くに大きな穴を見つけたぼく。中は真っ暗、「おーい」と叫んでも何も聞こえないその穴は、戦争の時、爆弾を避けるために作られた防空壕というものでした。
サトルくんに誘われ、防空壕の入り口で石を投げたりおもちゃのピストルを撃って戦争ごっこ。さらに戦争で亡くなった人のおばけが出るという穴の中を、探検してみることに。懐中電灯を片手にひんやり冷たい穴を奥へ奥へと進むと、白い影が見え、何かが聞こえたのです。
「おばけだ」
びっくりして尻もちをついたぼくたちの目の前には、お地蔵様に手を合わせる真っ白な割烹着を着たおばあさんがいて……。
戦後80年、当時と様変わりした街や暮らしですが、戦争の爪痕はひっそりと確かに息づいています。今を生きる私たちは、その存在すら忘れていることも。でも亡くなった人たちの無念、大切な誰かを亡くした人たちの哀しみは、今もこの先も、決して消えることはありません。防空壕の暗闇の中でおばあさんが語った思いは、戦争を知らないぼくたちに初めて届き、受け継がれていきます。
戦争経験者が年々減っていく今、その記憶と「二度と繰り返さない」という決意をどう次世代へ手渡していくのか。その手立てのひとつとなる一冊です。
(竹原雅子 絵本ナビライター)
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