四時間目の授業は国語。先生は唐さんが生まれた国の歌ですと言って、黒板に難しい漢字の文を黒板に書く。
『春暁』
五年生になって転入してきた唐くんは、中国の西安から日本にきたばかり。日本語はまだ少ししか話せない。唐くんは、髪はボサボサふわふわ、大きな猫みたい。ふわあとあくびをして先生に注意されている。
けれど次の瞬間、唐くんが空中に手をさしのべ、何かをふわっとつかんだから「わたし」はびっくりしてしまう。たぶん目撃したのはわたしだけ。窓から出したその手から舞い上がっていったのは、たんぽぽの綿毛。そして唐くんが中国語で読みあげる『春暁』は、わたしにはまるで音楽のように聴こえて……。
国や文化が違っても、心を動かすものは同じ。少しの勇気と少しの気遣いでお互いの心の距離は近づいていく。たどたどしいやりとりを交わしながら、ふたりの描く景色は重なっていく。
遠い異国の地で故郷の春を想う唐くんと、そんな唐くんの故郷の知らない街を想像するわたし。あたたか春の光に包まれた景色の中で、ふたりの交流をみずみずしく描いたこの物語は、第41回日産童話と絵本のグランプリ童話大賞受賞作品。
第22回日産童話と絵本のグランプリ絵本大賞受賞者でもある絵本作家ちばみなこさんが、唐くんとわたしのキャラクター、一つ一つの情景を丁寧に具体的に絵にしていくことで、多くの子どもたちの心に届く絵本になりました。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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